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第22話
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城杜駅構内
「短い間でしたがお世話になりました」
並んで歩きながら章生は丹下に別れの挨拶をした。
「いやあ、大したお役には立てませんでしたが‥PD-105の発表会は中止されたそうですな?」
「はい、何とか寸前で105が世に出るのを防げました。でもそれは暴走事故が再発したという事実によるもので、本来なら暴走を防いだ上で原因を究明しなければならなかったのに、不甲斐ないですね」
「それは仕方ないのでは、現状では暴走の原因と思われるアルファの存在を証明する方法すら無い訳ですからな」
「黒崎さんの罪はどうなるんですか?」
「桐生森雄の傷害事件に関しては本人の証言だけですし、罪に問うのは難しいでしょうな。後はPD-105を勝手に社外のサーバーに繋いだ件が会社に対する偽計業務妨害となるかどうか」
「ハヤセモータースが裏で黒崎さんにPD-105を無人兵器にする為のシステム開発を命じていたとしても?」
「それを調べるのが我々警察の今後の仕事でしょうな。会社が無用な圧力を掛けなければ黒崎迅がこんな無茶をする事も無かったかもしれない、それはそれで許し難い事です」
「丹下さんは、まるで正義の味方ですね」
「いやあ私は単なる一介の警官ですよ、正義の味方と言うのは‥そうですなあ、危険を顧みずに渦中に飛び込む事の出来る甲斐冬馬さんの様な人を言うんではないですかな?」
「甲斐さんですか‥なるほど、確かにそうですね」
* * *
城杜市郊外の霊園
冬馬と花束を抱えた佐伯がやってくる。
「冬馬、私は面識無いんだけどついて来てよかったのかしら?」
「そりゃあ、墓参りだって賑やかに越した事は無いだろ」
「風間一男さんてどんな人だったの」
「とにかく責任感が強い人だったよ。そして優しい人だった、俺がいたレーシングチームが資金難で解散した時、既にチームを離れていた先輩ドライバーの一男さんが、俺をPDのテストドライバーに誘ってくれたんだ。また一緒に働けるって楽しみにしてたのにな‥」
「急に亡くなったって‥」
「何か嫌な予感はしたんだ。久しぶりに会った一男さんは、以前と違って酷くやつれた感じだったからな」
「精神的ストレスでもあったのかしら」
「かもな、でも理由は教えてくれなかった‥あの時言っていたのは‥」
―3年前、城杜港ポートタウン建設現場を見下ろす丘の上に立つ冬馬と一男
「冬馬、俺はPDのドライバーという仕事に誇りを持ってる。それはPDの技術が平和に貢献すると信じているからだ。でも世の中にはPDを平和利用しようと考えている人間ばかりじゃないのも事実で、 今、PD開発は危険な方向に向かい始めている」
「一男さん、何言ってんですか」
「PDプロジェクトは仕切り直さなきゃならない、それが開発リーダーの桐生博士と話し合った結論だ。
その為に必要なのは最高の操縦スキルを持つお前の存在だ。これから俺はお前をサポートする側に廻ると決めたよ‥」―
「危険な方向‥それがPDの兵器転用だったのね、そして桐生博士がいなくなった後も私達の知らない所で危険な開発は続けられていた‥」
「ああ、今回の一件でそれも止めてくれりゃいいがな」
「多分、兵器開発は続くでしょうね、全ての責任を黒崎ひとりに押し付けて‥」
一男の墓が近づくと、墓の前には先客が立っていた。
目つきが鋭く、がっしりした体格のその男は、目ざとく冬馬たちを見つけると話しかけてきた、
「風間一男氏のお知り合いの方ですか?」
「ああ‥」
「お見かけしたことがあります、PDテストパイロットの甲斐冬馬さんでは‥失礼しました、先に名乗るのが礼儀ですね。自分はこういう者です、立場上、名刺はお渡しできないのですが」
男が差し出した名刺には『防衛省陸上自衛隊戦術研究所長、荒木戸武士』と書かれていた。
「私はPD開発テストチーム主任の佐伯良樹といいます」
「甲斐です。一男さんが陸自にいたなんて聞いた事ないけど‥」
「風間氏と知り合ったのは自分が自衛隊に入る前、世間に言う傭兵をしていた時代の事です」
「傭兵なんて、それこそ一男さんのイメージに無いけどな‥」
「国家機密にも関係する事なのでこれ以上は教えられないが‥これだけは言えます、風間一男は世界を救った英雄だった、世間の誰にも知られる事は無かったとしても」
「短い間でしたがお世話になりました」
並んで歩きながら章生は丹下に別れの挨拶をした。
「いやあ、大したお役には立てませんでしたが‥PD-105の発表会は中止されたそうですな?」
「はい、何とか寸前で105が世に出るのを防げました。でもそれは暴走事故が再発したという事実によるもので、本来なら暴走を防いだ上で原因を究明しなければならなかったのに、不甲斐ないですね」
「それは仕方ないのでは、現状では暴走の原因と思われるアルファの存在を証明する方法すら無い訳ですからな」
「黒崎さんの罪はどうなるんですか?」
「桐生森雄の傷害事件に関しては本人の証言だけですし、罪に問うのは難しいでしょうな。後はPD-105を勝手に社外のサーバーに繋いだ件が会社に対する偽計業務妨害となるかどうか」
「ハヤセモータースが裏で黒崎さんにPD-105を無人兵器にする為のシステム開発を命じていたとしても?」
「それを調べるのが我々警察の今後の仕事でしょうな。会社が無用な圧力を掛けなければ黒崎迅がこんな無茶をする事も無かったかもしれない、それはそれで許し難い事です」
「丹下さんは、まるで正義の味方ですね」
「いやあ私は単なる一介の警官ですよ、正義の味方と言うのは‥そうですなあ、危険を顧みずに渦中に飛び込む事の出来る甲斐冬馬さんの様な人を言うんではないですかな?」
「甲斐さんですか‥なるほど、確かにそうですね」
* * *
城杜市郊外の霊園
冬馬と花束を抱えた佐伯がやってくる。
「冬馬、私は面識無いんだけどついて来てよかったのかしら?」
「そりゃあ、墓参りだって賑やかに越した事は無いだろ」
「風間一男さんてどんな人だったの」
「とにかく責任感が強い人だったよ。そして優しい人だった、俺がいたレーシングチームが資金難で解散した時、既にチームを離れていた先輩ドライバーの一男さんが、俺をPDのテストドライバーに誘ってくれたんだ。また一緒に働けるって楽しみにしてたのにな‥」
「急に亡くなったって‥」
「何か嫌な予感はしたんだ。久しぶりに会った一男さんは、以前と違って酷くやつれた感じだったからな」
「精神的ストレスでもあったのかしら」
「かもな、でも理由は教えてくれなかった‥あの時言っていたのは‥」
―3年前、城杜港ポートタウン建設現場を見下ろす丘の上に立つ冬馬と一男
「冬馬、俺はPDのドライバーという仕事に誇りを持ってる。それはPDの技術が平和に貢献すると信じているからだ。でも世の中にはPDを平和利用しようと考えている人間ばかりじゃないのも事実で、 今、PD開発は危険な方向に向かい始めている」
「一男さん、何言ってんですか」
「PDプロジェクトは仕切り直さなきゃならない、それが開発リーダーの桐生博士と話し合った結論だ。
その為に必要なのは最高の操縦スキルを持つお前の存在だ。これから俺はお前をサポートする側に廻ると決めたよ‥」―
「危険な方向‥それがPDの兵器転用だったのね、そして桐生博士がいなくなった後も私達の知らない所で危険な開発は続けられていた‥」
「ああ、今回の一件でそれも止めてくれりゃいいがな」
「多分、兵器開発は続くでしょうね、全ての責任を黒崎ひとりに押し付けて‥」
一男の墓が近づくと、墓の前には先客が立っていた。
目つきが鋭く、がっしりした体格のその男は、目ざとく冬馬たちを見つけると話しかけてきた、
「風間一男氏のお知り合いの方ですか?」
「ああ‥」
「お見かけしたことがあります、PDテストパイロットの甲斐冬馬さんでは‥失礼しました、先に名乗るのが礼儀ですね。自分はこういう者です、立場上、名刺はお渡しできないのですが」
男が差し出した名刺には『防衛省陸上自衛隊戦術研究所長、荒木戸武士』と書かれていた。
「私はPD開発テストチーム主任の佐伯良樹といいます」
「甲斐です。一男さんが陸自にいたなんて聞いた事ないけど‥」
「風間氏と知り合ったのは自分が自衛隊に入る前、世間に言う傭兵をしていた時代の事です」
「傭兵なんて、それこそ一男さんのイメージに無いけどな‥」
「国家機密にも関係する事なのでこれ以上は教えられないが‥これだけは言えます、風間一男は世界を救った英雄だった、世間の誰にも知られる事は無かったとしても」
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