爪を剥ぐ

みなみあまね

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【プロローグ2 過去:19歳夏・現在】

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 僕はもうすぐ、自分の腕の皮を剥ぐ事になるだろう。
 それは止め様がない儀式だ。僕が生まれてくる前から決められていた。
 大丈夫、僕はそんなに深刻な事態にはならない。ただ、心配なのは保都(たもつ)と美祢子(みねこ)だ。彼らは、この一連の衝動を生きる証であり、人生最大の目的であると思い込んでいる。
 僕も幼い頃はそう思っていた。何時からだろう、自分の腕の皮を剥ぎたくなったのは?

 そうだ、中学の頃に自転車で転んで腕を擦り剥いた時からだ。

 それから数年間、葛藤に次ぐ葛藤が、衝動という衝動が、僕を飲み込もうとしていた。 
   『腕の皮を剥ぐ』、それは天から与えられた使命のような敬虔な行為に思えた。しかし、その反対に僕に何が起こっているのか、ひどく怯えてもいた。そして、皆が陰で言う。

「あの家は呪われている」

   昔から僕の家は、この町では禁忌なのだ。
 今では、それがなぜなのか詳しすぎるくらいに知っている。
 だからこそ、僕は自分の腕の皮を剥ぐ事になるのだ。しかし、僕はこの『呪い』を自分の代で終わらせてしまうつもりだ。いや、終わらせるべきなんだ。
 この憐れで哀しい町で、僕は懺悔をするために生まれたのだろうけれど。
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