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出会い
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俺の社交場での初御披露目は4歳の頃だった、俺の家はそれなりに裕福だからだろう。
シグナム家の長男として、実際は姉の初御披露目のおまけ程度に紹介された。
王都一のダンスホールでいろんな貴族達が話に花を咲かせていた。
よく聞くとそのほとんどが自慢ばかり話していて退屈だった。
ヒロインはまだこの王都に来ていないからまだ安心だろう。
父親に連れられいろんな人に軽く挨拶して回っていた。
メインは姉だから俺の自己紹介は名前だけで後は姉の話だった、家族と使用人以外を見るのは初めてで落ち着きなくキョロキョロと周りを見ていた。
姉は自由な性格で自己紹介が終わるといなくなってしまい、何処にいるのか目線で探していると同じ歳の男の子に囲まれて下僕を増やしていた。
…姉はまぁ、この歳で目立った悪さはしないと思うからとりあえずいいかな。
自己紹介なだけなのに、一通り連れ回されてヘトヘトになり外に出た。
初めてあんなに大勢の人を見たから人酔いしてしまった。
外は冷たい風が吹き、暗い空には無数の星が散りばめられていた。
大きく深呼吸すると新鮮な空気が気持ちを落ち着かせる。
人混みに戻る気にはならなくて庭を歩いていると小さな人影が見えた。
何をするでもなくしゃがんでいるその人影はなにかを持っている。
外灯に照らされた赤黒い髪が風に撫でられて揺れている。
何をしているのか気になり近付いてみて分かった…寝ている。
昼はぽかぽかの日射しだが夜は寒い、風邪を引いてしまう。
赤黒い髪、何処かで見た気がするがとりあえず肩を揺する。
…なかなか起きない、こういう場合どうしたら良いんだろう。
バシッと頬を叩いてみる、軽くのつもりだったがちょっと強すぎただろうか。
さすがに起きたのか目を丸くしてビックリしていた。
「ごめんね、痛かった?でもこんなところで寝てたら風邪引いちゃうよ」
「…きみ、だれ?」
寝起きだからかまだ眠たそうな目でボーッとしながら俺を見ていた。
俺より年上だろうか、小学生くらいの見た目をしていた。
無意識に寝ていたのだろうか、こんな外で危ないだろ…それは…
少年が手にしていたものを見ると、青い薔薇の花束だった。
少年は立ち上がり、何を思ったのか薔薇の花束を俺に押し付けた。
俺はわけも分からないまま素直に受け取り花束を見つめる。
「あげる、起こしてくれたお礼」
「大したことしてないよ」
「小さいのに頼もしいね」
少年はニコッと笑った、とても美しい少年だと思った。
彼に悪気がないのは分かっている…しかし小さいは余計だ…そりゃあ年齢に差があれば小さく見えるのは当たり前だ。
頬を膨らませて拗ねていると少年は何故俺が怒っているのか分からず首を傾げていた。
薔薇の花束はいい香りがした、でも何故この花束を持っていたのだろうか。
少年は再び座るから俺もつられて横に座る、何だか不思議な雰囲気が俺達を包み込む。
少年の方を向くと少年も同時に俺を見ていて気恥ずかしくて目をそらす。
「この花、いいの?」
「いいの、俺の家にあったものを持ってきただけだから」
「そうなんだ」
会話が続かない、初対面の相手にどう話したらいいか悩む。
少年は上を向いて空を眺めていた、とりあえず俺も空を眺める。
キラキラと光る空、生前の時テレビ以外で見た事がなかった空が今目の前に広がっている。
生前は見られなかった景色が見れて嬉しい筈なのに、なんか切ない。
掴める筈はないと思うが空に向かって手を伸ばすとキラッと流れた。
「あっ!流れ星!」
「本当だね」
少年も見たのか俺達は興奮して自然と声が上がる、少年の表情は全く微動だにしていないけど…
流れ星ってお願い事を三回言わなきゃならないんじゃなかったっけ?
