修復スキルで無限魔法!?

lion

文字の大きさ
52 / 82

安全な帰路

 「王国に戻るとは言っても……そう簡単に帰らせてもらえるものなのか……?」

 冒険者の剣士が言う。確かにそう簡単には行かないだろう。もし不安な予想が当たっていたなら尚更だ。今から王国側が逃げ帰るのも筒抜けかも知れない。

「きっと急いだ方がいいですよ。嫌な予感しかしない。さらに暗くなってからだとこの森は、土地勘も無ければジンツーグに迷わされる我々には危険しかないでしょ」

「トウゴの言う通りね。移動するなら早いに超したことはないわね」

 アサヒの言葉に全員が静かに頷いた。それからすぐに移動を始めたが、いかんせんどっちに進んだらいいか分からない所からスタートなのでかなり手間取った。おそらく1時間ぐらいだろうか、歩き続けているとやっと微かにジンツーグに振動を感じた。

「お?動いてますね?これって森のジンツーグに反応してる訳じゃ無いですよね?」

「そんな事分からん。ただオレ達は王国の城に反応してると信じて進むしか道は無い」

 まあ確かにそうか。とりあえず振動が強くなる方へと進むしか無い。たどり着いた先が森のジンツーグだとしたら振り出しに戻るだけだ。

「こいつぁー骨が折れそうだなぁ」

 ゼニの言う通り、これは下手をしたらかなり大変な道のりになるかも知れない。
 そこからさらに数十分、また少しだけ振動が強くなる。

「これはさすがに城に反応してそうだね。森のジンツーグだとしたら、最初に反応があった場所からそんなに離れているとは思えない」

「そうね、結構歩いたのに目的地には少ししか近づいていないって事でしょ?だったら王国の城に反応してるのが自然なんじゃない?」

「でもよぉ~、って事は城はまだまだ先だって事だろぉ?」

「まぁそうなるな。でも城にたどり着く前に他の冒険者や王国騎士団と合流出来たら帰るのも楽なんじゃないか?」

「なるほどね、トウゴの言う通りよ。とにかく仲間と合流出来れば何とかなりそうね」

 それからさらに歩いたが驚くほど景色が変わらない。鬱蒼としげる草と見上げても先が見えない巨木をかき分けて進む。けもの道すら見当たらない。さすがに体力も奪われ気力も削られて行く。

「こうも景色が変わらないとさすがに不安になってくるな……。本当に森の外へと向かっているのだろうか……?」

 冒険者が不安そうに呟く。無理もないか。

「でもほんの少しずつですけど、ジンツーグの振動も強くなってますし、間違い無く王国へ向かってるはずですよ」

 オレが言ったそれはただの気休めじゃない。本当に僅かではあるがジンツーグの反応は強くなっている。しかもこれだけ歩いてたったこれだけの変化だ。ジンツーグは間違い無く城の方角に反応しているだろう。とは言えこのペースで行ったら日が沈む前に森を出られるだろうか?進んでいる、と言ってもただ歩いて来た訳じゃない。苦戦するというほどでは無いが、魔物との戦闘も数回あった。それがさらに進行を遅らせている。

「王国騎士団やまとまった人数のパーティなら戦闘にかかる時間も少ないはず。もしかしたら私達よりも先に森を出てしまうかもね」

 そうだろうな。オレ達より遅く進む事は考えにくい。オレ達はヒールがあるから怪我人はいないけど、それにしたって戦闘にかける時間は格段に違っているだろう。

「それってよぉ、合流して楽チンにこの森を出るってのが難しいって事かぁ?」

「そうかもな。これは自力で森を出る覚悟が必要かも知れない。でも夜になって野営、というのは避けたいな」

「そうね、森に残る人数が減れば減るほどこちらが不利になるのは間違い無いわね」

 あれ?結構切羽詰まってるのでは?あちらの冒険者パーティの顔にも疲労と落胆の表情が見られる。しかし愚痴を言っても始まらない。

「とにかく進みましょう。少しずつかも知れませんが、それでも確実に王国へは向かっているんですから」

 みんながオレの言葉に少しだけ気持ちを入れ直したその時、木の影から人影が現れ声がした。

「止ま……あぁ、先程の人間では無いか」

 そう言って現れた人影は構えていた弓を下げた。その人影はエンシェントエルフ。声を発したエルフが手を上げると、次々に弓を下ろしてエルフ達が現れる。てかいつの間にこんなに囲まれていたんだ……?

