15 / 28
第15話
しおりを挟む
オンラインゲーム『バトルボッツ』空間内
インターミッション中の冬馬にRevHから通信が入る。
『やあ、チャンプ!最近よく会うね』
「またあんたか‥俺はチャットしに来てる訳じゃないんだけどな」
『まあいいじゃないですか。言ったでしょ、僕はあなたのファンだって』
「ファンって‥」
『そうだ、一つ話のネタを提供するよ』
「だからチャットしに来てる訳じゃないって‥」
RevHから動画ファイルが送られてくる。
そこには戦場で武装した兵士と銃撃戦をするロボットが映っていた。
「バトルボッツのキャプチャー動画か?見た事無いロボットだな‥」
『確かにその動画はバトルボッツの隠れキャラとしてネットで拡散されたものだけど、こんな地形はバトルボッツの何処にも出てこないんだ』
「それで?」
『世界中の地形を照会したら、撮影場所は中東のペドロギスタンだと分かった。
ペドロギスタンは、4年前に旧政権が崩壊し、市民議会と軍部の抗争が激化した。劣勢だった市民議会をロシアが支援し新政権が樹立された。しかしペドロギスタンは核兵器を開発していると言われていたから、軍部の残党がそれを使ったら世界的危機だ、それを回避できたのは秘密裏に核兵器施設に潜入し、そこを制圧した有人ロボット兵器の活躍があったとか‥ね、面白いでしょ』
「別に、興味ないな」
『じゃあ何故これを秘密にしなけりゃならなかったのか?
ロシアにはハヤセの自動車工場があるでしょ、ハヤセは密かにロシア工場内でロボット兵器の開発をしていて、それを黙認していた日本政府とロシア政府の間でペドロギスタンへロボットを派遣する裏取引があったとしたら、それは秘密にするしかないよね』
「ハヤセがPDを兵器に使ったって言うのか」
『今もPDOSには戦闘用の機能があって、それが事故のトリガーになったとか』
「なら俺は兵器開発に加担してたって事か、笑えない話だな」
『まあ、あくまで噂だよウワサ。そういえば、国交省の調査は進んでる?』
「調査官はディープスペースの中で事故を再現出来ないかって言ってたな‥」
『その話、詳しく聞かせて!』
突然、通信に割り込んできたのはテスタロッサ(蓼丸論里)だった。
『やあ!孤高の戦士テスタロッサ。音声通信なんて激レアだな』
RevHが興奮の声を上げた。
『ねえ、モーターショーの事故を再現するって本当なの?』
「いや、氷室純正レベルの天才プログラマーが協力しないと駄目らしい」
『氷室純正ってDDRの社長でしょ、たった一人でディープスペースを造った伝説の人物。実は実在しないって噂もあるけど』
『ふーん、それは中々高いハードルだね。でも、面白い事考えるねその調査官は‥』
* * *
国土交通省 事故調査室
「DDRが事故調査に協力したいと?」
章生は佐高の言葉を繰り返した。
『事故現場をシミュレーションで再現できるそうだ。おまえ、いつの間に手を回してたんだ?』
「いや、まだ連絡は‥協力を要請しようとは思っていましたが、一体誰が‥」
『本当か?全くどいつもこいつも勝手な奴ばかりだな』
佐高は不満げに言った。
「どいつもこいつもとは?」
『延期になってたモーターショーな、急遽1週間後に開催される事になったそうだ。経産省のごり押しでな』
「延期?中止じゃなかったんですか‥1週間後なんて、まだ事故原因も分かっていないのに」
『経産省は既に操縦ミスを既定路線として動いている。モーターショーを決行する事で事故の悪印象を払拭してしまいたいんだろう』
「もしモーターショーでまた事故が起こったら‥」
『今度こそ死人が出るかもしれんなあ‥いや冗談、冗談』
「室長‥嫌な言い方しますね」
* * *
DDR(ディープデータロード)社長室
章生が部屋に入ると、VRゴーグルを着けた少年がゲームに興じていた。
「社長、国土交通省の村主調査官をお連れしました」
秘書の言葉に少年(氷室純正)はゲームの手を休めることなく応じた、
「やあ、いらっしゃい。その辺に座っててください」
氷室の意外な若さに章生が戸惑っていると、氷室は立ち上がってVRゴーグルを外した。
「バトルボッツは素晴らしいね。これだけでもディープスペースを創った甲斐があるよ。ゲームは好きですか?」
「いえ、私はゲームは苦手で‥」
「それは残念、でもやってみたら案外ハマるかも知れないよ」
「では今度是非。それで早速なんですが、事故現場の再現シミュレーションにご協力いただけるというお話でしたが」
「イエス。で、具体的に何ををシミュレートすればいい?」
「可能かどうか分らないのですが、ディープスペースで再現した人物に質問する事は可能でしょうか?」
この章生の突拍子無くも思える質問に、氷室は興味深そうに答えた。
「なるほど、つまり人格の再現だね。それは可能だよ、僕ならね」
「本当ですか!」
「人間はそれぞれ個性的に見えて、90パーセント以上同じ反応をするんだ。後は残りをSNSの情報なんかで補完すれば、99パーセントその人の人格を再現できるはずさ」
「それは、全体のシミュレーションも含めてどのくらい時間があれば出来ますか?」
「そうだなぁ‥2週間もあれば」
「2週間ですか‥もう少し早くなりませんか。実は6日後にモーターショーが再開催される事になりまして、それまでに事故原因を究明したいんです」
焦りが見える章生に対して、氷室は明るく返した、
「なあんだ、丁度良かったじゃない」
「丁度いい?」
「モーターショーの現場をリアルタイムでシミュレーションに取り込めば、パラメータの設定にかかる時間を大幅に短縮できるよ」
「それでまた事故が起こったらどうするんですか」
「大丈夫さ。ディープスペース内のシステムタイムを少し早く進めれば、現実世界より先にシミュレーション上で事故が起きるから、現実世界の事故を回避することができる」
「そんなに上手く行くんでしょうか‥」
「上手く行くさ。こう見えても僕は天才なんだよ」
インターミッション中の冬馬にRevHから通信が入る。
『やあ、チャンプ!最近よく会うね』
「またあんたか‥俺はチャットしに来てる訳じゃないんだけどな」
『まあいいじゃないですか。言ったでしょ、僕はあなたのファンだって』
「ファンって‥」
『そうだ、一つ話のネタを提供するよ』
「だからチャットしに来てる訳じゃないって‥」
RevHから動画ファイルが送られてくる。
そこには戦場で武装した兵士と銃撃戦をするロボットが映っていた。
「バトルボッツのキャプチャー動画か?見た事無いロボットだな‥」
『確かにその動画はバトルボッツの隠れキャラとしてネットで拡散されたものだけど、こんな地形はバトルボッツの何処にも出てこないんだ』
「それで?」
『世界中の地形を照会したら、撮影場所は中東のペドロギスタンだと分かった。
ペドロギスタンは、4年前に旧政権が崩壊し、市民議会と軍部の抗争が激化した。劣勢だった市民議会をロシアが支援し新政権が樹立された。しかしペドロギスタンは核兵器を開発していると言われていたから、軍部の残党がそれを使ったら世界的危機だ、それを回避できたのは秘密裏に核兵器施設に潜入し、そこを制圧した有人ロボット兵器の活躍があったとか‥ね、面白いでしょ』
「別に、興味ないな」
『じゃあ何故これを秘密にしなけりゃならなかったのか?
ロシアにはハヤセの自動車工場があるでしょ、ハヤセは密かにロシア工場内でロボット兵器の開発をしていて、それを黙認していた日本政府とロシア政府の間でペドロギスタンへロボットを派遣する裏取引があったとしたら、それは秘密にするしかないよね』
「ハヤセがPDを兵器に使ったって言うのか」
『今もPDOSには戦闘用の機能があって、それが事故のトリガーになったとか』
「なら俺は兵器開発に加担してたって事か、笑えない話だな」
『まあ、あくまで噂だよウワサ。そういえば、国交省の調査は進んでる?』
「調査官はディープスペースの中で事故を再現出来ないかって言ってたな‥」
『その話、詳しく聞かせて!』
突然、通信に割り込んできたのはテスタロッサ(蓼丸論里)だった。
『やあ!孤高の戦士テスタロッサ。音声通信なんて激レアだな』
RevHが興奮の声を上げた。
『ねえ、モーターショーの事故を再現するって本当なの?』
「いや、氷室純正レベルの天才プログラマーが協力しないと駄目らしい」
『氷室純正ってDDRの社長でしょ、たった一人でディープスペースを造った伝説の人物。実は実在しないって噂もあるけど』
『ふーん、それは中々高いハードルだね。でも、面白い事考えるねその調査官は‥』
* * *
国土交通省 事故調査室
「DDRが事故調査に協力したいと?」
章生は佐高の言葉を繰り返した。
『事故現場をシミュレーションで再現できるそうだ。おまえ、いつの間に手を回してたんだ?』
「いや、まだ連絡は‥協力を要請しようとは思っていましたが、一体誰が‥」
『本当か?全くどいつもこいつも勝手な奴ばかりだな』
佐高は不満げに言った。
「どいつもこいつもとは?」
『延期になってたモーターショーな、急遽1週間後に開催される事になったそうだ。経産省のごり押しでな』
「延期?中止じゃなかったんですか‥1週間後なんて、まだ事故原因も分かっていないのに」
『経産省は既に操縦ミスを既定路線として動いている。モーターショーを決行する事で事故の悪印象を払拭してしまいたいんだろう』
「もしモーターショーでまた事故が起こったら‥」
『今度こそ死人が出るかもしれんなあ‥いや冗談、冗談』
「室長‥嫌な言い方しますね」
* * *
DDR(ディープデータロード)社長室
章生が部屋に入ると、VRゴーグルを着けた少年がゲームに興じていた。
「社長、国土交通省の村主調査官をお連れしました」
秘書の言葉に少年(氷室純正)はゲームの手を休めることなく応じた、
「やあ、いらっしゃい。その辺に座っててください」
氷室の意外な若さに章生が戸惑っていると、氷室は立ち上がってVRゴーグルを外した。
「バトルボッツは素晴らしいね。これだけでもディープスペースを創った甲斐があるよ。ゲームは好きですか?」
「いえ、私はゲームは苦手で‥」
「それは残念、でもやってみたら案外ハマるかも知れないよ」
「では今度是非。それで早速なんですが、事故現場の再現シミュレーションにご協力いただけるというお話でしたが」
「イエス。で、具体的に何ををシミュレートすればいい?」
「可能かどうか分らないのですが、ディープスペースで再現した人物に質問する事は可能でしょうか?」
この章生の突拍子無くも思える質問に、氷室は興味深そうに答えた。
「なるほど、つまり人格の再現だね。それは可能だよ、僕ならね」
「本当ですか!」
「人間はそれぞれ個性的に見えて、90パーセント以上同じ反応をするんだ。後は残りをSNSの情報なんかで補完すれば、99パーセントその人の人格を再現できるはずさ」
「それは、全体のシミュレーションも含めてどのくらい時間があれば出来ますか?」
「そうだなぁ‥2週間もあれば」
「2週間ですか‥もう少し早くなりませんか。実は6日後にモーターショーが再開催される事になりまして、それまでに事故原因を究明したいんです」
焦りが見える章生に対して、氷室は明るく返した、
「なあんだ、丁度良かったじゃない」
「丁度いい?」
「モーターショーの現場をリアルタイムでシミュレーションに取り込めば、パラメータの設定にかかる時間を大幅に短縮できるよ」
「それでまた事故が起こったらどうするんですか」
「大丈夫さ。ディープスペース内のシステムタイムを少し早く進めれば、現実世界より先にシミュレーション上で事故が起きるから、現実世界の事故を回避することができる」
「そんなに上手く行くんでしょうか‥」
「上手く行くさ。こう見えても僕は天才なんだよ」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる