49 / 71
48 故郷グリンフィルド 2
しおりを挟む
ミザリー達がグリンフィルドの領主館に到着したのは、午後も遅くなってからだった。
冬の冷たい夕陽が山の端にゆっくりと沈んでいく。山の向こうは東の国境、そして草原地方へと続いている。
「お嬢様!」
「ただいま、ベス! ただいま、マンリー!」
出迎えた家令夫婦を、馬から降りたミザリーは駆け寄って抱きしめた。彼らは両親のいないミザリーにとって、使用人以上の存在なのだ。
「お待ちしておりました! よくお戻りに!」
「ええ。戻ったわ。早速だけど、お爺様には会える?」
「はい……ですが、短時間にするようにと、医師様から言われております」
「……そんなにお悪いの?」
「はい。お熱が上がったり下がったりで、体力の消耗が著しいのです。十日前にリンガー村からお運びした時には、もうだめかと思ったくらいで」
「なぜその時に知らせてくれなかったの?」
「わずかに目を覚ましたお館様に厳しく止められまして……ミザリーの仕事に水を刺すなと。でも、もう少しで内密の知らせを出すところでございました。今回の知らせは医師様に指示されたのです」
つまりそれだけ悪いと言うことなのか。
「ケイト! 私に薬水を振りかけてちょうだい」
ミザリーは外套を脱ぎ捨てると、背後のケイトに指示した。薬水にはさまざまな香油が混じっており、消毒の役目を果たす。
「はい! ただいますぐ」
ケイトが用意していた霧吹きで、薬水をミザリーの手や顔に吹き付ける。
「お爺様! 今、会いに行きます!」
住み慣れた屋敷の階段を、ミザリーは駆け上がった。
グリンフィルドの館は、昔は砦として使われたそうだが、奥に広がる古い部分はほとんどが廃墟で、居住できるのは比較的新しい本館だけである。
祖父の部屋は二階の奥だ。居室の居間には誰もおらず、奥に寝室がある。
「お爺様! ミザリーです!」
重い扉の外から声を張る。すると中から医師が出てきた。ミザリーが子どもの頃から世話になっていた老医師である。
「おお、お嬢様! 戻られましたか! よかった」
「先生、ご無沙汰しております。お爺様の容態は?」
ミザリーは医師に詰め寄った。
「今は比較的落ち着いていて、先ほど目覚められました。面会も大丈夫です。ただ、あまり長い間話さないないように」
「……わかりました」
祖父の寝室からは苦い薬の香りが漂ってくる。奥の暖炉は赤々と燃え盛っており、走ってきたミザリーには熱いくらいである。
祖父の大きな寝台は部屋の奥にあった。
「お爺様……!」
「ミザリーか」
祖父はうっすら目を開いた。
元は大きな人だったのだが、骨組みを残したまま肉が落ち、がったりとやつれている。顔色も良くない。
「ただいま戻りました。お加減は?」
「見た通りさ。わしも存外ぽんこつのようだ」
「ぽんこつ……お爺様の好きな言葉ですわね。思ったより大丈夫みたいでよかったす」
ミザリーはわざと明るく言った。
「思ったより早かったの」
「馬を飛ばしてきましたから」
ミザリーは祖父の額に自分の指先を当てた。自分の指が冷たいのか、ひどく熱く感じる。
「子爵家の嫁御がお転婆なことだ」
「もうすぐ嫁ではなくなりますわ」
ミザリーは思い切って言った。自分が隠し事をしても、祖父にはすぐに見抜かれるからだ。
「……知っておる」
「え?」
ミザリーは目を見張った。祖父とは月に一度程度のやり取りがあったが、離縁に関しては一切伝えていなかったのだ。
「どうして……?」
「ユルディスが鷹を使って知らせてくれたからな」
バルファスはにやりと笑った。
「……鷹?」
そういえば、時々見かけたような……。
都会では珍しいと思っていたのだけど……あれはユルディスの鷹だったのね。
「鳥を使って、ユールとやりとりしていたのですか? お二人は知り合いなの?」
「まぁな。お前の婚姻で初めて会うた時から、何か通じるものがあってな」
「……」
ミザリーの知るかぎり、彼と祖父が顔を合わしたのは、一度しかない。二年前の結婚披露宴の時が最初で最後だ。
でも、言われてみれば、確かに二人は似ている部分が多いわ……。
「あやつは、たまに鷹を飛ばして、お前や子爵家の様子をわしに知らせてくれておったのだ。そら、その窓の外にあやつのくれた、飾り石がある。鷹はそれを目印にここまで手紙を運んでくれるのだ」
「っ!」
ミザリーは一番大きな窓に駆け寄った。確かに外の壁には、風変わりな紋様の刻まれた石が打ちつけられてあった、窪みには赤や青の綺麗な石がはめ込まれている。それは草原地方の民が目印に使うものだった。
「お爺様」
「おや、怖い顔だな」
「婚礼の宴で、ユールに何を言ったのです?」
「話しかけてきたのは奴の方からだよ」
「……」
「お前は鷹の娘だと言っておった」
「鷹の娘?」
そういえば、ユルディスがミザリーをそう呼ぶのを、何度か聞いたことがある。鷹は草原の民にとって神聖なものだ。
「どうして、お爺様はそのことを私に教えてくれなかったの?」
「わしが介入することでもなかろうが」
「でも……」
「はいそこまで!」
「せ、先生……」
頃合いを見計らったように、医師が入ってきた。
「長話はだめだと言ったでしょうに。お館様も、あまりお嬢様を煽らんでくだされよ。いくら、からかいたくて仕方がなくても、あなたは病人なんですぞ!」
「うるさい爺いだわい」
バルファスはにやりと笑った。
「爺いはお互い様ですわ。いいですか? あんなに心配されていたミザリー様もお戻りになったことだし、今日からは回復に全力を尽くしていただきますぞ!」
「わかったわかった。ミザリー、また明日話をしよう。あと、マンリーに、この秋の作物の出来高と、帳簿を見せてもらいなさい。わしはまた少し眠るよ」
「わかりました、お爺様。ゆっくりお休みください。明日の朝またきます」
病を得ても、どこか強かな祖父を前に、ミザリーは少しほっとしながら微笑んだ。
「ミザリー」
「なんですか?」
「お前の顔が見られてよかった。しばらく居るが良い」
「はい。そのつもりです」
廊下に出ると、ケイトとベスが待ち構えていて、元の自分の部屋に湯の支度ができていると言ってくれた。
旅の疲労を感じていたミザリーは、ありがたくその申し出を受けることにした。旅を急ぐあまりに、ほとんど着替えもしていなかったのだ。
久しぶりの自室は何も変わっていなかった。
古くて華やかではないけれど、ぶ厚い壁が、夏の暑さからも冬の寒さからも守ってくれる。掃除も手入れも行き届いていて、何もする必要がない。
衝立の影には、湯を張った小さめの浴槽が置かれている。湯にはたっぷり体を温める効果のある草野の束や、果実が浮かんでいた。
入浴は一人ですます習慣のミザリーを慮って、誰も入ってこない。
ミザリーは、脱いだ服を衝立にかけると、ゆっくりと湯に浸かった。
階下の浴室と違って、足を伸ばすほどの大きさはないが、体を温めるのには十分だ。
ここでは石鹸が使えないが、せめて髪を濯ごうと体を沈める。膝から下が外に飛び出てしまうが構わなかった。
貴族の婦人として、髪を結うために伸ばした髪は広がり、たっぷりと水を吸った。
やっとここに帰ってきた……。
私はどうして、あんなに一心不乱に頑張っていたのかなぁ。
最初は確かにルナール様への想いゆえだったのだけれど。
浴槽の底からミザリーは暗い天井を見上げた。
既に陽は落ち、蝋燭の灯りだけが水面に映り込んでいる。何もかも昔と同じだった。
故郷は、時が止まっていたかのように変わらない。都と違って、野暮で重厚だけど、虚栄も気苦労もない。
さて、そろそろ夕食の時間ね……
ミザリーがそう思った時、蝋燭の光を遮る影があった。
「……っ!」
驚いて体を上げた時、ぶつかったのは待ち構えていた男の唇だった。
