遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)

スカッと文庫

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第6話:仕掛けられた罠

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健一が紹介した病院から帰宅した夜。彼はこれみよがしな優しい手つきで、由美にコップ一杯の水と、数粒の錠剤を差し出した。
「由美、ほら、先生が処方してくれたビタミン剤だよ。これを飲めば、変な声も聞こえなくなるし、気持ちも楽になるから。さあ、俺の前で飲んでみせてくれ」

(ああ、これが例の「精神を朦朧とさせる薬」ね)
由美は一瞬の迷いも見せず、それを受け取った。喉を通る冷たい水。だが、由美は舌の裏側に薬を隠す技術を、かつて祖父の介護の際、薬を吐き出そうとする祖父を助けるために習得していた。まさか、それを自分を守るために使う日が来るとは。

「ありがとう、健一。……あ、そうだ。これ、おじいちゃんの土地の権利書のコピーなの」

由美はバッグから、蓮に作らせた精巧な「偽装書類」を取り出した。
「本物は別の場所に預けてあるけど、これがあれば売却の仮査定ができるって弁護士さんが。私、もう難しくて分からなくて……健一に任せてもいい?」

「おっ、さすが俺の妻だ! 話がわかるじゃないか!」
健一は権利書(のコピー)をひったくるように奪い取ると、サプリを飲み込んだ(ふりをした)由美を確認し、すぐさま自室に駆け込んで鍵をかけた。

すぐに、壁越しに低い声が聞こえてくる。
「ハニー! 権利書を手に入れたぞ。例の計画、前倒しだ。あの女に薬を飲ませ始めたから、あと一週間もすれば廃人同様になる。俺が後見人になる手続きも並行して進める。そしたらこの土地を売って、即座に換金だ。お前とタワマンの最上階で暮らす準備、進めておけよ」

電話の相手は、不倫相手の愛美だろう。
「(一週間後……。ええ、楽しみね。あなたの人生が、音を立てて崩れる瞬間が)」

由美は口の中から薬を吐き出し、ティッシュに包んで厳重に保管した。これは後に、警察での有力な証拠となる「毒」だ。

さらに翌日、由美はわざとフラフラした足取りで義母・照子の前を歩いた。
「お義母さん、私、なんだか体が重くて……。実印の場所、忘れないようにここに書いておきましたから……」
「あらあら、大変ねぇ。大丈夫よ、私がちゃんと管理してあげるから。ゆっくり休みなさいな」

照子の顔には、勝利を確信した醜い笑みが張り付いていた。
彼らは知らない。自分たちが「奪い取った」と思っている実印も、権利書も、すべてが由美と蓮が仕掛けた、破滅への招待状だということを。
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