家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

花野拓海

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二章  しかし、概して人々が運命と呼ぶものは、大半が自分の愚行にすぎない。

なんて綺麗な森なんだ!伐採して新しく街を建てようではないか!

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 レベッカが静かに目を開くと、少し開いた目の隙間から光が差し込んでくる。

「うっ………」

 あまりの眩しさに思わず目を手で隠すと

「あ、目が覚めましたか?レベッカ」

 すぐ近くからアイトの声が聞こえてきた。

「えっと………おはよう?アイト」

 状況が理解出来ずにレベッカは朝の挨拶をしながら起き上がり、周囲を見渡す。
 そこは見慣れた自室ではなく、見慣れない湖が広がっていた。

「あれ?ここは………」

 湖。アイト。シートの上で寝ていたレベッカ。レベッカは全てを理解した。

 そしてレベッカの頭が置いていた場所も見ると、そこにはアイトの膝が置いていた

「ご、ごめんねアイト!」

 咄嗟に後ろに跳躍しながら謝罪するレベッカ。
 そんなレベッカを見ながらアイトは静かに笑った。

「いえ、大丈夫ですよ。それにしてもレベッカはぐっすりと眠っていましたね」

「本当にごめんね?膝、痺れてない?」

 普段正座することがないレベッカは、膝が痺れたことはないのだが、膝が痺れるとそこそこ痛いのではないか。そうアイトの足を危惧したレベッカは聞くが、

「いえ、大丈夫ですよ。レベッカの寝顔も堪能しましたし」

 レベッカはアイトにそう言われてはじめて気がつく。
 自分がアイトの膝の上で寝ていたということは、アイトにその寝顔を見られたということ。

 アイトは何度もレベッカの寝顔を見たことがおるとはいえ、それは寝る時と起きる時。そこまで長時間レベッカの寝顔をアイトに見られたことは無い。
 それゆえ、少々恥ずかしさも感じてしまうのだ。

「え、えっと、今ってどれくらいの時間かな?」

 恥ずかしさを紛らわせるため、咄嗟に思いついた質問で場を切り抜けようとレベッカは考える。

「そうですね。今の時刻は三時くらいでしょうか」

 12時すぎに昼食を食べて、1時頃までアイトの談笑。そして眠くなってきたレベッカが寝始めたのもそれくらいの時間だ。

「アイトは、寝てないの?」

「はい」

 アイトも寝ればよかったのに。レベッカはそう考えたが、アイトが寝てしまうと、魔獣に命を狙われる危険性がある。

 あくまでも、レベッカが今無事なのはアイト咄嗟に一緒にいるから。綺麗な湖とはいえ、ここは危険な森の奥だ。
 2人とも寝て、安全なはずがないのだから。

「ありがとう、アイト」

 アイトにも今から寝て欲しいと思う。だが、それだと魔獣から命を狙われる危険があるため、レベッカは簡単にそう言うことができないでいた。

 こんな時、一人で満足に自衛もできない自分のことがレベッカは心底嫌になる。

「では、レベッカも起きたことですし、そろそろ帰りますか」

 帰らないと家の人たちも心配するでしょうし。
 そう言って帰ろうとするアイトの服の袖をレベッカは引っ張った。

「レベッカ?」

 急に袖を引っ張って行動を止め、それでいて何も言わないレベッカにアイトは違和感を感じた。
 だが、レベッカは俯いたままだ。そして一言。

「帰りたく、ないな………」

 今帰ると、また虐められるとわかっていたから。

 本当は我慢するつもりだった。元々、自分は疎まれて当然の存在なのだから。

 だけど、アイトにこれほどまでに優しくされて、好きだなんて言ってもらえて、楽しい時間を過ごして。

 またあの空間に戻りたいだなんて誰が思うのだろうか。

「アイトと、一緒にいたい、な………」

 それは紛れもないレベッカの本音。
 そんなレベッカの言葉にアイトは少し戸惑う。

 レベッカは帰らなくてはならない。未来なら兎も角、今はまだレベッカはルーズ家にいなくてはいけない存在。なのでアイトとしてはレベッカには帰ってもらわなくてはいけないのだ。

「あ、ごめんねアイト。我儘言っちゃって」

 レベッカはそれが叶わない願いだとわかっていたからアイトに言われる前に引き下がった。

「じゃあ、行こっか。帰りも護衛、よろしくね?」

 レベッカと一緒に街へと足を進めるアイト。
 だが、アイトは忘れることはないだろう。

 最後の、レベッカの儚げな笑顔を。
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