世界最強が集う果ての地に召喚された彼らはそこで異世界最強を目指す

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プロローグ 果ての地

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 嶺二の目の前では、土で形成されたゴーレムが三体ほど立ち並んでいた。
 嶺二は初めて見るものに眉をひそめ、微動だにしないゴーレムをあらゆる角度から観察している。

「本当にこんなのが労働力になるのか?」

 見た目は角張っていて、器用な動きが出来るとも思えない。背は嶺二と大して変わらないが、その体躯はとても重量感がある。

「私のゴーレムに文句がありまして? 嶺二」

 嶺二の背後で腕を組んで立っているレラ。嶺二はきょとんとした顔で振り向く。

「いや。俺はゴーレムってのをよく知らねぇんだが、強いのか?」
「この子達は戦闘型じゃないから、戦いには不向きね。でも燃費がいいから、農作業や資材の運搬にはもってこいなのよ?」
「おお……やっぱお前すげえな!」

 嶺二がレラの話をきちんと理解できているのかは分からないが、言われた彼女は頬を赤らめてそっぽを向いた。

「ふ、ふん! 私ほどの錬金術師にもなれば、このくらい当然ですわ! もっとすごいゴーレムだって作れるのでしてよ?」
「おお! じゃあ俺と対等に戦えるゴーレムを作ってくれよ!」
「……え」

 目を輝かせる嶺二に対して、レラは苦笑いになる。彼はそんなことは気にせず続けた。

「たまに化け物がやってくるくらいじゃ身体がなまっちまうんだ。だから俺の相手をしてくれるゴーレムが欲しい。……駄目か?」

 レラは眉を曲げて笑った。

「オーホホホ! あなたと対等に戦えるゴーレムを、ですわね!? わ、私にかかればそのくらい楽勝ですわ!」
「おお! 頼りになるぜレラは!」
「し、しかし今は、それを作るには魔石が足りませんことよ? それこそ、嶺二が最初に持ってきた巨大な魔石くらいないと厳しいわね……おほほほ」
「そ、そうなのか……」

 あれほどの魔石は、ターシャも見たことがないと言っていたくらいだし、そう簡単に見つかるものではないだろう。かと言って、小さな魔石をコツコツ集めたところでエネルギーとして消費されていくのだからキリがない。
 嶺二は三体のゴーレムを指さした。

「じゃあもうこいつらでいいから戦わせてくれ!」

 レラはその腕にしがみついて必死で反対する。

「駄目ですわ! この子達は戦えるゴーレムではありませんの!」
「あああ! 俺は戦いてぇぞぉぉ!」
「嶺二! 落ち着いてくださいまし!」

 ゴリラのように暴れる嶺二に、振り払われたレラは尻もちをついた。

「んもう……嶺二ったらわがままなんですからぁ……!」

 第一、先ほどマリアに魔石の採掘を頼まれた際は、疲労困憊だのと言っていた嶺二だ。レビギルと戦った疲労はどこへ行ったのか。
 レラはため息をついて立ち上がると、服をはたく。

「私は本部の増築作業が残っておりますので、これにて失礼しますわ」
「れ、レラ! 俺のゴーレムは……!」

 レラは嶺二を無視して本部の方へ歩いていく。その直後に彼の肩に手が乗る。

「マリア?」
「魔石を採ってこい」
「またかよ! もう雑用はこりごりだ!」
「雑用ではない。これは重要な任務だぞ」

 確かに、魔石がなければレラが作った建物、農作エリアはもちろんのこと、ソールが形成した魔力回路は動作できない。一見粗末な扱いを受けている嶺二は、重要な仕事を任されているのだ。

「あーはいはい。やればいいんでしょ? 分かりましたっての」

 嶺二は気だるげに頭をかいて歩き出す。
 農作エリアを抜けると、地面に膝を着いて真剣な表情をしているソールに会う。

「ソール、魔石の場所を教えてくれ」
「……南、三十キロメートル」
「オーケー。んじゃ――」
「……何も、無い」
「……あ?」

 ソールはその方向をじっと見据えた。嶺二もつられて見るが、当然何も見えない。

「……無さすぎる」

 呟く彼に、嶺二は頭をかいて唸るとその肩に手を着いた。

「おいおいソールくんよー。何も無いならわざわざ言わなくてもいいんだって」
「……そこから、何も感じない。空も、大地も」

 嶺二は神妙な面持ちのソールを不思議そうに見つめるが、すぐに膝を曲げた。

「よく分かんねぇけど、行ってみるか」
「……待て」

 ソールの言葉を聞くことなく、嶺二は飛び上がって空を突き進む。

「……」

 等間隔に抉れる地面の直線上で飛んでいるのは嶺二。もう一回地面に蹴ったところで、誰もいないはずのこの先に影を見た。

「あれは……?」

 地面に着地すると、そこからは歩いて行くことに。
 徐々に近づいていくと、それは人影といえるほどに見えてくる。

「まさか、俺たち以外にもこの世界に来ているやつがいるのか?」

 走ると、同時に影も走りだす。

「ぐっ……」

 はっきりとその姿を捉えられる距離まで近づくと、嶺二は足を止めた。彼はその姿を見て、額に汗を流す。

「お前……」

 それは、嶺二を睨みつけていた。

「お前は……俺じゃねぇか」

 嶺二と瓜二つの人間が、そこに立っている。しかし嶺二は慌てることなく、拳を鳴らした。

「なるほど。さては神様の仕業だな? 面白ぇ。実は一度、俺と戦って見たかったんだよなぁ!」

 嶺二は自分の姿をしたそれに向かって飛びかかると、相手も同じように接近してきた。スピードは互角、拳を引くタイミングでさえも一致していた。

「オラァ!」

 拳同士が衝突し、衝撃波が地面の砂を巻き上げる。

「まだまだぁ!」

 連打する拳は漏れなく相手の拳と衝突。拳同士がぶつかり合っているというのに、響く音はまるで銃声。乾いた音が周囲を響いていた。

「これなら……どうだ!」

 前蹴りでさえも、相手に足裏で受け止められる。
 嶺二が一旦飛び退くと、相手も同じように距離をとった。

「へへっ……さすがは俺だぜ。行動はお見通しってワケか。だが、さっきから真似されているようで気に食わねぇな……! 俺のとっておきを見せてやるぜ」

 嶺二は腰を落としたと同時に、地面を抉って前方へ飛ぶ。風を切って進みながら体躯を捻り、遠心力を味方につけた踵は標的へ突進した。

「絶対こめかみ砕くカカト落としィィ!」

 それさえも。

「な……」

 踵がぶつかり合った。
 地面に着地した嶺二は、怪訝な顔で歩み寄る。自分と瓜二つの人間の胸ぐらを掴もうとした時。

「痛っ……壁?」

 嶺二は、まるで鏡を前にしているかのように、自分と手を合わせている。

「どうなってんだ……?」

 不意に吹いた横風に乗った砂粒が、嶺二の目の前を横切った。

「嘘だろ……まさかっ」

 前方に広がる地面には、穴が空いていた。後ろを振り向けば、穴は空いていた。それは嶺二が地面を蹴った時に抉ったもの。彼の先にそれが存在するのはおかしい。
 先ほどから自分と同じような動作を続ける彼に、嶺二は呟く。

「鏡……なのか?」

 手を這わせながら横に移動すると、それはこの場所だけではなく延々と続いているものだと分かった。

「行き止まりってことかよ……?」

 本部から約三十キローメル。もしこの鏡のような壁が本当に行き止まりであるなら、本部からたったの三十キロメートルにこの世界の果てが存在するということになる。

「ソールが言ってた『何も無い』ってのはこういうことか」

 嶺二の攻撃を幾度となく食らってもヒビひとつ入らない物体など、おおよそ普通ではない。やはりここがこの世界の果てなのだろうか。

「ん?」

 前方の空に、黒い影が飛んでいる。こちらへ向かって来ているようだ。嶺二が振り向くと、やはり同じものが見えた。

「ソール……?」

 空を飛んでいるのはソール。黒いローブをはためかせ、嶺二の前に着地すると。

「……これは」

 ソールはそこにいる二人の嶺二ともう一人の自分を見ても動揺する素振りは見せず、手を合わせた。

「ソール、お前空飛べるのかよ。すげえな」

 嶺二の言葉に返答することなく、ソールはじっと自分の姿を見つめている。

「……」

 不思議に思った嶺二はソールの背後から頭を出して彼の肩を小突いた。

「おーいソール? どうしたんだよ。そいつはお前の兄弟じゃねえぞ? 鏡みたいになってんだ」
「……この世界は、全てを写している」
「は? 何言ってんだお前?」

 ソールは嶺二に向いて、真剣な表情で話す。

「……我々が見てきた物、それ以外の全てさえも、この地に存在している」
「ええっと……ソール?」

 重要なことを言っているのは分かる。しかしその意図は掴めない。さらにソールは続けた。

「……嶺二、なぜお前は俺の言葉を理解できる。なぜレラが出した食べ物を、まるで見たことがあるかのように疑いもせず口に入れていた」
「そ、そんなの。お前たちが話しているのは日本語だし、飯だって美味そうだったから……って」

 ソールは言いたかった。いま嶺二が言ったこと、それさえもこの世界は写しているのだと。

「おいおい、それがなんだってんだ? たまたま同じ言語使って、同じような飯を食ってただけだろ? ……それに、俺は魔石なんて知らなかったし、お前らみたいな超能力使うやつだって初めてみたんだぞ」
「……俺は、ここで人間を初めて見た」
「え……あ、ああ! そうだよな」

 マリアは人間のことを知っているみたいだったが、ソールがいた世界には人間がいないのだろう。
 しかし。

「……だが、俺は人間を知っている。人間という言葉を理解している」

 嶺二は頭をかいて面倒くさそうに。

「だあもう! 結局お前は何が言いたいんだよ!」

 ソールは一歩踏み出すと、その世界を眺めて言った。

「……ここは全てを写し出し、全てを失った――強欲の世界……果ての地だ」

 嶺二は頭をかいて。

「果ての地……ねぇ」

 その腑抜けた顔からするに、ソールの言葉を真面目に聞いていないようだ。嶺二は自分が写る壁をコンコン叩きながら。

「果ての地だろうが腫れ物だろうが、俺は神様やお前たちを見てからこの世界では何でもアリなんだと思ってる。お前も難しいこと考えずに、こんなのもあるんだなって程度に思っとけよ」
「……そうだな。それが、この世界での生き方に相応しい」

 ソールはそう言った後、すぐに空を飛んで帰っていった。彼の背中を眺める嶺二はため息をつく。

「無口な奴が何を考えているのかは、俺には分かんねぇな」

 嶺二も、地面を蹴って帰路に着いた。
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