元ッ気があればッ何でも出来るッ!行くぞぁー! 特異『無限元気』で無限に元気ッ!元気ですかァー!

lion

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転移、落下

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 「やったぁ……」

 やっとの思いでトガを倒した俺はヘナヘナとその場に座り込んだ。そして倒したトガが姿を変えたマソが1点に集束し激しく光を放つ。それは今まで見た事も無い光だ。トガと同じく緑色の光を放つマソは、今まで見てきた中でも圧倒的に強い光を放っている。そしてそれが俺の中へとなだれ込んで来た。

「いやしかし……どんだけの量のマソなんだよ。確かにとんでもない強さだったけど」

 俺の中へと入ったトガのマソは、内側から爆発するんじゃないかと思うほどの量だった。マソの量はその魔物の強さに比例する、というのは理解していたけど、これはまた異質な感覚だ。明らかに他の魔物とは違う、特別な感覚がある。うまく言えないんだけど。兎にも角にも、これでなんとかトガを倒す事が出来た。

「ん?ありゃなんだ?まさかドロップアイテムまでいただけるのか?」

 俺は立ち上がり、トガがいた場所に落ちている物に歩み寄る。

「これは……剣……か?」

 床に落ちていたのは鞘に収められた一振の剣。長さはおおよそ1メートル弱って所か。剣身の幅から見てもブロードソードか?鞘の作りは簡素で装飾も無い。黒地に緑色の蛍光色の線がいく本も走り幾何学模様を描いている。それはトガの姿を彷彿とさせる。不思議な事に名前を示すウィンドウが出てこない。

「んー、とりあえずもらっておこう」

 俺は剣を拾い上げる。

『呪:サクカギリナキ:所有者を登録しました』

「なんだ!?なになに!?」

 急に頭に直接声が響いた。意味は分からない。同時に手にしている剣にも同じ内容の書かれたウィンドウが現れた。呪?なんかやばそうだろ。サクカギリナキ、ってのがこの剣の名前なのか?所有者を登録って?

「んまぁ……とりあえず抜いてみるか」

 俺は右手で柄を握り力を込める。

 ドクン

「なんだ……?」

 手にしているサクカギリナキと俺の体が同時に震える。それはまるで1つの心臓を共有しているかの様な感覚だった。そして体から何かが吸い取られて行くのを感じる。俺は構わず剣を引き抜くと、それは剣先から手元に向かって鋭い無数の刃が、いや鱗が生えているかの様だ。形はやや幅広の剣身に見える。それがこれを剣である事を物語っている様だが、それ以上に何かに似ている。そう、まるでトガの尻尾の様だ。トガの尻尾の様に先端から逆向きに生える鱗が剣の刃には見えず、どちらかと言うと銛の先端だけが連なっている様だ。その剣身は鞘同様、黒地に緑の光の線が走る独特な物だ。こんな剣、見た事無いぞ?

「でも何が呪いなんだ?」

 呪いって言うぐらいだから、何かしらやばい事が起こるんじゃないのか?俺は試しにサクカギリナキを振ってみる。すると若干鱗が立ち鋭さが増した気がする。

「あぁー、これはあれだな、俺のEPを吸い取ってるんだな?」

 なるほど、力を振るう代わりにEPを吸い取るのか。じゃあさっきのトガが弱って行ったのもこのためか。

「でも俺、無限元気のおかげでEP無限にあるんだよなあー」

 てことは俺にとっては呪いでも何でも無いのでは?こりゃラッキー!もしトガの様にEPを吸い取る事によって再生するんだとしたら、俺にとっては壊れない剣を手に入れたって事じゃないか?

「いやいや、これはいい物をいただいたな!めっちゃ俺向きの武器じゃないか!」

 ホクホクの俺はしばらくサクカギリナキを意味も無く振り回してみる。すると急に足元が激しく揺れた。

「なんだ!?地震か!?」

 俺は急いで剣を鞘に収め足を踏ん張る。激しい揺れは収まることも無く揺れ続ける。すると辺り一面、床や壁、天井に緑色の光の線が大量に走り、それが断面となり陥没したり隆起したり、分離したりと激しく姿を変えている。それは破壊や崩壊では無く、まるで組み換えられている様だ。

「な、なんだ!?どうなってるんだ!?ちょっ!!!」

 遂には俺が立っている場所も姿を変え、宙に舞う。

「おわっ!わわわわっ!」

 落ちる!?いや違う!この感覚は!

「て、転移するのか!?」

 落下しながら見上げた天井が、視界の外から広がってきた暗闇で見えなくなる。その暗闇が収束して行き、遂には全てが暗転した瞬間、瞬く間に視界の全てが青空と太陽の光で溢れた。

「うわっ!なんだ!?」

 頬に冷ややかな空気が触れる。そうか、ここはダンジョンの外か。完全に転移したんだな。目の前には青空が広がっている。そして全身に感じる浮遊感。てことは……。

「落ちてるって事かあぁぁぁー!?」

 やばい!とりあえず今落ちて行っている!どこから!?てかここどこ!?そんな事よりどれぐらいの高さから落ちてるんだ!?

「おわあぁぁあー!!!」

 俺は空中でバタバタして何とか体の向きを少し変える事が出来た。すると何とか視界の隅に地面を捉えられた。しかしその地面はもう目の前。

「どわあああああー!!!」

 俺は激しい音と共に地面に叩きつけられた、と思ったが、何だか感触は硬い地面じゃない。

「な、なんだ!?こいつ!?お、落ちてきた!?」

「え!?なになに!?人間か!?」

「いってててて……、何だよもう……」

 あれ?落ちて来た俺の下に何かあるぞ?何だこれ?

「あ、なんか魔物がいるぞ?」

 座り込む俺の下には大きな魔物がいて目を回している。俺がこいつの頭の上に落ちて来たからか?そりゃ申し訳ない事したな。

「ん?」

 なんか視線を感じる。顔を上げるとそこには武器を構えた人が数人、みんな驚いた顔でこちらを見ている。俺の後ろに何かいるのか?そう思って振り返ってみると、俺の後ろには大きな虎の様な魔物が数匹。あれはグランドサーベルタイガーだな。あいつ中々に強いんだよなぁ~。ってグランドサーベルタイガーもなんか警戒した顔でこっち見てるぞ?

「あ」

 俺のケツの下のモフモフもグランドサーベルタイガーなのか。どうりで落ちてきたのに痛くも何とも無かった訳だ。これはラッキー。

「よいしょ……っと」

 俺はケツに敷いていたグランドサーベルタイガーから降りて立ち上がる。

「ありゃあー、これは当たり所が悪かったかもね」

 と俺が呟いた所で下敷きになっていたグランドサーベルタイガーはマソへと姿を変えた。という事はこいつはダンジョン産の魔物だって事だ。

「ちょ……君、えぇ?」

 なんかあっちの人がもごもご言ってるな?そちらを見るとその人達は冒険者というよりは狩人の様な格好をしている。人数は5人、男3、女2の様だ。よく見るとみんな傷だらけで装備もボロボロ、結構な出血もしている。

「グルァアアア!」

 お?あっちのグランドサーベルタイガーが威嚇して来てるぞ?これはやる気だな。と思ってたら猛然とこちらへ襲いかかって来た。その数6体。なんだよもう。しゃーない、今体力は2500ぐらいしか無いけど、あいつらならノーダメージだろ。

「そだそだ、この剣試すのに丁度いいかも」

 俺は手に持っていたサクカギリナキの柄に手をかける。

 ドクン

 サクカギリナキが応えるかの様に脈打つ。俺はそのまま抜き放つ。1メートル程の剣身は黒地に緑の線、改めて見るとなんだか禍々しいな。

「どれどれ早速」

 飛びかかって来た最初の2体に向かって雑に剣を左から右へと横に薙ぎ払う。

「おわっ!?」

 思わず声が出た。横に薙いだサクカギリナキは空中にいたグランドサーベルタイガーを2体まとめて吹き飛ばした。いや、正確には削り飛ばしたとでも言うのか。その傷跡は刃物で斬った、と言うよりノコギリで切った、と言う表現が近いかも知れない。ノコギリよりも遥かに傷跡はエグいが。とにかくその一撃でグランドサーベルタイガーは2体とも前足の付け根から首を通り、反対側の足の付け根までが細かな肉片になって飛び散っていた。

「これはまた……凄惨な現場になっちゃったな……」

 こんなん子供には見せられないな。とか言ってる間に地面に落下したグランドサーベルタイガーはマソになって消えた。まぁグランドサーベルタイガーは肉質も柔らかいし、普通の剣で斬っても一撃だっただろ。そして後ろの残り4体を見るとまだまだ戦意が衰えていない。それはさすがと言うべきか、もしくは愚かと言うべきか、だな。

「よっしゃ!行くぞー!」

 やる気満々の奴ら相手に待ってる理由は無い。俺は残りの4体に向かって走り出し、そのまま乱暴に剣を振り回す。身を躱すのが間に合わなかった奴に頭から叩きつけ、その隙に飛びかかって来た奴を返す剣で切り上げる。どちらも頭が削り飛ばされ無くなった所でマソに変わる。その後ろから飛びかかって来た奴を振り上げた剣を袈裟斬りにして肩から胸までを削り取る。そして隙を伺っていた最後の1体の眉間目掛けて突きを放つ。剣が3分の1程突き刺さった辺りで最後の1体もマソになって消え去った。
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