修復スキルで無限魔法!?

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王都の異変

 「なんだか変な気分だよなぁ」

 何ともむず痒そうにゼニが言う。

「しょうがないでしょ。森の外まで案内って言っても、半分ぐらいは監視に近いんだから。それでも苦労しないで安全に森の外へ出られるならありがたいわよ」

 応えたのはアサヒ。トウゴと別れてからエンシェントエルフの案内でかれこれ1時間ぐらいは歩き通しだろうか。まさかエンシェントエルフが騙すとは思っていないが、さすがにこうも同じ景色の中を延々と歩かされると不安にもなる。

「あーあぁー、今頃トウゴは美味いもんでもご馳走になってんのかなぁ?」

「知らないわよ。相変わらず無駄口しか出てこない口ね。つまんない事ばっかり言ってるならもう返事してあげないわよ」

 不安がだんだんと苛立ちへと変わりつつあるのだろうか、アサヒは意味も無くゼニへ当たり散らす。

「まぁそのお兄ちゃんの言いたい事も分かるぜ。こんな森、早く抜けてエールの1杯でも引っ掛けたい気分だ」

 一緒に外へと向かっている他のパーティの冒険者も不安は同じ様だ。だからと言ってアサヒにはどうにも出来ないし、何かするつもりも無い。なんなら同じ境遇の1人な訳だし。

「ソジン、もう森の端が見えてきたぞ。ここまで来ればジンツーグの影響は受けない。ここから先は自分達だけで帰ってくれ」

 先頭を行くエンシェントエルフが立ち止まり指差す先は木々の数が明らかに少なくなっている。

「おぉー、やっとかよぉ、長かったなぁ」

「これで私達の役目は終わりだ。もう二度とお前達と会わずに済む事を願っているよ」

 エンシェントエルフの言葉は、次会う時はまた敵同士という意味なのだろう。それはその場にいた全員が理解している。とりあえず無事に王都の冒険者ギルドへ帰る事が出来れば多少の報酬は出るだろう。ゼニとアサヒ以外の冒険者は皆、それをもらった後に王都を出ようと思っている。こんな危険な依頼は関わらないに越したことはない。

「とりあえず、ありがとうございます」

 アサヒが礼を言うとエンシェントエルフは軽く会釈だけして去って行った。

「さて……っと、さっさと帰ろうぜ」

 アサヒはゼニの呟きに軽く頷き返事をする。そこにいる人間は皆クタクタの様だ。無事森を抜けると後は安全に王都まで行ける。多少魔物が現れる危険もあるが、森に出る魔物に比べれば楽勝だ。自然と気持ちが軽くなる。
 森を出てしばらく無言で歩く。魔物に出くわす事は無かったが、疲れているせいかなんだか道中が長く感じられた。

