家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

3章 逆境は真実へと至る最初の道筋である。

子供時代に戻れるのなら戻りたい！今のスペックで

　チノのパフォーマンスは素晴らしかった。
　素人目にもそう見えたのだ。光と水の魔法しか使っていなかったが、それでも幻想的な風景を描いていた。

　チノのパフォーマンスを見ると、大半の人は綺麗だと、感動するだろう。だが、フィアラは別のことを思っていた。

（ああすればいいんだ………）

　フィアラの中で、一つの形ができた。
　フィアラが楽屋に戻ると、中にいた人達が遠巻きに見下しているのがわかった。

（まあ、あのパフォーマンスじゃね）

　それは当たり前のことだとフィアラはあれだけ無様を晒したのだから。チノもガッカリしているだろう。

　でもフィアラは見下している人達になにか思うことは無い。

（人を見下している人に、未来はないからね………）

　故にフィアラはなにも思わない。哀れみの念も抱かないし、怒りもしない。ただ、なにも思わない。

「そろそろ、本番の時間かな………」

　そう言って時計を見るフィアラの姿をクスクスと笑う声が聞こえる。


■■■


　本番の時間が終わり、無事にパフォーマンスを終えたフィアラは、楽屋の外に出ていた。

　パフォーマーは、最後のマスタークラスのパフォーマンスが終わると、それぞれのクラスごとに結果発表が行われる。そして、そこで一位に輝いた人にだけ賞金がもらえるシステムなのだ。
　無論、事務所に所属していれば出演費は貰えるが、事務所に所属していないフリーのパフォーマーは、連絡先もないため、ここでしかお金を貰えない。

「まあ、問題ないかな」

　それは、お金を貰えないことに対してではなく、結果に対してだった。

「ノーマルランクって言っても、あの程度なんだね………」

　リハーサルの時は確かに上手くは見えなかった。だが、本番になればきっと良くなっている。そう思ったのだが、

「全然、変わってなかったじゃん」

　想像以上に下手だった。
　スーパーランクとマスタークラスのパフォーマンスまで見た訳では無いのでわからないが、思ったよりもレベルは低いようだった。

　フィアラは静かに誰もいない廊下を歩く。
　楽屋に戻っても邪険にされるだけだし、荷物もないので戻る理由もない。衣装も着替えて私服になっているので益々楽屋にいる理由が無くなった。

「どうしようかな………」

　勝っているとは思うが、さすがに結果発表も待たずに帰るのは常識にかけているし、何よりもお金が無い。
　どうしようか悩んでいると、前方から人が走ってくるのが見えた。

「あれ？チノさん？」

　走ってきた人物、チノは、フィアラの目の前で止まると、

「フィアラちゃん！私と、アイドルしない！？」