スピードスケープ2025 -ロボット暴走!調査編-

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第14話

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城杜しろもり港ポートタウン工事現場 ハヤセモータース事務所
「事故をコンピューターシミュレーションで再現する‥」
佐伯さえき章生あきおの言葉を繰り返した。
「実際に当時の事故現場を再現するのは難しいでしょうが、開発テストに使っているシミュレータのデータを使えばコンピュータ上で事故現場を再現する事は可能なんじゃないでしょうか?」
「できない事はないでしょうけど‥当時の状況を忠実に再現しようと思ったら、ここのシミュレータでは力不足なのは否めませんね。その道のプロに協力を依頼する必要はあると思います」
「城杜大の川田なら何とかできるんじゃないか?」
冬馬とうまが話に加わった。
「確かに川田教授なら‥シミュレータをプログラミングしたのは教授のチームですし、でも協力してくれるかしら‥」
佐伯は言いよどんだ。
「教授にはもう一度会わなければと思っていたので、その時に相談してみます」
「いや、俺たちも一緒に行った方がいいだろうな」
「どうしたの冬馬、珍しく熱心じゃない」
「シミュレーションでも事故が起きれば、直哉は事故に無関係だったって証明できるんだろ?」
「あ、そうゆう事ね‥だったら、調査官、ぜひ私たちも連れて行ってください」

    * * *

城杜大学 ロボット研究室
「おや?今日は随分と珍しい組み合わせで来たな」
川田教授は、章生、佐伯、冬馬の三人を見て言った。
「なんせ暇なんでね。事故原因が分かって105が使えるようにならない限りは」
冬馬が答える。
「それを私に言われてもどうにもならないと思うが」
「あの、今日は川田教授にお願いがあって参りました」
章生が話を切り出した―

―「‥という話なのですが」
「シミュレータで事故を再現‥なるほどね」
話を聞き終えた川田教授はため息混じりにつぶやいた。
「調査官は『バトルボッツ』をやられた事は?」
「PDシミュレータを転用したゲームだと聞いていますが、まだやった事は‥」
「確かにPDシミュレータと同じバーチャル空間『ディープスペース』で稼動しているゲームだが、登場するロボットは現実のPDより高性能だ、何故なぜだと思う」
「それはゲーム用にアレンジしてあるからだろう?」
冬馬が答えると、川田は違うというふうに首を振った。
「そう単純な話でもない。バトルボッツだって使っている技術は現実に存在するものだ、それがこのゲームの売りでもあるからね。
では何が違うかと言えば、ゲームは設計性能をロスゼロで発揮出来るという点だ」
「ロス0?」
章生が首をかしげる。
「ゲームでは設計性能のあたいをそのまま使っている事を言っているんでしょう?現実世界では様々な要因で実効性能は理想値より大幅にロスしてしまいますからね」
佐伯が説明すると、川田は大きくうなずいた。
「PDシミュレータでは製造工程で混じる不純物、工作機械の加工精度から使用環境の粉塵ふんじんまでサンプルを採取しパラメータとして取り込んでいるのだ、それがゲームとの決定的な違いだよ。事故をシミュレートするとしたら、それらのパラメータを全て設定し直さなければならん」
「でも一部のパラメータを変更すれば、残りのパラメータは使い回しがきくはずでしょう?」
佐伯の疑問に川田はすぐさま反論した。
「佐伯君、ロボットエンジニアリングの旗手と呼ばれた君もシミュレーションは素人だな。事故を再現しようとするなら事故現場の環境パラメータに全面変更しなければだめだ、しかもテスト環境とは比べ物にならないほどオブジェクト数は多い」
「つまり、教授には無理って事だ」
冬馬の挑発に川田は憮然ぶぜんとして答えた、
「無理ではない!基本パラメータさえそろえば‥そうだな、ディープスペースをつくったプログラマー氷室純正じゅんせいが基本パラメータを組むというなら、その他のパラメータセットアップは私がしてやってもいい。氷室純正が協力するならば、だが‥」

    * * *

研究室を出ると佐伯が口を開いた、
「やっぱりねえ‥あの人はお金にならない面倒事めんどうごとは絶対にやらないから」
「くそっ、挑発すればやるって言いだすかと思ったんだけどな」
冬馬は悔しそうに呟《つぶや》いた。
「私から氷室さんに協力要請してみますよ」
と言った章生に佐伯が忠告する、
「川田教授の言葉はに受けない方がいいですよ。あの人は出来できないって言うのが大嫌いなプライド人間だから、氷室純正が協力する訳ないって分かってて言ってるんですよ」
「氷室純正と言ったらDDR社の社長ですよね、そんなに忙しい人なんですか?」
章生の問いに佐伯が答える、
「というか、あまり表に出ない人だそうですよ。大事な契約にも影武者を使うってうわさがあるくらいで」
「そうですか‥何とか一度、対面する機会が作れるといいんですが‥」
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