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出会い・トーマ視点
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異世界リーゼには国を問わず誰もが知っているとても有名な話があった。
ラグナロクという偉大な魔法使いがお供と旅をして凶悪な魔獣を倒したという伝説。
それは絵本や書籍にもなり、いろんな人が知っている。
世界初の最高ランクのSSSランクだった事もあり注目されていた。
そしてその遺伝子は息子にもちゃんと受け継がれていた。
トーマ・ラグナロク、偉大な魔法使いの一人息子であり0歳の頃の能力検査の結果はSSSランクだった。
ラグナロクの息子、それだけで周りは期待の眼差しを俺に向けていた。
俺はどうでも良かった、物心ついた時から父が嫌いだったから…
父は確かに勇敢に魔獣を倒したのかもしれない、しかし今の父は違う。
周りに英雄だとちやほやされ過ぎて堕落してしまった。
昔は王都のためと騎士団長になり国を守っていたが今は騎士団長を辞め、国民に見せられないほどのだらしない格好で英雄時代に稼いだ金でぐうたらに過ごしていた。
一部ではラグナロクは金に目がくらみ他国のスパイをしているという噂もある。
…噂は噂でしかないが、嘘だとも言いきれないのが真実だ。
最近まとまった金が入ったと父は俺達家族に自慢していた。
働いていないのに何処からそんな金が入ったのか気になるところだ。
母はいつもそんな父を健気に尽くして見守っていた。
英雄姿の父に惚れ込んだのに幻滅せず今まで支えてきたのは母だ。
なのに父は母ではなく全て自分のおかげだと思っている。
こんなクズには絶対ならないと反面教師にして7年間生きてきた。
父には騎士団に入りこの国を支えろとか偉そうな事を言われるがお断りだ。
俺は将来カフェを経営して素朴に暮らすという夢があった。
そして可愛い奥さんをもらい父とは正反対の人生を歩む。
それが子供ながらにもっていた俺の大切な夢だった。
それなのにある日父は俺をお偉いさんがいっぱい集まるパーティーに招待した。
そんなところに行ったら俺はすぐにラグナロクの息子だと知れ渡り素朴な人生計画が崩れ去る。
家の庭の薔薇園から薔薇を摘んでいた手を止めて逃げようとした。
子供の抵抗虚しく、父に担がれ強制的に連行された。
一言で言うと退屈以外の何者でもないパーティーだった。
見栄を張る父も、そんな父に媚を売る周りも…全てが気持ち悪かった。
ベタベタ頭を触られるのが不愉快で、早々にパーティー会場から出た。
庭には誰もいなくて手に持つのは青い薔薇の花束のみだった。
それを抱えてしゃがむ、誰かにあげるつもりはなかったが持ってきてしまった…どうしたものか。
考えているうちに目蓋が重くなり暗闇の中に落ちた。
夢の中で俺は田舎町の小さなカフェを経営していた。
顔は暗くて見えないが隣には愛しい奥さんもいて幸せを感じていた。
しかし突然父がカフェにやってきて「お前は騎士団に入るんだ!」と俺を担ぎ連れ去った。
悪夢だ、と眉を寄せていたら急に音が鳴り頬が熱くなった。
すぐにピリピリと痛みが頬に感じて驚いて見ていると、そこには可愛い女の子がいた。
赤黒い自分の汚い髪ではなく、艶やかな真っ黒な髪だ。
「ごめんね、痛かった?でもこんなところで寝てたら風邪引いちゃうよ」
「…きみ、だれ?」
頬を叩いたのはこの少女だろうから可愛い顔に似合わず凶暴なのかと思ったら、心配そうに見てきた。
初めてだった、俺のために叩いて起こしてくれた人は…
父は俺に怒ったりするが、叩かれた事は今までなかった。。
俺は小さい頃から大人しく悪戯はしない子供だったから怒る必要もなかった。
俺を怒る時は俺が騎士団に入りたくないと言った時だけだった。
頬の痛みがこんなに嬉しいものだなんて知らなかった…いや、変態じゃないけど…
俺の言葉を無視され少女は薔薇の花束を見つめている。
欲しいのだろうか、女の子は花が好きだと確か幼馴染みが言っていたっけ。
立ち上がり花束をあげると溢れそうなほど大きな瞳で驚いた顔をしていた。
女の子に贈り物をするのは初めてでちょっとドキドキ。
「あげる、起こしてくれたお礼」
「大したことしてないよ」
「小さいのに頼もしいね」
俺にとっては十分大した事をされた気分だったが少女の世界では日常なのかと驚いた。
自分以外にもビンタしているのか、初めて嫉妬したが俺はまだ嫉妬が何なのか初めての感情で分からなかった。
座り直すと少女も横に座る、雰囲気が何だか桃色になったような感じがする。
幼馴染みとよく並んで座った事があるが、幼馴染みとは別の感情が沸き上がる。
…何だろうこれ、ドキドキが止まらなくて苦しい………病気?
