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リンの前世
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リンの中身の前世は、どこにでもいる高校生だった。
異性の友人もいなかったし、ましてや彼女などできたことはなかったが、それでも仲の良い友人が数人いて、それだけで十分だった。
「おーい!■■!帰ろうぜ!」
この日も、幼い頃から一緒に遊んでいた親友、とも呼べる人物と一緒に帰っていた。
「なあ■■。最近、面白いもん読んだ?」
「いや、もう高校二年だからな。そろそろ受験の準備しねえと」
「うわ、この真面目ちゃんが………」
至極真っ当なことを言ったつもりなのに、親友はなぜか引き気味だ。
「うっせぇ。てか、お前も勉強しろよ?直前になって助けを乞われてもさすがに受験勉強までは見きれないぞ?」
「でも、定期テストは見てくれるんだろ?そういうお前のちょっと面倒なところ、嫌いじゃないぜ!」
「俺はお前のいい加減なところ、嫌いだけど好きじゃないよ」
「結局嫌いじゃねえか!?」
親友は肩を叩きながらツッコんできた。
「でも?そんなこと言って~■■だって、本当は俺の事嫌いじゃないだろ?このツンデレめ~」
「やめろ。鬱陶しい」
■■の反応は淡白だったが、元々感情の変化が現れにくく、実際はそこまで嫌がっていないことをなんとなくわかっていた親友は、ほどほどに弄るのだった。
「にしても、勉強ばっかで疲れないか?お前、勉強はするけど勉強が好きな人種じゃなかったろ?前にも『今の学力至上主義社会が、駄目な日本を作り出してる』とかなんとか言ってたしな」
「そうだったな。だが、勉強ができたら、勉強ができるだけの無能でも上に行ける社会なんだ。変えるためにも、学力が必要だ」
「ま、俺にはそんなこと無理だけどな」
親友も■■の言いたいことはわからないでもなかったが、それを実現しようとは思えなかった。だが、親友として、疲れているのなら手助けをしたいとも思っていた。
「ま、頑張るのはいいけど息抜きも必要だからな。俺が最近ハマってるラノベでも読んで、少しは休めよ」
親友は疲れてるであろう■■を思いやる気持ちとして一冊の本を手渡した。
「なんだ?これ。『Crime・hunt』?」
親友から渡されたライトノベルらしくない題名の本に■■は疑問符を浮かべる。
「それ、俺が最近ハマってるラノベだよ。あらすじとか、■■は先に言われるの嫌いだろうから言わないけど、最近のラノベの中でも結構面白い部類に入ってると思うから読んでみろよ」
そう言われて、■■は仕方なくその本を受け取った。
その後親友と別れ、アルバイトに向かい、家に帰ってお風呂と夕食を済ませた■■は受験のための勉強に取り組んでいた。
「うーん」
一段落つき、そろそろ寝ようかとペンを置いたタイミングで、親友から借りた本のことを思い出した。
「『Crime・hunt』だったか………犯罪者狩り、ね………」
物騒なタイトルだなと思いながら、最初の冒頭だけでも少し読む。冒頭の内容は、田舎少年である『リン・メイルト』が外の街に向かって旅立つシーンだった。ご丁寧に挿絵まである。
「ふーん。徐々に面白くなるタイプか………」
この後の展開も少し気になるところだったが、時間も時間だったので、■■はこの日は寝ることにした。
そして■■は二度と目覚めることはなかった。
□■
次に目覚めた時、■■の頭は疑問符で溢れかえっていた。
(ここ、どこだ?)
天井は見覚えのないものになっており、体の自由も効かなくなっていた。
夢かとも思ったが、夢にしてはリアルすぎるとも思った。
(俺、どうなったんだ?)
混乱していても、周りは■■に冷静になる時間をくれなかった。
『gq'm'p@'Wgdtd/'.mdgm』
意味のわからない言語が聞こえてくる。
(どこの言葉だ?英語じゃ、ねえな。それならわかるんだが………)
だが、いつまで経っても聞き覚えのある言葉は聞こえなかった。
(近くに人がいるのはなんとなくわかる。だが、俺をどうするつもりだ?)
