「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫

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第8話:没落への序曲

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文化祭の熱狂が嘘のように消え去った翌朝。学園の掲示板の前には、かつてないほどの黒山の人だかりができていた。
貼り出されたのは、異例の「懲戒退学」の告知。そこには如月ハルトとエマ、そして横領に加担した数名の生徒の名前が並んでいた。

「……マジかよ。如月、本当に家も潰れたらしいぞ」
「エマも、警察に連行されるところ誰かが見たって……」

昨日まで「王子様」と「お姫様」として崇められていた二人は、今や学園最大の「恥」へと成り下がっていた。

一方、私は学園の理事長室にいた。
ふかふかのソファに深く腰掛け、レンが淹れてくれた紅茶を一口啜る。
「……落ち着かないわね。この部屋に呼び出されるのは、いつも叱られる時だと思ってたから」
「これからはここが君の控え室だ。君の父親……佐藤会長からの寄付金で、この学園の老朽化した設備はすべて一新される。特待生の身分も、君が望むなら『名誉学生』に書き換えさせよう」
レンは窓の外を眺めながら、淡々と告げた。校門の前には、如月家の不祥事を聞きつけたマスコミや、借金の取り立てと思われる黒塗りの車が数台停まっている。

「……見に行かないのか? 彼らの『最後』を」
「ええ、もちろん。特等席でね」

私は立ち上がり、校門が見下ろせるバルコニーへ出た。
ちょうどそこへ、私服に着替えたハルトが、大きな荷物を抱えて校舎から出てくるところだった。かつての仕立ての良い制服ではなく、どこかヨレた服を着た彼は、怯えたように周囲をキョロキョロと見渡している。

「あ、ハルト様……!」
待ち伏せていたのは、エマの取り巻きだった女子生徒たちだ。彼女たちも、いじめの加担を疑われ、内申点に致命的な傷を負わされていた。
「どうしてくれるんですか! あなたのせいで、私たちの推薦も全部取り消しですよ!」
「そうだわ! エマに騙されてたなんて言い訳、通用しませんからね!」

「う、うるさい! どけ! 俺は如月グループの跡取りなんだぞ……っ!」
ハルトが怒鳴り返すが、その声には以前の威圧感は微塵もなかった。
そこへ、一人の男が歩み寄り、ハルトの肩を強く掴んだ。ハルトの父親が経営していた会社の、元従業員だろうか。
「……如月の坊ちゃん。あんたの親父さん、今どこにいるか知ってるか? 夜逃げして連絡がつかないんだよ。代わりに、あんたに聞きたいことが山ほどあるんだ」

「ひ、ひぃ……っ! 助けて、誰か!」
かつての王子様は、情けなく悲鳴を上げながら、男たちに引きずられるようにして車に押し込まれていった。

そしてエマ。彼女は警察車両に乗せられる直前、一瞬だけ学園の校舎を見上げた。
バルコニーに立つ私と、目が合う。
彼女は何かを叫ぼうとしたが、警官に促され、力なく首を振って車内へと消えた。彼女が手に入れてきた「偽りの居場所」は、もう世界のどこにも残っていない。

「……終わったわね」
私は、琥珀色の瞳を静かに細めた。
ざまぁ、なんて、そんな一言で片付けるには、あまりにも呆気ない幕切れ。

「いいや、これからだよ」
レンが隣に並び、私の肩に手を置いた。
「彼らはこれから、一生をかけて君に与えた苦痛の利息を払い続けることになる。……そして君は、誰の引き立て役でもない、君自身の人生を始めるんだ」

私は、手元に残っていた「地味な特待生」時代のノートを、バルコニーから放り出した。
風に煽られ、白紙のページが鳥の羽のように舞い上がっていく。

明日からは、もう眼鏡をかける必要はない。
私は、私として。この学園の、本当の頂点に君臨するのだから。
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