あんな早い流れ星、一回だけでもギリギリなのに三回なんて無理だ。
少年は目を瞑っている、なにかお願い事をしたのだろうか。
もう流れ星は見えないが俺も目を閉じてお願い事をしていた。
とりあえず普通に恋愛して普通に結婚して普通の家庭を築けるならそれ以上は望まない。
ちょっと長すぎたかなと思っていたら隣から息遣いが聞こえた。
「だから寝ちゃだめだって!」
「いたっ…」
頭をチョップして起こすと今度は一発で起きてくれた。
お願い事をしていたわけじゃないのかい!とジト目で少年を見る。
すると遠くから「アルト様ぁー!!あーるーとーさまー!!」と大声が聞こえた。
グランの声だとすぐに分かり心配してやって来たのだろう。
立ち上がり少年に頭を下げて「もう外で寝ちゃダメだよ」と言いグランのところに走って行く。
グランは涙目になり外を走り回っていた、いるはずもないベンチの下とかくまなく捜していた。
「グラン、ここだよ」
「アルトさまぁぁぁ!!!!」
グランに声を掛けると物凄い早さで走ってきて俺を抱き締める。
ぎゅむっと強すぎる抱擁に苦しくなるが探してくれて嬉しかった。
グランには外で空気を吸ってくると一言言えば良かった。
力が抜けてポロッと薔薇の花束を地面に落としてしまった。
「あっ!!」
「アルト様、なにか落ちましたよ?」
グランが俺のにおいを堪能しまくり冷静になり、俺を降ろした。
そして何も知らないグランを地面に落とした花束を拾った。
俺は花束を飾る花瓶が家にあったかグランに聞こうとしたがグランの異変に気付いた。
グランは花束を拾う格好で目を見開いたまま固まっていた。
その格好、腰痛めそうだな…20代でも油断出来ないぞ?
その花束がどうしたのかとグランを下から覗き込む。
グランの顔がみるみると薔薇の花束のように真っ青だった。
「あ、アルト様…これ誰に貰ったんですか?」
「さっき知り合った男の子に貰ったんだ」
「お、おと…こ?アルト様が男に…僕の可愛いアルト様がぁ…」
何だかよく分からないがグランが花束を握りしめていて花が枯れちゃうとグランから花束を救出した。
まだなにかぶつぶつ言ってるグランはほっといて、俺はさっきの男の子の事を考える。
やっぱりどっかで見た事がある、大事な事だと思うんだが…なんだっけ?
俺が彼を思い出すのはそれから3日後の出来事だった。
シグナム家の長男として、実際は姉の初御披露目のおまけ程度に紹介された。
王都一のダンスホールでいろんな貴族達が話に花を咲かせていた。
よく聞くとそのほとんどが自慢ばかり話していて退屈だった。
ヒロインはまだこの王都に来ていないからまだ安心だろう。
父親に連れられいろんな人に軽く挨拶して回っていた。
メインは姉だから俺の自己紹介は名前だけで後は姉の話だった、家族と使用人以外を見るのは初めてで落ち着きなくキョロキョロと周りを見ていた。
姉は自由な性格で自己紹介が終わるといなくなってしまい、何処にいるのか目線で探していると同じ歳の男の子に囲まれて下僕を増やしていた。
…姉はまぁ、この歳で目立った悪さはしないと思うからとりあえずいいかな。
自己紹介なだけなのに、一通り連れ回されてヘトヘトになり外に出た。
初めてあんなに大勢の人を見たから人酔いしてしまった。
外は冷たい風が吹き、暗い空には無数の星が散りばめられていた。
大きく深呼吸すると新鮮な空気が気持ちを落ち着かせる。
人混みに戻る気にはならなくて庭を歩いていると小さな人影が見えた。
何をするでもなくしゃがんでいるその人影はなにかを持っている。
外灯に照らされた赤黒い髪が風に撫でられて揺れている。
何をしているのか気になり近付いてみて分かった…寝ている。
昼はぽかぽかの日射しだが夜は寒い、風邪を引いてしまう。
赤黒い髪、何処かで見た気がするがとりあえず肩を揺する。
…なかなか起きない、こういう場合どうしたら良いんだろう。
バシッと頬を叩いてみる、軽くのつもりだったがちょっと強すぎただろうか。
さすがに起きたのか目を丸くしてビックリしていた。
「ごめんね、痛かった?でもこんなところで寝てたら風邪引いちゃうよ」
「…きみ、だれ?」
寝起きだからかまだ眠たそうな目でボーッとしながら俺を見ていた。
俺より年上だろうか、小学生くらいの見た目をしていた。
