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第1話:偽聖女の烙印と、冷酷な婚約破棄
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きらびやかなシャンデリアが照らす、王宮の大晩餐会。
本来ならば、建国記念を祝う幸福な宴(うたげ)であるはずだった。しかし今、会場の中心にいる私の周りだけは、氷のような冷気と嘲笑が渦巻いている。
「――エルナ・フォン・ラインハイト。貴様との婚約を、本日この瞬間をもって破棄する!」
広間に響き渡ったのは、私の婚約者である第一王子・カイルの声だった。
私は、手にしていたグラスを落としそうになるのを必死で堪え、彼を見つめた。カイル王子の隣には、いつの間に忍び寄ったのか、可憐なドレスに身を包んだ男爵令嬢のミレーヌが、勝ち誇ったような笑みを浮かべて寄り添っている。
「殿下……、それはどういうことでしょうか。私は今日まで、聖女として欠かさず祈りを捧げ、国の結界を守ってまいりました」
「黙れ、偽聖女め!」
カイルは忌々しげに吐き捨てた。
「祈りだと? 貴様の祈りで結界が維持されているなど、思い上がりも甚だしい。魔力測定の結果は出ているのだ。貴様の魔力値は『5』。一般の平民よりも低いではないか。そんな無能が、ラインハイト公爵家の名を語り、聖女の座にしがみつくなど、もはや国家に対する冒涜だ!」
周囲からクスクスと忍び笑いが漏れる。
「魔力値5って……庭の雑草を枯らすこともできないわね」
「そんな無能が王太子の婚約者だなんて、今までよく図々しく居座れたものだわ」
突き刺さる言葉の刃。
確かに、一週間前に行われた魔力測定で、私の数値は史上最低の「5」を記録した。
けれど、それはおかしいのだ。私は幼い頃から、この身に溢れるほどの温かな光を感じてきた。結界を張る際も、私の指先から流れる魔力は確かに国中を包み込んでいたはずなのに。
「殿下、もうそのあたりで……。エルナ様が可哀想ですわ」
ミレーヌが、わざとらしいほどしおらしい声でカイルの腕に縋り付いた。
「魔力値『5万』を記録した私と違って、エルナ様は努力で補おうとしていたのですもの。……もっとも、才能(ギフト)がない者がいくら祈っても、神様には届きませんけれど」
会場に「5万!」という驚愕のどよめきが上がる。
聖女の平均値は2千から3千。5万など、お伽話の世界だ。
「……ミレーヌ様、あなたが、5万?」
「ええ。水晶が眩しくて割れるかと思いましたわ。これからは、私がカイル様を支え、この国に真の繁栄をもたらします。ですからエルナ様、あなたはもう、安心して身を引いてくださいな」
カイルは満足げにミレーヌの肩を抱き寄せ、冷酷な宣告を続けた。
「無能な偽聖女を置いておく場所はこの国にはない。エルナ、貴様をラインハイト公爵家から除名し、国外追放に処す。……行き先は『死の森』だ。せめて魔物どもの餌として、最期に国へ貢献するがいい」
死の森。
そこは、強力な瘴気が渦巻き、入った者は二度と生きては戻れないと言われる禁忌の地。
実家の両親を見れば、彼らは私を助けるどころか、汚らわしいものを見るように目を逸らした。公爵家にとって、無能な娘は一族の恥でしかないのだ。
「……わかりました」
私は震える拳を握りしめ、深く頭を下げた。
言い訳など、今の彼らには届かない。何を言っても「無能の戯言」として切り捨てられるだけだ。
私は、着飾っていた豪華な宝石や、聖女の証であるティアラをその場で外すと、床に置いた。
カラン、と虚しい音が響く。
「この国に、私の祈りはもう不要だというのですね。……後悔なさいませんよう」
「はっ、後悔だと? 貴様がいなくなって、清々するだけだ!」
カイルの嘲笑を背中に浴びながら、私は広間を後にした。
夜風が冷たい。
馬車に押し込められ、衛兵たちに連行される道中、私は自分の掌を見つめた。
魔力値5。そんなはずはない。
私の体の中で脈打つこの「熱い輝き」は、決して消えてなどいないのだ。
やがて馬車が止まり、私は真っ暗な森の入り口へと放り出された。
「達者でな、偽聖女様。魔物に食われる時は、少しはマシな悲鳴を上げろよ!」
衛兵たちの笑い声と共に、馬車が去っていく。
目の前には、不気味にうごめく漆黒の森。
絶望が私を飲み込もうとしたその時。
『……誰だ。我が眠りを妨げる、不遜な人間は』
森の奥深くから、空気を震わせるような重厚な声が響いてきた。
同時に、私の胸の奥に眠っていた「何か」が、爆発的な輝きを放ち始める。
私の物語は、ここで終わるのではない。
ここから、本当の私が始まるのだ。
本来ならば、建国記念を祝う幸福な宴(うたげ)であるはずだった。しかし今、会場の中心にいる私の周りだけは、氷のような冷気と嘲笑が渦巻いている。
「――エルナ・フォン・ラインハイト。貴様との婚約を、本日この瞬間をもって破棄する!」
広間に響き渡ったのは、私の婚約者である第一王子・カイルの声だった。
私は、手にしていたグラスを落としそうになるのを必死で堪え、彼を見つめた。カイル王子の隣には、いつの間に忍び寄ったのか、可憐なドレスに身を包んだ男爵令嬢のミレーヌが、勝ち誇ったような笑みを浮かべて寄り添っている。
「殿下……、それはどういうことでしょうか。私は今日まで、聖女として欠かさず祈りを捧げ、国の結界を守ってまいりました」
「黙れ、偽聖女め!」
カイルは忌々しげに吐き捨てた。
「祈りだと? 貴様の祈りで結界が維持されているなど、思い上がりも甚だしい。魔力測定の結果は出ているのだ。貴様の魔力値は『5』。一般の平民よりも低いではないか。そんな無能が、ラインハイト公爵家の名を語り、聖女の座にしがみつくなど、もはや国家に対する冒涜だ!」
周囲からクスクスと忍び笑いが漏れる。
「魔力値5って……庭の雑草を枯らすこともできないわね」
「そんな無能が王太子の婚約者だなんて、今までよく図々しく居座れたものだわ」
突き刺さる言葉の刃。
確かに、一週間前に行われた魔力測定で、私の数値は史上最低の「5」を記録した。
けれど、それはおかしいのだ。私は幼い頃から、この身に溢れるほどの温かな光を感じてきた。結界を張る際も、私の指先から流れる魔力は確かに国中を包み込んでいたはずなのに。
「殿下、もうそのあたりで……。エルナ様が可哀想ですわ」
ミレーヌが、わざとらしいほどしおらしい声でカイルの腕に縋り付いた。
「魔力値『5万』を記録した私と違って、エルナ様は努力で補おうとしていたのですもの。……もっとも、才能(ギフト)がない者がいくら祈っても、神様には届きませんけれど」
会場に「5万!」という驚愕のどよめきが上がる。
聖女の平均値は2千から3千。5万など、お伽話の世界だ。
「……ミレーヌ様、あなたが、5万?」
「ええ。水晶が眩しくて割れるかと思いましたわ。これからは、私がカイル様を支え、この国に真の繁栄をもたらします。ですからエルナ様、あなたはもう、安心して身を引いてくださいな」
カイルは満足げにミレーヌの肩を抱き寄せ、冷酷な宣告を続けた。
「無能な偽聖女を置いておく場所はこの国にはない。エルナ、貴様をラインハイト公爵家から除名し、国外追放に処す。……行き先は『死の森』だ。せめて魔物どもの餌として、最期に国へ貢献するがいい」
死の森。
そこは、強力な瘴気が渦巻き、入った者は二度と生きては戻れないと言われる禁忌の地。
実家の両親を見れば、彼らは私を助けるどころか、汚らわしいものを見るように目を逸らした。公爵家にとって、無能な娘は一族の恥でしかないのだ。
「……わかりました」
私は震える拳を握りしめ、深く頭を下げた。
言い訳など、今の彼らには届かない。何を言っても「無能の戯言」として切り捨てられるだけだ。
私は、着飾っていた豪華な宝石や、聖女の証であるティアラをその場で外すと、床に置いた。
カラン、と虚しい音が響く。
「この国に、私の祈りはもう不要だというのですね。……後悔なさいませんよう」
「はっ、後悔だと? 貴様がいなくなって、清々するだけだ!」
カイルの嘲笑を背中に浴びながら、私は広間を後にした。
夜風が冷たい。
馬車に押し込められ、衛兵たちに連行される道中、私は自分の掌を見つめた。
魔力値5。そんなはずはない。
私の体の中で脈打つこの「熱い輝き」は、決して消えてなどいないのだ。
やがて馬車が止まり、私は真っ暗な森の入り口へと放り出された。
「達者でな、偽聖女様。魔物に食われる時は、少しはマシな悲鳴を上げろよ!」
衛兵たちの笑い声と共に、馬車が去っていく。
目の前には、不気味にうごめく漆黒の森。
絶望が私を飲み込もうとしたその時。
『……誰だ。我が眠りを妨げる、不遜な人間は』
森の奥深くから、空気を震わせるような重厚な声が響いてきた。
同時に、私の胸の奥に眠っていた「何か」が、爆発的な輝きを放ち始める。
私の物語は、ここで終わるのではない。
ここから、本当の私が始まるのだ。
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