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海の都 ラグーノニア

幕間:ミコトの修行はこんな感じ

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 こうして一行は花の都に戻ってきた。次の旅までは少し時間があるらしく、のんびりするように、と二日酔い王子に言われて解散となる。王城にある自分の部屋へと戻ってきたミコトは、荷物を置いてベッドにゴロリと寝転がった。

(だいぶ濃かった気がするけど、これでも2週間と少しか……)

 コテージの木目調とは異なり、繊細で優美な絵が描かれた王城の天井を見つめながら、海の都での日々を振り返る。

(ビビリライオン、エビ、浪漫飛行、ほろ酔いライオン、くんくんライオン、クレイジー祭り、首絞め、ケモ耳ライオン、胸毛人魚、マフィアの抗争……)

 これはまずい。ライオンの出没率が高めなのは非常によろしくない。ここは某大陸の動物王国ではないのだ。というわけで、旅も一回休憩だし――

(アルから離れよう作戦第二弾を決行します!! )


 ♢♢♢


(ちょっとしつこいんですけど!? )

 作戦の遂行を試みてみたのだが、絶対に離れようとしないこの男。ミコトが何をしようとどこにいようと、ぴったり張り付いてくる。

(これじゃあ、当初の時に逆戻りじゃん!! )

 この国に来たばかりの、背後に張り付いていた頃みたいに、ずっとミコトの傍にはアルがいる。そして、あるかどうかよくわからない脅威に対して、常に警戒している。

「アル? 今はアルもお休みなわけでしょ? 少しくらい離れても俺平気だよ? 」

「駄目だ。目を離したらお前は何をしでかすかわからん。責任持って俺がちゃんと見届ける。」

(なんでこんなに職務に燃えてるんですか!? )

 もう慣れたとはいえ、こんなに必死にならなくてもいいのになぁ~と呑気な聖女は思うのであった。

 ♢♢♢

 自然の力を感じるため、毎日劇場テアトリージョに通うミコト、に必ず付き添うアル。何をどう言っても、必ずついてくる。おかげでロザリーたちに新しい舞台の構想、“~若きマフィアは黒薔薇に囚われる~”を話すタイミングを掴めないでいる。まったく、聞き分けの悪いネコちゃんだ。

(でもアルがいるから、ここに来れるんだよな~)

 テアトリージョ内で一番自然の力を感じやすい場所――探した結果、至宝が埋められていた壁際であることが判明した。この高い壁の上まで、連れて行ってくれるのはライオンになったアルしかいない。

「今日もお願いしていい? 」

「あぁ。」

 舞台が行われていない時間を見計らって、ライオンになったアルの背に跨り、上までジャンプする。登っていく感覚は何度やっても慣れなくて、アルのたてがみに顔をうずめるのは毎回恒例だ。

 上まで辿り着くとアルがその場に伏せるので、そこで目を開けてそっと降りる。目の前には壁、そして背中にはアルがいるから、下を見ることも落ちる恐怖も味わうことなく、安心して自然の力を感じる修行が出来る。

(このモフモフが困りものでもありますがね……)

 考えてみてほしい。極上のあたたかさの、モフモフソファにもたれながら、目を閉じてゆっくりと行う呼吸――

(誰だって寝ちゃうよね――!! )

 気づけばぐっすり眠っていて、アルに起こされる、を何度繰り返したことか。

(アルに先に降りてもらうわけにもいかないしなぁ。だって怖いし……)

 1人で修行をする勇気がない、甘えん坊聖女が、聖力を習得するにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 そしてその光景をロザリー歌劇団の方々が異様にネットリ見つめているのを――知らぬは当人たちだけだ。


***

劇団員A「前よりも、前よりも明らかに距離が近くなっているじゃないですか!? 海の都で何があったんだ!! 聞きたい……邪魔だ、アル様。 獣人であるアル様が、あんなに長くライオンの御姿で寄り添うなんて――もう番いといっても過言じゃ……」

ノーラ「それは言ったらだめよ、それはみんなが思っていることだけど、現実的にあり得ないんだから!! でも、だからこそ……あの二人からは執筆意欲が湧いてくるのよね……」

ロザリー「完璧に恋人のそれよね、雰囲気が。というかアル様といるミコト様って、何故か男の子に見えないのは気のせいかしら……普段はそうじゃないんだけど……」

「「「たしかに……!! 」」」

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