修復スキルで無限魔法!?

lion

文字の大きさ
13 / 73

集会

しおりを挟む
「そろそろ行くかぁ?」

 汗をタオルで拭きながらゼニがオレの所へ来る。言われて空を見上げると確かに太陽が真上にまで到着しようとしている。

「正午っつったろ?もうそろだぜ」

「そうだなぁ、そろそろか。ああー、時計があれば便利なのになぁ」

 腕時計や懐中時計なんかがあれば正確な時間が分かる。やっぱり無いとかなり不便だ。

「時計?オレ持ってるぜ?」

 ゼニがズボンのポケットから懐中時計を取り出してパカッと開いて見せた。

「持ってんのかい!てかこの世界にも懐中時計なんてあんのな!早く出せよ!」

「何怒ってんだよ?栄養足りてねぇんじゃねぇか?」

 この世界でもイライラはカルシウム不足って認識はあるのね!

「ほれ、早く行くぞ。後30分で12時だ。遅れちまうよ」

「よし、じゃあ行くか」

 気分を入れ替えよう。なんかゼニに知識の面で負けた気がするとめちゃくちゃ腹立つな。草木を眺めて気分を落ち着ける事にしよう。

 ゼニは籠を、オレはリュックを背負って山道を降り始めた。さすがに登りよりは楽だな。まぁそれでもしんどいけど。広場に着いたら足にヒールをかけとこ。
 帰りは行きよりも快調に進み20分程で村まで戻ってきた。その足で広場に向かうとかなりの人数が広場に集まっていた。さすがに全員と言う訳では無いだろうけど、子供と年寄り以外はほとんどの人がいるんじゃないかな?でもこの広場で収まるぐらいだからやっぱり人口の少ない村なんだろう。

「もうそろそろ時間だ。話を始めようじゃないか」

 大きな声で広場の中心にいたトーラさんのお父さん、つまり村長が始まりを告げた。

「今日集まってもらった理由はもう分かっていると思う。コドクグモについてだ。決断の時が来たのだと思っている。もちろんこのままで良いはずが無い。だとすればどうするべきか?おそらくそれはふたつにひとつだ。コドクグモの巣に向かい奴らを退治するか、それともこの村を捨てて新しい場所で暮らすか。どちらかひとつだ。この村の人間はそう多くない。コドクグモには少数では勝てないだろうし、新しい土地へ行くにしても個人では金も無く荷物を運ぶ事すら出来ない。どちらにせよ、皆で力を合わせてやろうじゃないか」

 広場に集まった人は皆大きく頷いている。これがこの村の結束であり、平和な証拠なんだろう。

「でもよ村長、そもそもコドクグモなんて退治出来んのかい?」

 村人の中から男性が聞く。確かにそうだ。確実に勝てるなら誰だってコドクグモと戦うことを選ぶだろう。

「出来る、と思っている」

「ずいぶん曖昧だなぁ」

「言われる通りだと思う。しかしだ、今までと違う事がひとつある。昨日と一昨日、トウゴと言う少年がコドクグモの毒に苦しむ人の毒を消し去った、それは知っているな?」

 あ、オレの話か。

「それで変わった事がふたつ。ひとつは戦える者が増えた事。元気になった者はまた剣を取ることが出来るようになった。そしてふたつめ、またコドクグモの毒に犯されたとしても治療する事が出来るという事だ。それだけでも今までよりは格段に勝てる要素は増えただろう」

「でもよ、元気になった奴が増えたんならそれは引越しする人手が増えたって事でもあるだろ?無理に命をかけてまでコドクグモを退治しに行くことは無いんじゃ無いのか?」

「確かにそうだ。でも良く考えて欲しい。新しい土地で我々が今と同じ様な暮らしが出来るのかどうか。今王都では誤ちの森のエンシェントエルフとのいざこざで情勢が不安定なのだそうだ。その証拠にいくら助けを求めても王都からは一度も助けが来たことは無かっただろう?」

「そう言えばそうだな……じゃあよそ者がいきなり王都に行ったって仕事にありつけるかどうか……」

「でもよ、コドクグモと戦うなら命かけなきゃならないんだぞ?例えうまく行かなかったとしても王都に行ったって死ぬわけじゃない」

「そうだな……何もこの村じゃないと生きていけないって訳でも……」

 なんだかかなり揉めてるな。でも言いたいことは分かる。コドクグモと戦えば危険な事はもう十分すぎる程知っている。でも王都に行って生きていくって言うのはうまく想像出来ないんだろうな。でも……オレは良く分からないけど王都って言うぐらいだからかなり都会なんだろう。だとしたら都会で仕事も住む所も無い状態で上手く行くとは思えないな。