青い薔薇が少女をよりキラキラと見せていてとってもよく似合う。
「この花、いいの?」
「いいの、俺の家にあったものを持ってきただけだから」
「そうなんだ」
そこで沈黙…話題がない、父のような上部だけでも社交性があれば少しは少女も楽しかっただろうか、 つまらない男だと思われるのは嫌だ。
なにかないかと空を眺めると、キラッとなにかが通り過ぎた。
「あっ!流れ星!」と少女が嬉しそうに声を上げる。
お願いしなきゃ…と言ってももう流れてしまい見えない。
見えなくなっても有効だろうか、とりあえず目を閉じて祈る。
この子の事、もっと知りたい…今はそれだけでいいんだ。
そしてまた睡魔に負けてしまい寝てしまい少女に起こされた。
寝不足な筈はないんだが最近よく眠たくなるのが困りものだ。
もっと話したい聞きたい、そうだ少女の名前を聞いていなかった。
口を開いたところで別の誰かの声が聞こえたと思ったら少女は慌てて立ち上がった。
お迎えだろうか、迎えに来た人物は感情的に叫びなんて言ってるのかよく分からない。
最後に俺の方を振り向き「もう外で寝ちゃダメだよ」と言って走り去っていた。
不覚にもキュンと心臓を撃ち抜かれてしまったような衝撃が襲う。
決めた、将来あの子と結婚してカフェを経営しよう!
またいつか会えるかな、この王都に居ればきっと会えると信じていた。
俺は浮かれ気分で嫌だったパーティー会場に戻っていった。
そして再び父により挨拶回りに連れ回される事となった。
最後に紹介されたシグナム家の娘が一番強烈だったな、いろんな意味で…
勝手に婚約者宣言されたから好きな人がいると逃げた。
しかしあの女の子、ズボン穿いていた…スカートが嫌いなのかな?
スカートも似合うと思うけど、いろんな姿や表情をもっと見たいな。
俺は知らなかった、女の子が男の子だと言う事を…
俺は知らなかった、強制的に騎士団に入れられる事を…
その未来を知る事になるのはまだ少し先のお話。
ラグナロクという偉大な魔法使いがお供と旅をして凶悪な魔獣を倒したという伝説。
それは絵本や書籍にもなり、いろんな人が知っている。
世界初の最高ランクのSSSランクだった事もあり注目されていた。
そしてその遺伝子は息子にもちゃんと受け継がれていた。
トーマ・ラグナロク、偉大な魔法使いの一人息子であり0歳の頃の能力検査の結果はSSSランクだった。
ラグナロクの息子、それだけで周りは期待の眼差しを俺に向けていた。
俺はどうでも良かった、物心ついた時から父が嫌いだったから…
父は確かに勇敢に魔獣を倒したのかもしれない、しかし今の父は違う。
周りに英雄だとちやほやされ過ぎて堕落してしまった。
昔は王都のためと騎士団長になり国を守っていたが今は騎士団長を辞め、国民に見せられないほどのだらしない格好で英雄時代に稼いだ金でぐうたらに過ごしていた。
一部ではラグナロクは金に目がくらみ他国のスパイをしているという噂もある。
…噂は噂でしかないが、嘘だとも言いきれないのが真実だ。
最近まとまった金が入ったと父は俺達家族に自慢していた。
働いていないのに何処からそんな金が入ったのか気になるところだ。
母はいつもそんな父を健気に尽くして見守っていた。
英雄姿の父に惚れ込んだのに幻滅せず今まで支えてきたのは母だ。
なのに父は母ではなく全て自分のおかげだと思っている。
こんなクズには絶対ならないと反面教師にして7年間生きてきた。
父には騎士団に入りこの国を支えろとか偉そうな事を言われるがお断りだ。
俺は将来カフェを経営して素朴に暮らすという夢があった。
そして可愛い奥さんをもらい父とは正反対の人生を歩む。
それが子供ながらにもっていた俺の大切な夢だった。
それなのにある日父は俺をお偉いさんがいっぱい集まるパーティーに招待した。
そんなところに行ったら俺はすぐにラグナロクの息子だと知れ渡り素朴な人生計画が崩れ去る。
家の庭の薔薇園から薔薇を摘んでいた手を止めて逃げようとした。
子供の抵抗虚しく、父に担がれ強制的に連行された。
一言で言うと退屈以外の何者でもないパーティーだった。
見栄を張る父も、そんな父に媚を売る周りも…全てが気持ち悪かった。
ベタベタ頭を触られるのが不愉快で、早々にパーティー会場から出た。
庭には誰もいなくて手に持つのは青い薔薇の花束のみだった。
それを抱えてしゃがむ、誰かにあげるつもりはなかったが持ってきてしまった…どうしたものか。
考えているうちに目蓋が重くなり暗闇の中に落ちた。
夢の中で俺は田舎町の小さなカフェを経営していた。
顔は暗くて見えないが隣には愛しい奥さんもいて幸せを感じていた。
しかし突然父がカフェにやってきて「お前は騎士団に入るんだ!」と俺を担ぎ連れ去った。
悪夢だ、と眉を寄せていたら急に音が鳴り頬が熱くなった。
すぐにピリピリと痛みが頬に感じて驚いて見ていると、そこには可愛い女の子がいた。
赤黒い自分の汚い髪ではなく、艶やかな真っ黒な髪だ。
「ごめんね、痛かった?でもこんなところで寝てたら風邪引いちゃうよ」
「…きみ、だれ?」
頬を叩いたのはこの少女だろうから可愛い顔に似合わず凶暴なのかと思ったら、心配そうに見てきた。
初めてだった、俺のために叩いて起こしてくれた人は…
父は俺に怒ったりするが、叩かれた事は今までなかった。。
俺は小さい頃から大人しく悪戯はしない子供だったから怒る必要もなかった。
俺を怒る時は俺が騎士団に入りたくないと言った時だけだった。
頬の痛みがこんなに嬉しいものだなんて知らなかった…いや、変態じゃないけど…
俺の言葉を無視され少女は薔薇の花束を見つめている。
欲しいのだろうか、女の子は花が好きだと確か幼馴染みが言っていたっけ。
立ち上がり花束をあげると溢れそうなほど大きな瞳で驚いた顔をしていた。
女の子に贈り物をするのは初めてでちょっとドキドキ。
「あげる、起こしてくれたお礼」
「大したことしてないよ」
「小さいのに頼もしいね」
俺にとっては十分大した事をされた気分だったが少女の世界では日常なのかと驚いた。
自分以外にもビンタしているのか、初めて嫉妬したが俺はまだ嫉妬が何なのか初めての感情で分からなかった。
座り直すと少女も横に座る、雰囲気が何だか桃色になったような感じがする。
幼馴染みとよく並んで座った事があるが、幼馴染みとは別の感情が沸き上がる。
…何だろうこれ、ドキドキが止まらなくて苦しい………病気?
青い薔薇が少女をよりキラキラと見せていてとってもよく似合う。
「この花、いいの?」
「いいの、俺の家にあったものを持ってきただけだから」
「そうなんだ」
そこで沈黙…話題がない、父のような上部だけでも社交性があれば少しは少女も楽しかっただろうか、 つまらない男だと思われるのは嫌だ。
なにかないかと空を眺めると、キラッとなにかが通り過ぎた。
「あっ!流れ星!」と少女が嬉しそうに声を上げる。
お願いしなきゃ…と言ってももう流れてしまい見えない。
見えなくなっても有効だろうか、とりあえず目を閉じて祈る。
この子の事、もっと知りたい…今はそれだけでいいんだ。
そしてまた睡魔に負けてしまい寝てしまい少女に起こされた。
寝不足な筈はないんだが最近よく眠たくなるのが困りものだ。
もっと話したい聞きたい、そうだ少女の名前を聞いていなかった。
口を開いたところで別の誰かの声が聞こえたと思ったら少女は慌てて立ち上がった。
お迎えだろうか、迎えに来た人物は感情的に叫びなんて言ってるのかよく分からない。
最後に俺の方を振り向き「もう外で寝ちゃダメだよ」と言って走り去っていた。
不覚にもキュンと心臓を撃ち抜かれてしまったような衝撃が襲う。
決めた、将来あの子と結婚してカフェを経営しよう!
またいつか会えるかな、この王都に居ればきっと会えると信じていた。
俺は浮かれ気分で嫌だったパーティー会場に戻っていった。
そして再び父により挨拶回りに連れ回される事となった。
最後に紹介されたシグナム家の娘が一番強烈だったな、いろんな意味で…
勝手に婚約者宣言されたから好きな人がいると逃げた。
しかしあの女の子、ズボン穿いていた…スカートが嫌いなのかな?
スカートも似合うと思うけど、いろんな姿や表情をもっと見たいな。
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