冬の冷たい夕陽が山の端にゆっくりと沈んでいく。山の向こうは東の国境、そして草原地方へと続いている。
「お嬢様!」
「ただいま、ベス! ただいま、マンリー!」
出迎えた家令夫婦を、馬から降りたミザリーは駆け寄って抱きしめた。彼らは両親のいないミザリーにとって、使用人以上の存在なのだ。
「お待ちしておりました! よくお戻りに!」
「ええ。戻ったわ。早速だけど、お爺様には会える?」
「はい……ですが、短時間にするようにと、医師様から言われております」
「……そんなにお悪いの?」
「はい。お熱が上がったり下がったりで、体力の消耗が著しいのです。十日前にリンガー村からお運びした時には、もうだめかと思ったくらいで」
「なぜその時に知らせてくれなかったの?」
「わずかに目を覚ましたお館様に厳しく止められまして……ミザリーの仕事に水を刺すなと。でも、もう少しで内密の知らせを出すところでございました。今回の知らせは医師様に指示されたのです」
つまりそれだけ悪いと言うことなのか。
「ケイト! 私に薬水を振りかけてちょうだい」
ミザリーは外套を脱ぎ捨てると、背後のケイトに指示した。薬水にはさまざまな香油が混じっており、消毒の役目を果たす。
「はい! ただいますぐ」
ケイトが用意していた霧吹きで、薬水をミザリーの手や顔に吹き付ける。
「お爺様! 今、会いに行きます!」
住み慣れた屋敷の階段を、ミザリーは駆け上がった。
グリンフィルドの館は、昔は砦として使われたそうだが、奥に広がる古い部分はほとんどが廃墟で、居住できるのは比較的新しい本館だけである。
祖父の部屋は二階の奥だ。居室の居間には誰もおらず、奥に寝室がある。
「お爺様! ミザリーです!」
重い扉の外から声を張る。すると中から医師が出てきた。ミザリーが子どもの頃から世話になっていた老医師である。
「おお、お嬢様! 戻られましたか! よかった」
「先生、ご無沙汰しております。お爺様の容態は?」
ミザリーは医師に詰め寄った。
「今は比較的落ち着いていて、先ほど目覚められました。面会も大丈夫です。ただ、あまり長い間話さないないように」
「……わかりました」
祖父の寝室からは苦い薬の香りが漂ってくる。奥の暖炉は赤々と燃え盛っており、走ってきたミザリーには熱いくらいである。
祖父の大きな寝台は部屋の奥にあった。
「お爺様……!」
「ミザリーか」
祖父はうっすら目を開いた。
元は大きな人だったのだが、骨組みを残したまま肉が落ち、がったりとやつれている。顔色も良くない。
「ただいま戻りました。お加減は?」
「見た通りさ。わしも存外ぽんこつのようだ」
「ぽんこつ……お爺様の好きな言葉ですわね。思ったより大丈夫みたいでよかったす」
ミザリーはわざと明るく言った。
「思ったより早かったの」
「馬を飛ばしてきましたから」
ミザリーは祖父の額に自分の指先を当てた。自分の指が冷たいのか、ひどく熱く感じる。
「子爵家の嫁御がお転婆なことだ」
「もうすぐ嫁ではなくなりますわ」
ミザリーは思い切って言った。自分が隠し事をしても、祖父にはすぐに見抜かれるからだ。
「……知っておる」
「え?」
ミザリーは目を見張った。祖父とは月に一度程度のやり取りがあったが、離縁に関しては一切伝えていなかったのだ。
「どうして……?」
「ユルディスが鷹を使って知らせてくれたからな」
バルファスはにやりと笑った。
「……鷹?」
そういえば、時々見かけたような……。
都会では珍しいと思っていたのだけど……あれはユルディスの鷹だったのね。
「鳥を使って、ユールとやりとりしていたのですか? お二人は知り合いなの?」
「まぁな。お前の婚姻で初めて会うた時から、何か通じるものがあってな」
「……」
ミザリーの知るかぎり、彼と祖父が顔を合わしたのは、一度しかない。二年前の結婚披露宴の時が最初で最後だ。