「あれ?そう言うあなたはさっきの?」

「そうだ、先程他の冒険者に子供が人質に取られていた時のエルフだ」

「ああ~、やっぱり。あの子は無事家に帰れましたか?」

「うむ、つい今しがた送り届けて来た所だ。あの子もお前達にお礼を言っていたぞ。改めて礼を言おう」

「いやいやそんな!どちらかと言えば悪いのはオレ達の方の冒険者なんですから。お礼なんて言わないでくださいよ」

「なるほど、やはりお前は変わった人間の様だな。しかし早々に見つかって良かった。実はお前達を探していたのだ」

「探してた?オレ達を?」

「そうだ、送り届けたユーノだがな、実は長老様の親族でな、孫の孫……だったかな?ちょと忘れてしまったが、とにかく長老様が助けてもらった礼を直接したいそうだ。こんな事今まで聞いた事も無いが長老様の願いなので、迷惑で無ければ里まで足を運んでもらえないだろうか?」

 え?そんな事あるの?まさか王国がジンツーグを壊してまで攻め込みたかったエンシェントエルフの里に、まさかのご招待とは。

「驚くのも無理は無い。言っている私も驚くぐらいだ。とは言っても人間を里に入れる事を心良く思わない者も少なく無い。あまり人目につかぬ様、そして長くは引き止めないつもりだ。どうであろう?」

「ちょっと、いきなりの展開ね。どうするのよ?」

 近寄ってきたアサヒがコソコソ話しかけてくる。

「どうってよぉ、お礼したいってんだからお言葉に甘えたっていいんじゃねぇかぁ?ご馳走ぐらいは出るだろぉよぉ?オレはエルフのご馳走ってのに興味あるなぁ」

 ゼニも混ざって来るがどうも論点がズレてる。

「断るってのもね……。お礼がしたいっていうこも嘘には思えないけど、心良く思ってない人がいるって言うのは一概に安全とは言えないかもね……」

 オレは少しだけ考えて決めた。

「分かりました、お言葉に甘えてエルフの里へのお誘いをお受けします。ただ他の仲間は用があり急ぎ帰らなければなりません。なので里へはオレ一人で伺っても良いでしょうか?」

「ちょっ……!トウゴ!?」

 小声で驚くアサヒを手で制する。

「お前一人で?我々は構わんがそれでいいのか?せっかくだ、料理のひとつも振る舞うのだぞ?」

 それを聞いて何か言いたげなゼニを睨みつけて黙らせ、オレが返事をする。

「本当に勝手を言ってすいません。出来れば里へオレを案内していただくのと、残りの仲間を森の外まで案内していただけると助かるのですが……お願い出来ますか?」

「なるほど、そうか。なかなかに聡明な様だ。良いだろう、我々としても問題は無い。そう言えば名を聞いていなかったな。私はウバ、客人の名は?」

 そう言ってウバと名乗るエルフはにこやかに笑う。

「トウゴです。ではウバさん、よろしくお願いします」

「了解だ。ではトウゴ、里へとお連れしよう。とは言っても我々と一緒でなければ里へたどり着く事は出来ん。目隠しなどしないから安心してくれ。他の者にはそこに居る若いのを2人、道案内に付けよう。なあに、怪しげな動きさえしなければ、無事森の外まで送り届けよう」

 これであっちも大丈夫そうだ。

「ちょっとトウゴ!いいの!?」

「そうだぜお前!ご馳走独り占めはズルくねぇか!?」

「いやたぶん大丈夫だよ。それより2人は王国に戻って色々調べてみた方がいい。分かるよね?」

「分かんねぇけど?」

「分かったわ、怪しそうな所は何となく見当がつくし。それよりトウゴも、居心地が良くてもちゃんと無事帰って来るのよ」

「分かってる、お礼をもらったらすぐに帰らせてもらうよ」

 そう言って2人に手を振ってから振り返り、ウバに目で合図する。

「いいようだな。では案内しよう。お前達はあちらの者達を森の外まで案内してくれ」

 若いエルフが2人、アサヒとゼニ、それと他の冒険者達を連れて森の外へと向かって行った。これでみんな無事王国へ帰れるだろう。途中の魔物もエルフの襲撃の心配も無くなった訳だ。

「ではトウゴ、我々も行こうか」

 オレはウバの案内で森の奥へと進んだ。
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。