一先ず、話しかける。それを実行するために声を出して
「あー、あー」
まともに言葉を発生することができない現実に、絶望した。
(………え?言葉が、喋れない?)
それはそうだろう。声帯が未発達な赤ん坊では言葉を上手く話すなんて無理なことなのだから。
だが、■■はそれに気付かない。いや、気付きたくなかった。
「あー、あー!」
懸命に声を出しても、日本語を話せなかった。
『zpmgag#'xpgadtwmpc/'pm@』
やがて誰かが■■の体を抱き上げた。
そして、漸く理解させられた。
自分が、赤ん坊に転生していることを。
その後、最初は問題なかった。
言語が理解出来ず、少し苦労したがそれも半年経つ頃にはある程度理解できるようになった。
無論、まだなにを言ってるのか分からないこともあるが、それでも赤ん坊として暮らすには十分なくらいには理解出来た。
そして一歳の誕生日を迎える前日に、事件は起こった。
■■が暮らしていた村が、山賊に襲われたのだ。
突然の悲劇だったが、■■の誕生日の前日ということが幸いとして、■■の命は助かった。というのも、祖父が■■の誕生日を祝うために向かってきていたのだ。祖父は元々Sランク冒険者であり、引退したとはいえBランク程度ならば軽く捻れるくらいには強い。対して山賊はせいぜいがDランク程度。祖父の敵ではなかったのだ。
それから■■は祖父に拾われ、祖父と一緒に過ごした。
山賊に両親を殺された。その事実が■■の中には残り、ここは異世界なのだと、はっきりと認識させられた。
だが、■■の人生が変わったのはその後だった。
■■は一歳の誕生日を迎えてから三ヶ月後に、漸く自分の名前を理解できるようになった。
リン・メイルトという、今世の名前を。
────────────────────────
リンの前世くんの死因は焼死
放火魔に家焼かれて、■■は疲れていたのと、一酸化炭素中毒のふたつの要因で起きることなく死亡しました
異性の友人もいなかったし、ましてや彼女などできたことはなかったが、それでも仲の良い友人が数人いて、それだけで十分だった。
「おーい!■■!帰ろうぜ!」
この日も、幼い頃から一緒に遊んでいた親友、とも呼べる人物と一緒に帰っていた。
「なあ■■。最近、面白いもん読んだ?」
「いや、もう高校二年だからな。そろそろ受験の準備しねえと」
「うわ、この真面目ちゃんが………」
至極真っ当なことを言ったつもりなのに、親友はなぜか引き気味だ。
「うっせぇ。てか、お前も勉強しろよ?直前になって助けを乞われてもさすがに受験勉強までは見きれないぞ?」
「でも、定期テストは見てくれるんだろ?そういうお前のちょっと面倒なところ、嫌いじゃないぜ!」
「俺はお前のいい加減なところ、嫌いだけど好きじゃないよ」
「結局嫌いじゃねえか!?」
親友は肩を叩きながらツッコんできた。
「でも?そんなこと言って~■■だって、本当は俺の事嫌いじゃないだろ?このツンデレめ~」
「やめろ。鬱陶しい」
■■の反応は淡白だったが、元々感情の変化が現れにくく、実際はそこまで嫌がっていないことをなんとなくわかっていた親友は、ほどほどに弄るのだった。
「にしても、勉強ばっかで疲れないか?お前、勉強はするけど勉強が好きな人種じゃなかったろ?前にも『今の学力至上主義社会が、駄目な日本を作り出してる』とかなんとか言ってたしな」
「そうだったな。だが、勉強ができたら、勉強ができるだけの無能でも上に行ける社会なんだ。変えるためにも、学力が必要だ」
「ま、俺にはそんなこと無理だけどな」
親友も■■の言いたいことはわからないでもなかったが、それを実現しようとは思えなかった。だが、親友として、疲れているのなら手助けをしたいとも思っていた。
「ま、頑張るのはいいけど息抜きも必要だからな。俺が最近ハマってるラノベでも読んで、少しは休めよ」
親友は疲れてるであろう■■を思いやる気持ちとして一冊の本を手渡した。
「なんだ?これ。『Crime・hunt』?」
親友から渡されたライトノベルらしくない題名の本に■■は疑問符を浮かべる。
「それ、俺が最近ハマってるラノベだよ。あらすじとか、■■は先に言われるの嫌いだろうから言わないけど、最近のラノベの中でも結構面白い部類に入ってると思うから読んでみろよ」
そう言われて、■■は仕方なくその本を受け取った。
その後親友と別れ、アルバイトに向かい、家に帰ってお風呂と夕食を済ませた■■は受験のための勉強に取り組んでいた。
「うーん」
一段落つき、そろそろ寝ようかとペンを置いたタイミングで、親友から借りた本のことを思い出した。
「『Crime・hunt』だったか………犯罪者狩り、ね………」
物騒なタイトルだなと思いながら、最初の冒頭だけでも少し読む。冒頭の内容は、田舎少年である『リン・メイルト』が外の街に向かって旅立つシーンだった。ご丁寧に挿絵まである。
「ふーん。徐々に面白くなるタイプか………」
この後の展開も少し気になるところだったが、時間も時間だったので、■■はこの日は寝ることにした。
そして■■は二度と目覚めることはなかった。
□■
次に目覚めた時、■■の頭は疑問符で溢れかえっていた。
(ここ、どこだ?)
天井は見覚えのないものになっており、体の自由も効かなくなっていた。
夢かとも思ったが、夢にしてはリアルすぎるとも思った。
(俺、どうなったんだ?)
混乱していても、周りは■■に冷静になる時間をくれなかった。
『gq'm'p@'Wgdtd/'.mdgm』
意味のわからない言語が聞こえてくる。
(どこの言葉だ?英語じゃ、ねえな。それならわかるんだが………)
だが、いつまで経っても聞き覚えのある言葉は聞こえなかった。
(近くに人がいるのはなんとなくわかる。だが、俺をどうするつもりだ?)
一先ず、話しかける。それを実行するために声を出して
「あー、あー」
まともに言葉を発生することができない現実に、絶望した。
(………え?言葉が、喋れない?)
それはそうだろう。声帯が未発達な赤ん坊では言葉を上手く話すなんて無理なことなのだから。
だが、■■はそれに気付かない。いや、気付きたくなかった。
「あー、あー!」
懸命に声を出しても、日本語を話せなかった。
『zpmgag#'xpgadtwmpc/'pm@』
やがて誰かが■■の体を抱き上げた。
そして、漸く理解させられた。
自分が、赤ん坊に転生していることを。
その後、最初は問題なかった。
言語が理解出来ず、少し苦労したがそれも半年経つ頃にはある程度理解できるようになった。
無論、まだなにを言ってるのか分からないこともあるが、それでも赤ん坊として暮らすには十分なくらいには理解出来た。
そして一歳の誕生日を迎える前日に、事件は起こった。
■■が暮らしていた村が、山賊に襲われたのだ。
突然の悲劇だったが、■■の誕生日の前日ということが幸いとして、■■の命は助かった。というのも、祖父が■■の誕生日を祝うために向かってきていたのだ。祖父は元々Sランク冒険者であり、引退したとはいえBランク程度ならば軽く捻れるくらいには強い。対して山賊はせいぜいがDランク程度。祖父の敵ではなかったのだ。
それから■■は祖父に拾われ、祖父と一緒に過ごした。
山賊に両親を殺された。その事実が■■の中には残り、ここは異世界なのだと、はっきりと認識させられた。
だが、■■の人生が変わったのはその後だった。
■■は一歳の誕生日を迎えてから三ヶ月後に、漸く自分の名前を理解できるようになった。
リン・メイルトという、今世の名前を。
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