世界最強が集う果ての地に召喚された彼らはそこで異世界最強を目指す

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第三章 ハテノチ統一へ

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 甲都の本部に到着した嶺二とシェミルは早速、マリアの部屋へ向かった。

「入るぞ~」

 扉を開けると、やはりマリアがいる。

「おっと……」
「なっ……」

 服を片手にぶら下げる彼女は全裸であった。髪が湿っていることから風呂上がりだと推測できる。
 マリアは一瞬、狼狽の声を漏らしたものの堂々と体を嶺二に向けて。

「早かったな嶺二」
「お、おう」

 ドアノブを握ったまま固まる嶺二だが、一時退出という選択肢はないのか。シェミルはその背後でボーッと立っている。
 服を持っているマリアの手は腰に当てられ、恥部を隠そうともしければ恥じらう様子もない。さすがハテノチを統べる者だ、肝が座っている。

「どうした。そんな所で突っ立っていないで、こちらへ来い」
「おう」

 嶺二も大概、肝が座っている。躊躇うことなく彼女の元へ歩き出すのだから。

「歯を食いしばれ」

 嶺二とシェミルがマリアの前で立ち止まると案の定、彼女の拳が嶺二の額を見据えて構えられた。しかし嶺二は臆する様子もなく……というよりは気づいていないのか、マリアの体をじっと見つめて言う。

「綺麗だな」
「何っ……」
 
 今にも飛び出さんとしていた拳は静止して、今度はマリアが固まる。
 嶺二の視線は彼女が上げた右腕から肩、脇までをなぞってようやく顔に向けられた。

「あの時、俺が引きちぎってしまった右腕は綺麗に治ってるみてぇだな。良かったぜ…………って、マリア?」

 マリアは静止していた右手を下ろし、今度は嶺二の首を掴む。

「左腕もだ……!」

 ぎゅっと握り締められる首。

「シェミル。助けてくれ」

 嶺二の首は尋常でないほどに細く絞られているが、よくもそんなに落ち着いた声音で言えるものだ。

「……マリア、怖いから無理」
「へへっ。やっぱりお前は親父に似て……ハぅっ!?」

 マリアのこめかみに血管が浮いたと同時に、嶺二の声帯から変な音が出る。
 さすがの嶺二も首を締められては平気ではいられないようで、マリアの手を掴んで足をばたつかせた。

「ギブ……ギブ……!」

 隙間から出したような声でギブアップを申し出る嶺二だが、マリアは笑みを感じない笑顔で。

「どこが綺麗なのか、もう一度言ってみろ」
「マリア様の……その婀娜あだやかさに感化した所存……」

 マリアはその言葉を聞くと、鼻を鳴らして手を離す。解放された嶺二は喉から気の抜けた空気を出して天井を仰ぎみていた。その間に着替えを済ませたマリアは、机に置いてある大きな本を手に取って開くと言う。

「嶺二、お前を呼んだのは他でもない」

 さっきまでのことが無かったかのように話し出すマリアに、嶺二はツッコミを入れようと体勢を整えたが先に彼女が発する。

「新たな計画……ハテノチの統一を実行する」
「あ? 統一だ?」
「そうだ。お前も聞いていたと思うが、神様によればこの世界には我々を除き九世界の軍勢が存在している」

 この戦争……異世界衝突において侵攻してきた他世界の軍勢。ハテノチ全体を見渡せばあまりにも狭いこの領土のおかげで、嶺二たちはそれらに見つかることはなく、勝手にも他の世界の者たちに拠点を構えられているという状況だ。

「それがどうしたんだよ? ……ん? 統一ってまさか」
「その通りだ。今この世界にいる敵を、我々の味方につけるのだ」

 呆れたようにため息をついた嶺二が言い返す。

「おいおい。今まではひとつの国の軍だけで攻め込んで来てくれたから何とかなったけどよ。九もあるんだろ? さすがに一筋縄ではいかねぇぞ」

 嶺二にしては控えめな発言に、マリアは眉をひそめる。

「一筋縄でいかないことくらい承知の上だ。お前がいれば大抵の戦況は覆せると思って提案したのだが……どうした、自信がないのか?」
「ば、バッキャロー! 何人いたって負けやしねぇよ! 上等だ……なら皆を集めるぞ!」

 拳を握る嶺二を見て、マリアはふっと笑う。

「その必要は無い。行くのは私と嶺二、そしてレラ……ちょうどいい、シェミルも連れて行くとしよう」

 視線を向けられたシェミルは首を傾げているが……それよりも、たったの四人で九つの世界を相手にするつもりなのだろうか。

「おいマリア。お前にはあまり似合わない言葉だが言わせてもらう…………バカだろ、お前」

 マリアは笑顔のまま。

「これでいい。この布陣ならば今回の計画は成功するはずだ」
「せめてターシャとソールも……!」
「その二人もいればさらに心強いが、必要十分を超えた人員を確保するべきではない」

 戦闘が伴えば、ターシャの治癒術は大いに活躍するだろう。ソールがいれば、魔王である圧倒的な力で軍勢を払い除けてくれるだろう。しかしマリアからするとその戦力は必要ないと。

「理由を聞かせろよ」

 マリアは自分の胸に手を置いて答える。

「話し合いさえ出来れば、私の策術を以て和解できるという確信があるからだ」
「……あっ」

 嶺二は思い出したように声を漏らす。
 何を隠そう、マリアは最強の策士としてハテノチへやってきた。今こそ彼女の本領が発揮される時なのだ。
 嶺二は頭をかいて納得したように。

「なるほどな……分かったよ。つまり俺は万が一、戦闘に発展した時の片付け役で、シェミルは敵の探知……拠点を特定する。んでレラは食事担当ってところか」
「嶺二にしては察しがいい、まさにその通りだ」

 今度はシェミルに向いて。

「……ってことだけどよシェミル。一緒に行っ――」
「行く」

 ハッキリとした素早い返答に、嶺二が「そうか」と返すとマリアは部屋の出口へ歩き出す。

「私は西の門壁もんへきで待っている。レラを連れてそこへ来い」
「あいよ。んじゃ、ドロビィたちも」
「いらん」
「……あいよ」

 残念そうに肩を落とす嶺二を背後に、マリアは部屋を出た。
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