婚約破棄したいんでしょう?って、何を勝手に決めつけてるんですか

NoBorder

文字の大きさ
18 / 18

第18話(最終話) そして私達は…

しおりを挟む
「ゴホ、ゴホ…ったく世話掛けやがって!」

燃えさかる屋敷から離れると、エドワードはコーディを地面に座らせた。

「なぜ戻ってきた?僕の事なんかほっといてくれりゃいいのに!」

吐き捨てるようにコーディが言った。

「自殺したいなら俺の見えないとこでやってくれ。目の前で死なれると胸くそ悪いんだよ」

エドワードは憐れむようにコーディを見下ろした。



「エ、エドワード!」

私は少し上ずった声で彼の名を呼びました。

「…エレーヌ?…エレーヌか!」

エドワードは私をすぐには認識できないようでした。
考えてみれば、今の私は彼の知っている『笑わずの令嬢』ではなく逞しい農村の娘です。私は急に恥ずかしくなってうつむきました。

「エレーヌ……可愛くなったな」

そう言ってエドワードはニッコリ笑いました。

「エドワード、体は大丈夫なんですか?」

「ああ、何も問題ない、それより…君を誘拐したのはコイツだろ」

エドワードがコーディの襟を掴んで私の前に差し出しました。

「もういいわ、ほっておきましょう」

「いや、悪い事をしたらちゃんと謝る、それが大人というものだ!」

「ふん…悪っかったな…」

コーディはふてくされて横を向きました。

「なに?聞こえないな!」

「悪かったよ、ごめんよ」

エドワードの圧に押されて、コーディが初めて私に頭を下げました。

「分かりました。許すとは言えませんけど、もうあなたを咎めはしません」

「よし、良かったなコーディ!」

エドワードはコーディの肩をバシバシと叩きました。

「じゃあ次は俺だ。…エレーヌ、迎えに来るのにこんなにかかっちまった、ごめんな…」

申し訳なさそうに照れ笑いするエドワードを見た私は、涙を浮かべながら何度も首を横に振りました。

 * * *

さて、話は一気に十年後に飛びます。

私達は結婚し、エドワードの母方の実家であるソウド地方の街で暮らしていました。

国王は国事を放り出して私を探しに出たエドワードの行動を認める事はなく、城に戻る事を許しませんでした。そして、エドワードの王位継承権は第二王子のシドミードに移されました。
それでも、私達は三人の子供に恵まれ、質素ながらも幸せに暮らしています。


コーディは、トナン地方を農地改革した技術を全土にまで広げ、国の経済を豊かにしました。
その実績が認められ、今では国の要職に就いているそうです。変人のくせに、実はなかなかの世渡り上手だったわけです。

 * * *

ある日、国王の使者が私達を訪ねて来ました。

「国王様が、エドワード様と和解したいと申されております」

エドワードは耳を疑いました。彼が国王の頑固さを誰よりもよく知っていたからです。

私は渋るエドワードを説得して国王と対話する機会を作りました。親子が不仲なのは不幸な事ですから…

 * * *

国王の迎えの馬車が到着しました。

馬車から降りてきた人物を見た私は、驚きのあまり心臓が止まるかと思いました。
その人物はハバロッティ伯爵、私の父でした。

城に向かう馬車の中、父は今回の経緯を話してくれました。その話を要約するとこうです―

この一連の出来事の仕掛け人はコーディでした。
国王の側近になったコーディは、エドワードを王家に戻すように働きかけ、それと同時にハバロッティ家と王家の関係修復も図り、私を受け入れる環境も整えたのだそうです。

まあ、事の元凶がコーディ本人なので、(だから何なの?)とも思いましたが、自分の行動にいっさい責任を取らない人も多い世の中です。コーディは心を入れ替えたのだと思う事にしました。


馬車はもうすぐ王都に着きます。

私の生まれた街、そしてエドワードの生まれた街です。

「お帰り、エレーヌ」

街に入った瞬間、エドワードが言いました。

「お帰りなさい、エドワード」

私もエドワードに言いました。

そして、近づいてくる城に向かって二人で言いました。

「ただいま」


 (完)
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

処理中です...