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第1話:祖父の死後
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「……はぁ、やっと死んだか。長かったな、由美」
通夜の夜。読経の余韻が残る自宅の居間で、夫の健一はネクタイを緩めながら、事も無げにそう言い放った。由美の祖父・泰三が息を引き取ってから、まだ丸1日経っていない。
由美にとって、泰三は唯一の肉親だった。両親を早くに亡くした自分を、厳しくも温かく育ててくれた恩人。その亡き骸の前で、涙が枯れるまで泣き腫らした由美に対し、健一は慰めの言葉一つかけなかった。
「ちょっと、健一。そんな言い方……」
「事実だろ? 介護だって金がかかるし、お前が実家に入り浸るせいで俺の飯がおろそかになってたんだ。これからはせいぜい、俺のために尽くせよ」
健一はスマホの電卓アプリを叩きながら、下品な笑みを浮かべる。
「で、おじいさんの遺産、都内のマンションだけで5000万は下らないって聞いたぞ。他にも土地があるんだろ? 全部で億いくんじゃないか?」
そこへ、台所から義母の照子が、香典の額を確認しながら入ってきた。
「あら、そんなにあるの? 由美さん、あなたおじい様に気に入られてたものねぇ。嫁の財産は家族の財産、ひいては健一のものよ。これでうちの住宅ローンも一括返済できるし、私の念願だった海外旅行も行けるわね。あ、ついでに古くなったキッチンもリフォームしちゃいましょうか」
「……お義母さん、まだおじいちゃんが亡くなったばかりです。そんな話、今は考えられません」
由美が震える声で絞り出すと、健一の目が冷たく据わった。彼は手に持っていた香典袋を、由美の足元に無造作に放り投げた。
「おい、生意気言うなよ。誰のおかげでこの家で暮らせてると思ってんだ? お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだからな。さっさと台所に行って、親戚に出す酒の用意でもしてこい。あ、一番高い酒を出せよ。どうせすぐ大金が入るんだからな」
床に散らばった香典袋と、それを拾おうともしない夫。祖父を失った悲しみすら踏みにじるこの親子の本性に、由美の心の中で何かが静かに、冷たく冷え切っていく音がした。
通夜の夜。読経の余韻が残る自宅の居間で、夫の健一はネクタイを緩めながら、事も無げにそう言い放った。由美の祖父・泰三が息を引き取ってから、まだ丸1日経っていない。
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「ちょっと、健一。そんな言い方……」
「事実だろ? 介護だって金がかかるし、お前が実家に入り浸るせいで俺の飯がおろそかになってたんだ。これからはせいぜい、俺のために尽くせよ」
健一はスマホの電卓アプリを叩きながら、下品な笑みを浮かべる。
「で、おじいさんの遺産、都内のマンションだけで5000万は下らないって聞いたぞ。他にも土地があるんだろ? 全部で億いくんじゃないか?」
そこへ、台所から義母の照子が、香典の額を確認しながら入ってきた。
「あら、そんなにあるの? 由美さん、あなたおじい様に気に入られてたものねぇ。嫁の財産は家族の財産、ひいては健一のものよ。これでうちの住宅ローンも一括返済できるし、私の念願だった海外旅行も行けるわね。あ、ついでに古くなったキッチンもリフォームしちゃいましょうか」
「……お義母さん、まだおじいちゃんが亡くなったばかりです。そんな話、今は考えられません」
由美が震える声で絞り出すと、健一の目が冷たく据わった。彼は手に持っていた香典袋を、由美の足元に無造作に放り投げた。
「おい、生意気言うなよ。誰のおかげでこの家で暮らせてると思ってんだ? お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだからな。さっさと台所に行って、親戚に出す酒の用意でもしてこい。あ、一番高い酒を出せよ。どうせすぐ大金が入るんだからな」
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