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Ⅰ-Ⅱ.モブとしての再出発
4.人間の欲求は単純だ。
そこから先は大変だった。
幸いにして、着替え方など「女性としての生活に必要な知識」はあらかた頭に入っていた。小太郎時代から知っていたわけではないため、恐らくは女神が脳内に流し込んでくれたのだろう。流し込むという表現が正しいのかは分からないが、当の本人がそういう発言をしていたのでいいことにした。
着替えは出来た。
では問題はなんなのかといえば、もっとレベルの低い話であって、本能的な欲求であり、つまるところそれは知的好奇心でもあるのかもしれない。
手近に全裸になった女性の体がある。
しかもそれをどう扱っても誰にも文句を言われることが無い。
人間、欲望には忠実なものだと思い知った。
初日で、しかも女神がどこから見ているのかも分からないところでそんなことをするのはまずい。そもそもこれから学校に行くのだ。間に合わなくなったらどうする。そんな理屈を考えながら、最終的には脳内で素数を数えることでなんとか思考を安定させ、朝食を取り、迎えに来た幼馴染と一緒に学校へと向かっている、という訳だった。
「はぁ……」
自己嫌悪である。しかたないことなのかもしれないけれど、まさか自分がそんなに欲求にまみれた人間だとは思わなかった。人間と言うのはどうしてこう愚かなのだろうか。
「空気になりたい……」
そんな独り言を聞いていた幼馴染が、
「なに、どうしたの?大丈夫だって、私がついてるから?ね?」
にっこりと微笑みかける。
彼女の名前は夢野陽子。家が隣同士ということもあって、小さいころから仲が良い、所謂幼馴染というやつだ。
いかにも「社交性があります」というタイプの顔立ちで、表情はころころ変わるが喜怒哀楽のうち、「喜」と「楽」が極端に多い。髪は明るめの茶髪で、ちょっとウェーブがかかっているが、これは癖っ毛なだけらしい。
出るところはそこそこ出ているものの、本人は「もうちょっと胸のサイズが欲しい」と思っている……というのが、彼女の基本情報だ。
なんでこんなことを知っているのかもよく分からないくらいなのだが、恐らくは女神が何とかしてくれたのだ。頼めば一晩で何でもやってくれたりしないだろうか。
さて。
彼女を心配させすぎるのも良くない。なんてったて彼女は小太郎……もとい、華のことを心配して同じ学校に通うのだ。恋愛に発展する可能性が捨てきれない。彼女の恋愛対象がどうかにもよるが、進路の選択を変えるくらいだ。どうころんでもおかしくはない。
だからこそそのフラグはへし折っておきたい……が、一方で、彼女無しで交友関係はなりたたない可能性がある。それだけは何としても回避しなくてはならない。従って、夢野には「親友ポジション」として収まってもらう必要があり、ここで過度に心配をさせるのは良くない。となれば、答えは一つだ。
「あ、ごめん。大丈夫。ただ、ちょっとほら、緊張して、つい」
大丈夫というアピールはする。だけど、心配なんだ、だから構って欲しいというアピールもする。これできっと大丈夫なはずだ。
それを聞いた夢野は、
「緊張してるの?それじゃ、」
なんの前振りもなく華を胸元に抱き寄せて、頭を撫でて、
「よしよし……大丈夫だからね」
あ ん の 女 神 !
なにが知らないだすっとぼけやがって。友情だけでこんなことしないだろう。友人を胸元に抱き留めてよしよしだなんてあっ……夢野の胸柔らかい……ふかふか……これが百合じゃなかったらなんだっていうんだ。まあ、ちょっと親愛が入っている気もしないでもないけど、それだって一種の恋愛に発展して……ママ……なでなでして……ママ……
「ちっがーう!」
「わっ!?」
しまった。思考がまとまらな過ぎて思わず爆発してしまった。
だけど、そんな華を見た夢野はかなり目に見えてしょんぼりして、
「そう……そうだよね……もう、良い歳だもんね……」
とぼとぼと歩いていく。
結局、そこから学院まではずーっと夢野の誤解を解くのに使うことになってしまった。なんだこれは。なんだと思います?
幸いにして、着替え方など「女性としての生活に必要な知識」はあらかた頭に入っていた。小太郎時代から知っていたわけではないため、恐らくは女神が脳内に流し込んでくれたのだろう。流し込むという表現が正しいのかは分からないが、当の本人がそういう発言をしていたのでいいことにした。
着替えは出来た。
では問題はなんなのかといえば、もっとレベルの低い話であって、本能的な欲求であり、つまるところそれは知的好奇心でもあるのかもしれない。
手近に全裸になった女性の体がある。
しかもそれをどう扱っても誰にも文句を言われることが無い。
人間、欲望には忠実なものだと思い知った。
初日で、しかも女神がどこから見ているのかも分からないところでそんなことをするのはまずい。そもそもこれから学校に行くのだ。間に合わなくなったらどうする。そんな理屈を考えながら、最終的には脳内で素数を数えることでなんとか思考を安定させ、朝食を取り、迎えに来た幼馴染と一緒に学校へと向かっている、という訳だった。
「はぁ……」
自己嫌悪である。しかたないことなのかもしれないけれど、まさか自分がそんなに欲求にまみれた人間だとは思わなかった。人間と言うのはどうしてこう愚かなのだろうか。
「空気になりたい……」
そんな独り言を聞いていた幼馴染が、
「なに、どうしたの?大丈夫だって、私がついてるから?ね?」
にっこりと微笑みかける。
彼女の名前は夢野陽子。家が隣同士ということもあって、小さいころから仲が良い、所謂幼馴染というやつだ。
いかにも「社交性があります」というタイプの顔立ちで、表情はころころ変わるが喜怒哀楽のうち、「喜」と「楽」が極端に多い。髪は明るめの茶髪で、ちょっとウェーブがかかっているが、これは癖っ毛なだけらしい。
出るところはそこそこ出ているものの、本人は「もうちょっと胸のサイズが欲しい」と思っている……というのが、彼女の基本情報だ。
なんでこんなことを知っているのかもよく分からないくらいなのだが、恐らくは女神が何とかしてくれたのだ。頼めば一晩で何でもやってくれたりしないだろうか。
さて。
彼女を心配させすぎるのも良くない。なんてったて彼女は小太郎……もとい、華のことを心配して同じ学校に通うのだ。恋愛に発展する可能性が捨てきれない。彼女の恋愛対象がどうかにもよるが、進路の選択を変えるくらいだ。どうころんでもおかしくはない。
だからこそそのフラグはへし折っておきたい……が、一方で、彼女無しで交友関係はなりたたない可能性がある。それだけは何としても回避しなくてはならない。従って、夢野には「親友ポジション」として収まってもらう必要があり、ここで過度に心配をさせるのは良くない。となれば、答えは一つだ。
「あ、ごめん。大丈夫。ただ、ちょっとほら、緊張して、つい」
大丈夫というアピールはする。だけど、心配なんだ、だから構って欲しいというアピールもする。これできっと大丈夫なはずだ。
それを聞いた夢野は、
「緊張してるの?それじゃ、」
なんの前振りもなく華を胸元に抱き寄せて、頭を撫でて、
「よしよし……大丈夫だからね」
あ ん の 女 神 !
なにが知らないだすっとぼけやがって。友情だけでこんなことしないだろう。友人を胸元に抱き留めてよしよしだなんてあっ……夢野の胸柔らかい……ふかふか……これが百合じゃなかったらなんだっていうんだ。まあ、ちょっと親愛が入っている気もしないでもないけど、それだって一種の恋愛に発展して……ママ……なでなでして……ママ……
「ちっがーう!」
「わっ!?」
しまった。思考がまとまらな過ぎて思わず爆発してしまった。
だけど、そんな華を見た夢野はかなり目に見えてしょんぼりして、
「そう……そうだよね……もう、良い歳だもんね……」
とぼとぼと歩いていく。
結局、そこから学院まではずーっと夢野の誤解を解くのに使うことになってしまった。なんだこれは。なんだと思います?
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