「やっと帰って来たなぁおい」

 冒険者の1人が呟く。その視線の先には遠くに王都の城壁が見えた。心なしか皆の歩く速さも増す。城壁が見えてから城門にたどり着くまではあっという間に感じられた。

「お前達……誤ちの森へ行っていた冒険者か?」

 城門を守る衛兵に声をかけられた。

「そう、本隊とははぐれちゃったけど、何とか自力で帰って来た所なんです。さすがに疲れちゃって……、すぐにでもご飯を食べたい所なんですが、通っても大丈夫?」

 アサヒが応えると衛兵は持っていた槍を下げた。

「話は聞いている、大変だったな。ギルドカードだけ見せてもらえれば通って大丈夫だ」

 衛兵の言葉に全員が素早くギルドカードを取り出し次々と衛兵に見せる。

「確認した。今門を開ける、通っていいぞ。疲れているだろう?今日は飯でも食ってすぐに休むといい」

 衛兵の言葉に冒険者の1人が右手を上げて応える。さすがに疲れているのだろう。言葉のひとつも出ない様だ。

「俺達はまっすぐ冒険者ギルドに行って報酬をもらってから宿に戻る。お前さん達もそうするだろう?ギルドまで一緒に行くか?」

「そうね……、めんどうだけど先にギルドに行って報酬もらった方がいいかもね。ゼニもそれでいい?」

「俺ぁそれでいいぜ。報酬もらって美味い飯をたらふく食いてえからなぁ」

「じゃあ決まりだな。さっさとギルドに行って手続きを済ましてしまおう」

 さすがに王都に入り皆安心したのか足取りは自然と軽い。真っ直ぐに冒険者ギルドを目指し歩くとすぐに到着した。

「おお!着いた着いた!」

 森の中での意気消沈ぶりを全く感じさせず、剣を携えた冒険者が勢い良く扉を開ける。中へ入ると感じる空気は何となく淀んでいる様だ。なんと言うか、端的に言えば空気が重い。心なしかいつもうるさいぐらいの冒険者ギルド内が静かだ。アサヒも、さすがのゼニもその雰囲気に気が付きつつもとりあえずは報酬をもらうため受け付けへと向かう。時間も時間なのだが、受け付けに並ぶ冒険者が1人もいないのも何だか気持ちが悪い。

「あの……エンシェントエルフの討伐依頼に参加してたんですけど……。少し遅くなっちゃいましたが報酬はもらえますか?」

 受け付けでアサヒが職員の女性に聞く。

「エンシェントエルフの?ああ、もしかして自力で帰って来られた方ですか?良くぞご無事で。今回は討伐依頼達成とはなりませんでしたが報酬は出ます。満額とまでは行きませんが……。このままお手続きしますか?」

「お願いします。それと……何だか雰囲気悪いですね……。何かあったんですか?」

「ええ、ちょっと……、いやちょっとじゃないかな……ははは……」

 アサヒの問いに曖昧な返事と笑顔で誤魔化す。

「とにかく報酬ですよね、後ろの方々も同じパーティの方ですか?」

「いえ、パーティは2組です。私とそこのアホ面で1組、それ以外の人達でもう1組です」

「かしこまりました。ではご用意いたしますので皆さんのギルドカードをお預かりします。終わるまで少し掛けてお待ちください」

 職員にギルドカードを渡した後、そこでそれぞれのパーティに別れた。

「なぁんか、変な空気だよなぁ」

 アサヒと2人で近くのテーブルに腰掛けたゼニが言う。

「そうね……。最初に帰って来た本隊の人達もいるでしょうに、どうにも重苦しい空気ね。何かあったのかしら?」

「とりあえず1杯飲もうぜぇ。さすがに疲れたわ」

 アサヒは頷き、ゼニはカウンターへと向かう。

「お姉さん、エールを2つと、後何か簡単につまめる物あったら欲しいんだけど?」

「かしこまりました。エール2つとおつまみご用意しますね。1000エルちょうどになります」

「あいよ」

 ゼニが1000エル札を渡すとカウンターの女性は後ろのキッチンへと消えていった。

「全くよぉ……無事帰って来たかと思ったのによ、面倒な事になりそうだな」

 カウンターで飲んでいた中年の冒険者2人がボヤいているのが聞こえた。

「よぉおっさん、何かあったのかぁ?」

 ゼニはエールを待つ間に話しかける。

「なんだぁお兄ちゃん、さっきの聞いて無かったのか?」

「いやぁ、俺ついさっき誤ちの森から帰ってきたとこなんだよねぇ。何かあったの?」

「ついさっきって、あぁ、おめぇ本隊とはぐれて自力で帰って来たのか?そりゃご苦労なこった。良く無事に帰って来れたな。せっかく無事に帰って来たのにツイてねぇな。まあツイてねぇのは俺達も同じか」

 言って冒険者2人は苦笑いする。

「だからよぉ、何があったんだって?」

「何ってよ、帰って来て早々、また森へ行くんだとよ。しかも報酬は今回の倍出すと来てる。断るってのも出来るが……なぁ?」

「ああ、倍って言われたらな。今回も満額出なかったしな。明日の朝出発ってよ……。疲れてんだけどなぁ……」

「え?またエンシェントエルフの討伐依頼って事なんかぁ?」

「そういうこった。お兄ちゃんは若いんだから、もちろん参加するよな?俺達も参加したっていいんだが……なぁんか騎士団の奴らの様子がおかしいんだよな」

「騎士団?なんで?」

「いや何、急にまた討伐しに行くって言い出したのも、どうやらギルドマスターの入れ知恵らしいんだよ。だからってなぁ……当の騎士団だって疲弊してるだろうによ。何でまたこんなに焦って行こうってんだか……」

「へえぇ……」

 ゼニが曖昧な返事をした所でエールが2杯とツマミの皿を乗せたトレイがカウンターまで運ばれて来た。

「お、ありがとう」

 ゼニは礼を言ってトレイを受け取りアサヒの元へと戻った。
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