12 / 14
12 最終兵器を受け取りに
しおりを挟む
あれから数日が経った。
僕たち(ドルチェ、ルキア、アテッサ、エディフィス、僕)は、ブライツ達(ブライツ、エクセリーヌ、プレザージュ)と別れ、列車の中にいた。
―前日。
「ラショード・フォン王国ですか?」
僕はブライツに聞き返した。
「ああ、ある工房に発注していた新装備が完成したんだ。お前たちにそれを引き取りに行ってほしい」
「どんな装備なんですか?」
「詳しくは話せないが、来たるべき日のための最終兵器とだけ言っておこう」
「最終兵器!そんな大事な物ならブライツさんが受け取ったほうが…」
「いや…アスト、この兵器はお前にしか使いこなせない。俺はそう思っているんだ」
「僕が使う?最終兵器を?そんな……」―
というわけで、僕たちはブライツの依頼でラショード・フォン王国に向かっていた。いや、僕にとっては戻っていたと言うべきか…
ラショード・フォン王国はバーゼル大陸の北に位置する。
寒冷で農業に向かない土地の為、早くから工業を中心とした近代化が進められてきた。
また、魔法道具の製作工房が多い事から、魔法道具士の養成機関である魔法工学院があり、まさにこここそが僕の母校であった。
僕たちの居る車両には、僕たち以外に数名の乗客しかおらず閑散としていた。
ドルチェとアテッサ、エディフィスは向かい合った席に座り、カードゲームをしている。
ルキアは少し離れた席で瞑想に浸っている。
そして僕は、一人で別の席に座り、スケッチブックを広げて、まだ見ぬ最終兵器をあれこれ想像しては絵に描いてみたりしていた。
「オレ、盗賊のくせにシーフと名乗ってる連中が許せないんです…ドロー」
エディフィスはカードを出しながら言った。
「シーフのスキルは盗みに向いてるからな、盗賊に身を落とす者も多いと聞くが…パス」
ドルチェはカードを引きながら答えた。
「シーフと盗賊って違うんですか?…ドロー」
アテッサはカードを出しながら訊いた。
「全然違う!シーフの主な仕事は情報収集なんです、人の物を盗んだりしない…ドロー」
「そうか、ワシも誤解してたかもしれんな、すまん…パス」
「エディフィスさんは魔法って使えるんですか?…スペシャルドロー」
「魔法とはちょっと違うけど、オレの先祖はシズクイシ国のシノビだったんで忍法が使えます…ドロー」
「シズクイシといえば大陸の東にある島国だな…パス」
「シノビってどんな仕事なんですか…エクストリームチャンス」
「国王に仕え、国内外のトラブルを裏で解決してきた重要な仕事です…ドロー」
「ロックオン!」
アテッサは宣言すると、エディフィスの出したカードを取った。
「ハイパーリゾートサンダーボルトであたしの勝ちです」
彼女は手札を開いて見せた。
「参った、アテッサちゃんは強いな」
ドルチェは手札を投げ出した。
「えっと、あたしが562点で、ドルチェさんが0点、エディフィスさんは…マイナス5万点です」
「マ、マイナス5万点!」
「はい、エクストリームチャンス中にサブルーチンをコンプライアンスしたのでマイナス5万点です」
「あの、アテッサちゃんお願いがあるんだけど…」
「なんですかエディフィスさん」
「ルールをもう一回ちゃんと説明してもらっていいかな…」
「ですから、エクストリームチャンス中にサスティナブルしないとサブルーチンがエビデンスしちゃうんですよ、それでマイナス5万点です」
「えーと…コンプライアンスはどこにいったのかな…」
ガラガラッ、ドンッ
車両間のドアが乱暴に開かれ、息を切らした男が入ってきた。
「ハアハア…」
瞑想していたルキアは目を開くと男に近寄っていった。
「何かあったのか?」
「獣人だ…獣人が出た!」
僕たち(ドルチェ、ルキア、アテッサ、エディフィス、僕)は、ブライツ達(ブライツ、エクセリーヌ、プレザージュ)と別れ、列車の中にいた。
―前日。
「ラショード・フォン王国ですか?」
僕はブライツに聞き返した。
「ああ、ある工房に発注していた新装備が完成したんだ。お前たちにそれを引き取りに行ってほしい」
「どんな装備なんですか?」
「詳しくは話せないが、来たるべき日のための最終兵器とだけ言っておこう」
「最終兵器!そんな大事な物ならブライツさんが受け取ったほうが…」
「いや…アスト、この兵器はお前にしか使いこなせない。俺はそう思っているんだ」
「僕が使う?最終兵器を?そんな……」―
というわけで、僕たちはブライツの依頼でラショード・フォン王国に向かっていた。いや、僕にとっては戻っていたと言うべきか…
ラショード・フォン王国はバーゼル大陸の北に位置する。
寒冷で農業に向かない土地の為、早くから工業を中心とした近代化が進められてきた。
また、魔法道具の製作工房が多い事から、魔法道具士の養成機関である魔法工学院があり、まさにこここそが僕の母校であった。
僕たちの居る車両には、僕たち以外に数名の乗客しかおらず閑散としていた。
ドルチェとアテッサ、エディフィスは向かい合った席に座り、カードゲームをしている。
ルキアは少し離れた席で瞑想に浸っている。
そして僕は、一人で別の席に座り、スケッチブックを広げて、まだ見ぬ最終兵器をあれこれ想像しては絵に描いてみたりしていた。
「オレ、盗賊のくせにシーフと名乗ってる連中が許せないんです…ドロー」
エディフィスはカードを出しながら言った。
「シーフのスキルは盗みに向いてるからな、盗賊に身を落とす者も多いと聞くが…パス」
ドルチェはカードを引きながら答えた。
「シーフと盗賊って違うんですか?…ドロー」
アテッサはカードを出しながら訊いた。
「全然違う!シーフの主な仕事は情報収集なんです、人の物を盗んだりしない…ドロー」
「そうか、ワシも誤解してたかもしれんな、すまん…パス」
「エディフィスさんは魔法って使えるんですか?…スペシャルドロー」
「魔法とはちょっと違うけど、オレの先祖はシズクイシ国のシノビだったんで忍法が使えます…ドロー」
「シズクイシといえば大陸の東にある島国だな…パス」
「シノビってどんな仕事なんですか…エクストリームチャンス」
「国王に仕え、国内外のトラブルを裏で解決してきた重要な仕事です…ドロー」
「ロックオン!」
アテッサは宣言すると、エディフィスの出したカードを取った。
「ハイパーリゾートサンダーボルトであたしの勝ちです」
彼女は手札を開いて見せた。
「参った、アテッサちゃんは強いな」
ドルチェは手札を投げ出した。
「えっと、あたしが562点で、ドルチェさんが0点、エディフィスさんは…マイナス5万点です」
「マ、マイナス5万点!」
「はい、エクストリームチャンス中にサブルーチンをコンプライアンスしたのでマイナス5万点です」
「あの、アテッサちゃんお願いがあるんだけど…」
「なんですかエディフィスさん」
「ルールをもう一回ちゃんと説明してもらっていいかな…」
「ですから、エクストリームチャンス中にサスティナブルしないとサブルーチンがエビデンスしちゃうんですよ、それでマイナス5万点です」
「えーと…コンプライアンスはどこにいったのかな…」
ガラガラッ、ドンッ
車両間のドアが乱暴に開かれ、息を切らした男が入ってきた。
「ハアハア…」
瞑想していたルキアは目を開くと男に近寄っていった。
「何かあったのか?」
「獣人だ…獣人が出た!」
0
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる