遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)

スカッと文庫

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最終話:新しい人生の始まり

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それから半年が経った。
私の生活からは、あの陰湿な怒号も、神経をすり減らすような義母の嫌味も完全に消え去った。

健一と照子は、親戚中から絶縁され、一族の家系図からも抹消された。健一は勤務先にも不倫と傷害未遂の事実が知れ渡り、懲戒解雇。さらに、私への慰謝料と、これまで照子が着服した金の返還要求に追われ、今は家賃3万円のボロアパートで、深夜の工事現場や配送のアルバイトを掛け持ちする日々だという。

「あんなに贅沢が好きだったお義母さんも、今は近所のスーパーで見切り品の争奪戦に参加しているらしいわよ」
親戚から届くそんな報告も、今の私には遠い世界の出来事のように感じられる。

愛人の愛美も、業界内に悪評が広まり、居場所を失って姿を消した。健一から奪ったはずのブランド品も、すべて慰謝料の差し押さえとして回収されたと聞いた。

一方、私は祖父が遺してくれた古い屋敷を、丁寧にリノベーションしていた。
そこは、祖父が大好きだった広大な庭園を眺めながら、美味しいお茶と手作りのお菓子を楽しめるティーサロン。

「由美さん、新メニューのスコーン、焼き上がりましたよ。試食をお願いできますか?」

店のドアにかけられたアンティークのベルが心地よく鳴り、蓮さんが姿を見せた。弁護士としてのクールな表情はどこへやら、今では私のビジネスパートナーであり、一番の理解者だ。彼がいなければ、私は今でもあの地獄で震えていたかもしれない。

「蓮さん、いつもありがとうございます。……おじいちゃん、見ててくれてるかな。私、ようやく自分の足で立って、自分の人生を歩いてるよ」

庭に咲く、祖父が大切にしていた白い花――。その花言葉は「純真」、そして「新しい始まり」。私は、花の香りを胸いっぱいに吸い込み、青く澄み渡る空を見上げた。

「ええ、きっと。あなたがこうして、誰にも縛られず、自分の好きな人たちに囲まれて笑っている。それこそが、泰三様が最も望んでいた『相続』だったはずです。お金よりもずっと価値のあるものを、あなたは受け取ったんですよ」

窓から差し込む柔らかな陽光が、私の頬を温める。
奪われた時間は二度と戻らない。けれど、その痛みを乗り越えて手に入れた今の生活は、何物にも代えがたい宝石のように、私の心の中で輝いている。

「さあ、お茶にしましょうか」

私は蓮さんに向かって、心からの笑顔を浮かべた。
私の本当の人生は、今、この場所から、本当の意味で始まったのだ。
由美という一人の女性として、自由に、強く、生きていくために。

(完)
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