無意識に寝ていたのだろうか、こんな外で危ないだろ…それは…
少年が手にしていたものを見ると、青い薔薇の花束だった。
少年は立ち上がり、何を思ったのか薔薇の花束を俺に押し付けた。
俺はわけも分からないまま素直に受け取り花束を見つめる。
「あげる、起こしてくれたお礼」
「大したことしてないよ」
「小さいのに頼もしいね」
少年はニコッと笑った、とても美しい少年だと思った。
彼に悪気がないのは分かっている…しかし小さいは余計だ…そりゃあ年齢に差があれば小さく見えるのは当たり前だ。
頬を膨らませて拗ねていると少年は何故俺が怒っているのか分からず首を傾げていた。
薔薇の花束はいい香りがした、でも何故この花束を持っていたのだろうか。
少年は再び座るから俺もつられて横に座る、何だか不思議な雰囲気が俺達を包み込む。
少年の方を向くと少年も同時に俺を見ていて気恥ずかしくて目をそらす。
「この花、いいの?」
「いいの、俺の家にあったものを持ってきただけだから」
「そうなんだ」
会話が続かない、初対面の相手にどう話したらいいか悩む。
少年は上を向いて空を眺めていた、とりあえず俺も空を眺める。
キラキラと光る空、生前の時テレビ以外で見た事がなかった空が今目の前に広がっている。
生前は見られなかった景色が見れて嬉しい筈なのに、なんか切ない。
掴める筈はないと思うが空に向かって手を伸ばすとキラッと流れた。
「あっ!流れ星!」
「本当だね」
少年も見たのか俺達は興奮して自然と声が上がる、少年の表情は全く微動だにしていないけど…
流れ星ってお願い事を三回言わなきゃならないんじゃなかったっけ?
あんな早い流れ星、一回だけでもギリギリなのに三回なんて無理だ。
少年は目を瞑っている、なにかお願い事をしたのだろうか。
もう流れ星は見えないが俺も目を閉じてお願い事をしていた。
とりあえず普通に恋愛して普通に結婚して普通の家庭を築けるならそれ以上は望まない。
ちょっと長すぎたかなと思っていたら隣から息遣いが聞こえた。
「だから寝ちゃだめだって!」
「いたっ…」
頭をチョップして起こすと今度は一発で起きてくれた。
お願い事をしていたわけじゃないのかい!とジト目で少年を見る。
すると遠くから「アルト様ぁー!!あーるーとーさまー!!」と大声が聞こえた。
グランの声だとすぐに分かり心配してやって来たのだろう。
立ち上がり少年に頭を下げて「もう外で寝ちゃダメだよ」と言いグランのところに走って行く。
グランは涙目になり外を走り回っていた、いるはずもないベンチの下とかくまなく捜していた。
「グラン、ここだよ」
「アルトさまぁぁぁ!!!!」
グランに声を掛けると物凄い早さで走ってきて俺を抱き締める。
ぎゅむっと強すぎる抱擁に苦しくなるが探してくれて嬉しかった。
グランには外で空気を吸ってくると一言言えば良かった。
力が抜けてポロッと薔薇の花束を地面に落としてしまった。
「あっ!!」
「アルト様、なにか落ちましたよ?」
グランが俺のにおいを堪能しまくり冷静になり、俺を降ろした。
そして何も知らないグランを地面に落とした花束を拾った。
俺は花束を飾る花瓶が家にあったかグランに聞こうとしたがグランの異変に気付いた。
グランは花束を拾う格好で目を見開いたまま固まっていた。
その格好、腰痛めそうだな…20代でも油断出来ないぞ?
その花束がどうしたのかとグランを下から覗き込む。
グランの顔がみるみると薔薇の花束のように真っ青だった。
「あ、アルト様…これ誰に貰ったんですか?」
「さっき知り合った男の子に貰ったんだ」
「お、おと…こ?アルト様が男に…僕の可愛いアルト様がぁ…」
何だかよく分からないがグランが花束を握りしめていて花が枯れちゃうとグランから花束を救出した。
まだなにかぶつぶつ言ってるグランはほっといて、俺はさっきの男の子の事を考える。
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―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
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