「でも……この村を離れるってのもなぁ……。コドクグモに襲われて死んだ家族の墓だってここにある。仇を取ってやりたい気持ちもあるよな」

「そんな事言ったって、死んで行ったやつらの二の舞って事もあるだろ?」

「そうだな……私たちだって……」

 やはり気弱になってるな。でも無理もないか。それからしばらく小声で近くの人と話す程度で話し合い自体は行き詰まっている。

 その時だった。

「父ちゃん!父ちゃん!コドクグモが!」

 広場の向こうから男の子が叫びながら駆け寄ってきた。

「お前……!どうした!?家に居たんじゃないのか!?」

 駆けて来た男の子はそのままお父さんに飛びついた。

「庭で……遊んでたら……村の外から……コドクグモが何匹も……母ちゃんがみんな呼んで来いって……母ちゃんが……」

 そう言うと男の子は大声で泣き出してしまった。

「コドクグモ……?まさかまた……?」

 不安な声が広がる。

「か、母ちゃんを助けに行かないと……!お前はここにいろ!」

 男の子を残しお父さんは駆け出していた。するとその向かう先から3匹のコドクグモがこちらに向かって来ていた。

「コ、コドクグモ……!?」

「コドクグモだ!なんでこんな時に!」

「誰か……!武器は!持ってないか!?」

 村長の声で皆周囲の人を見回した。しかし誰も武器など持っていない。話し合いに集まったんだ、当たり前と言えば当たり前だ。それでも数人は小さなナイフの様な物を腰に下げていて、それを抜いてみたものの、顔には戸惑いしか見えない。

「おい」

「あぁ、まともに戦えそうな物持ってんのはオレらぐらいだろ。お前さ、籠の中の武器お気に入りのふたつだけ持って残りはここの人に置いてけよ。どうせお前、すぐ壊しちゃうからたくさん武器持ってんだろ?」

「お、良く分かったな。そうなんだよー、力いっぱいぶった切ったらだいたいポキッと行っちまうんだよなぁあー。でもよ、そしたらオレの武器無くなっちまうぞ?」

「そんなもんオレに任しとけよ。ほれ、とにかく急がないとならないんだからお前は深く考えるな」

 なんか釈然としないまま、んー、とかうなりながら籠を降ろして他の人に武器渡してるな。で、残したのは幅広の大剣とずいぶんと長いロングソードの2本だった。

「決まったか?用意出来たらもう行くぞ」

「よっしゃ!さすがに2本になったら体軽いな!いつもより速く走れるぜ!」

「ちょ!待てっておい!あぁー!トーラさん、とりあえずオレらは行きますね!後でまた!」

 オレはトーラさんの返事も待たずにゼニの後を追った。

「いたぞ!あそこの家の前!2匹!子供とお母さんがやばそうだぞ!」

 駆けながらゼニが指さす先に2匹のコドクグモにジリジリと距離を詰められる2人の子供とお母さんが居た。

「ちょっと横避けろ!危ねぇぞ!」

 立ち止まりゼニに向かって叫んだ後、左手に持っていた盾を右手で掴み体を右回りに一回転。その勢いをそのまま盾に乗せ思いっきり水平に投げ飛ばした。放たれた盾は回転しながらフリスビーの様にコドクグモ目掛けて飛んでいく。綺麗に真っ直ぐな軌道を描き不意をつかれたコドクグモの胴体にヒットする。たまらずコドクグモはひっくり返り、それを見て驚いたもう1匹のコドクグモが盾が飛んできた方を確かめ、そしてオレたち2人を敵と認識する。もちろん優先されたのは敵であるオレたち。怯える親子からオレたちにターゲットを変えたコドクグモがこちらに向かって突進してくる。

「こりゃあー都合いいな!やりやすいだろ!」

 叫ぶとゼニは突進してくるコドクグモに向かって駆け出した。コドクグモもまさか向かってくるとは思っていなかったのか無防備に突っ込んできた。ゼニはコドクグモと衝突する少し手前で右足を踏ん張り半身になって急停止し背負っていた長い方のロングソードを抜刀する。コドクグモの方は止まる気も無くさらにスピードを上げゼニに向かい突進する。ゼニは抜刀したロングソードで地面を抉りすくい上げる様に切り上げ振り抜く。全速力で突進して来たコドクグモは急停止する事も出来ずロングソードの間合いに入り込み、顎の下から強烈な一撃を受けロングソードが体半分を切り裂き背中へ抜けた。それと同時にロングソードはちょうど真ん中辺りに亀裂が入り甲高い音と共にふたつに折れた。

「ちっ!ほらやっぱり!」

「なるほどなぁー。ほれ、その折れた剣貸せ。今はもう一本の方使っとけよ」

 ゼニはひょいっと折れたロングソードをオレに投げてもう一本の大剣を抜刀し、残り1匹のコドクグモに向かって行った。オレは見事キャッチしたロングソードを握る。

『修復』

 スキルを発動すると手元のロングソードの柄目掛けて折れた破片が逆再生の様に飛んで来て見る見るうちに元の姿に戻った。
 そうしてる間にゼニはもう1匹のコドクグモの頭を大剣で上から突き刺してとどめを刺していた。

「やーるねぇーゼニさん」

 オレは逆手に持ったロングソードの柄をゼニに差し出す。

「よゆーだぜ、よゆー。んあ?あぁ、なるほどなぁ、だから武器は2本でいいって言ったのか」

「そそそ、壊れたら直しゃいい」

「なるほどねぇ、便利だなお前」

「便利なのはオレのスキルであってオレじゃない」

 失礼な言い方するな。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

処理中です...