でも、言われてみれば、確かに二人は似ている部分が多いわ……。
「あやつは、たまに鷹を飛ばして、お前や子爵家の様子をわしに知らせてくれておったのだ。そら、その窓の外にあやつのくれた、飾り石がある。鷹はそれを目印にここまで手紙を運んでくれるのだ」
「っ!」
ミザリーは一番大きな窓に駆け寄った。確かに外の壁には、風変わりな紋様の刻まれた石が打ちつけられてあった、窪みには赤や青の綺麗な石がはめ込まれている。それは草原地方の民が目印に使うものだった。
「お爺様」
「おや、怖い顔だな」
「婚礼の宴で、ユールに何を言ったのです?」
「話しかけてきたのは奴の方からだよ」
「……」
「お前は鷹の娘だと言っておった」
「鷹の娘?」
そういえば、ユルディスがミザリーをそう呼ぶのを、何度か聞いたことがある。鷹は草原の民にとって神聖なものだ。
「どうして、お爺様はそのことを私に教えてくれなかったの?」
「わしが介入することでもなかろうが」
「でも……」
「はいそこまで!」
「せ、先生……」
頃合いを見計らったように、医師が入ってきた。
「長話はだめだと言ったでしょうに。お館様も、あまりお嬢様を煽らんでくだされよ。いくら、からかいたくて仕方がなくても、あなたは病人なんですぞ!」
「うるさい爺いだわい」
バルファスはにやりと笑った。
「爺いはお互い様ですわ。いいですか? あんなに心配されていたミザリー様もお戻りになったことだし、今日からは回復に全力を尽くしていただきますぞ!」
「わかったわかった。ミザリー、また明日話をしよう。あと、マンリーに、この秋の作物の出来高と、帳簿を見せてもらいなさい。わしはまた少し眠るよ」
「わかりました、お爺様。ゆっくりお休みください。明日の朝またきます」
病を得ても、どこか強かな祖父を前に、ミザリーは少しほっとしながら微笑んだ。
「ミザリー」
「なんですか?」
「お前の顔が見られてよかった。しばらく居るが良い」
「はい。そのつもりです」
廊下に出ると、ケイトとベスが待ち構えていて、元の自分の部屋に湯の支度ができていると言ってくれた。
旅の疲労を感じていたミザリーは、ありがたくその申し出を受けることにした。旅を急ぐあまりに、ほとんど着替えもしていなかったのだ。
久しぶりの自室は何も変わっていなかった。
古くて華やかではないけれど、ぶ厚い壁が、夏の暑さからも冬の寒さからも守ってくれる。掃除も手入れも行き届いていて、何もする必要がない。
衝立の影には、湯を張った小さめの浴槽が置かれている。湯にはたっぷり体を温める効果のある草野の束や、果実が浮かんでいた。
入浴は一人ですます習慣のミザリーを慮って、誰も入ってこない。
ミザリーは、脱いだ服を衝立にかけると、ゆっくりと湯に浸かった。
階下の浴室と違って、足を伸ばすほどの大きさはないが、体を温めるのには十分だ。
ここでは石鹸が使えないが、せめて髪を濯ごうと体を沈める。膝から下が外に飛び出てしまうが構わなかった。
貴族の婦人として、髪を結うために伸ばした髪は広がり、たっぷりと水を吸った。
やっとここに帰ってきた……。
私はどうして、あんなに一心不乱に頑張っていたのかなぁ。
最初は確かにルナール様への想いゆえだったのだけれど。
浴槽の底からミザリーは暗い天井を見上げた。
既に陽は落ち、蝋燭の灯りだけが水面に映り込んでいる。何もかも昔と同じだった。
故郷は、時が止まっていたかのように変わらない。都と違って、野暮で重厚だけど、虚栄も気苦労もない。
さて、そろそろ夕食の時間ね……
ミザリーがそう思った時、蝋燭の光を遮る影があった。
「……っ!」
驚いて体を上げた時、ぶつかったのは待ち構えていた男の唇だった。
24
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる