不老不死になって一億年が経った

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~二〇〇〇〇年

プロローグ 俺を不老不死にしてくれ

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 突然過ぎる出来事でむしろ冷静なのだが、学校から帰ると俺の部屋の中心に金髪ツインテゴスロリ少女が立っていた。俺が素性を問う前に彼女は口を開く。

「私は死神メアリ。二つだけ願いを叶えてやろう」

 見た目に合ったその幼い声からは想像もつかない言葉。街中でこんなこと言われたのなら適当にあやしてスルーしているところだが、なんたってこの子は俺の部屋にいる、ただものでないことは明らかだ。

「俺を不老不死にしてくれ」

 何を言っているんだ俺は、迷いもせずに堂々と。別に不老不死を夢見ていたわけじゃない、絶対に不可能だと思ったから言っただけだ。それも極端な例を。
 無表情だった少女の目が一瞬だけ見開いた気がするのは気のせいか。

「分かった。その願い叶えてやろう」
「何?」

 そんなこと出来るはずがない、だが俺の中では否定が全てを占めている訳ではなかった。期待しているのか? この少女に。

「願いは叶えた。あと一つの願いを聞こう」

 叶えたって、何も起こらなかったぞ……魔法陣とか出てくるのかと思ったら何なんだよ期待して損したぞ。
 叶えたってことは俺は今、不老不死になっているのか? それはそうと、あと一つの願いか……

「じゃあ……」

 言いかけるも俺は口を閉じる。

「どうした、あと一つ、願いを叶えてやるぞ」

 俺が願いを言ったり言いかけたりする度に少女の表情が一瞬だけ変化する。一つ目の願いを言った時は目を見開き、今度は願いを発する前に下唇を噛み締めたのだ。俺はふむと考える素振りをした後、口を開いた。

「あと一つは、保留できるか?」
「構わんが」

 俺がもし本当に不老不死になっていたとしたら、俺は″死ねない″ということ。ならば最後の願いは自分を終わらせるために残しておくのが賢い選択だろう。
 そもそもの疑問だが、なぜこのメアリというゴスロリ金髪少女は俺の部屋にいて、そして俺の願いを叶えようとしているんだ?

「メアリって言ったか、なぜ俺の願いを叶える?」
「抽選だ。この世の人間に、一ヶ月に一人、二つ願いを叶えてやるのが私の仕事。そして今月選ばれたのがお前ということだ。世界の大富豪は大体死神が願いを叶えてやった者達だ」

 彼女自身のことは何もわからないままだが、俺が知ったところでどうにもならないだろう。メアリの言うことがすべて事実だとして、今までに願いを叶えてもらった人たちは一体何をお願いしたんだ? 

「一番多いのは金、次に名声。私が知る限り不老不死を願ったのはお前が二人目だ」

 二人目? 少ないな、俺とあと一人しかいないのか。

「不老不死を願う者は馬鹿だ。だが、期待している」
「期待? 何にだ」
「お前にだ、他に何がある」

 訳わかんねぇ。
 でも俺は今、死なないし老いないんだよな?

「っ……?」

 俺はふと自分の手を眺める……違和感。俺の右手人差し指は幼い頃、突き指をして多少反り返っているのはずだが、真っ直ぐに伸びている。左手と変わりなく。

「何やら実感したようだな。不老不死にして不病。お前の体に残っている傷は全て癒えるのだ」
「マジ、かよ……」

 こりゃもう、不死身ってか無敵?

「じゃあ俺は本当に死なないのか?」
「そうだ。理解できないのなら今すぐダンプカーにでも轢かれて来るがいい」

 ちょっと口が悪いのが気になるが、この少女が言っていることは本当のようだ。古傷が全て無くなっている。

「空腹や、眠気は?」
「感じることはない。だが、食べることや眠ることは可能だ。しかし痛みは感じる」

 痛覚はあるのか……しかし悪いことではない。痛覚がないと、気がついたら身体がメチャクチャになってたってことにもなりかねない。
 これは不老不死だと他の者に悟られないためにも役立つだろう。

「とりあえず、俺は老いないし、死なないってことは分かった。お前はこれからどうするんだ?」

 不老不死に飽きて死にたくなった時、メアリがいないと願いが叶えられない、何か連絡網があればいいのだが。

「無論、ここにいる」
「ここにいるって、俺の部屋に住む気か?」
「遺憾か?」
「いや、別に」

 いくら死神とはいえ見た目は普通の女の子だ。死神だから何億年生きてる(?)のか知らんが外見だけで例えるなら十五歳かそこらだろう。顔立ちもいいし、スタイルも多分いい。雰囲気やオーラはロリなのに出るとこ出てるあたりが童貞の俺には毒なのだ。

「不満気な顔をしているな。そんなに私が嫌か」

 無表情で問うメアリ。別に嫌う理由もないのでここは快く返しておこう。

「嫌じゃないさ。ただ急だったからな。分かった、ここにいてもいいぞ。死神だからどうせ生活するのに金かからないんだろ?」
「無論だ」

 こうして、俺は死神少女と暮らすことになった。あいにく俺はラノベ主人公のようなスペックは持ち合わせちゃいない、なのでお決まりの一人暮らしではなく、この一戸建ての家には俺の他に母と父、そして中学二年生の妹がいる。メアリが見つかればややこしい事この上ない。

「メアリ、一つ頼みがあるんだが……って、頼んでしまうとダメなのか……」

 あと一つの願いを叶えることになってしまう。

「心配するな、残り一つの願いについては、お前が特別に『願い』と認めた事柄のみ扱う。日常生活においての頼み事はなんなりと申し付けろ」
「助かる。お前に頼みたい事は、とりあえず家族には見つからないでくれってことだ」

 こんな格好をした女の子が俺の部屋にいたらどう説明しても安牌ではない。言い訳できるとしたら恋人、しかし見た目的に年齢差が否めない。ロリコンとも思われたくないし。

「分かった。見つからなければいいのだな」


でもこいつ、脱げば俺と同い年くらいの女の子とは張り合えるだろう。
 万が一見つかった時のために、妹の服を何着か拝借して着せてみよう。

 ◇

「メアリ、服だ」

 そう言いながら俺はベッドに腰掛けるメアリに、拝借した妹の服を見せつけた。

「それをどうするのだ」
「決まってる、お前に着てもらうんだ」
「なぜ私が」
「その格好だと家族に見つかった時マズい事になる」

 とりあえず、メアリにはもっと一般的な服装に着替えてほしいということ。そうすれば家族に見つかった時、ぎりぎり俺の恋人ということで誤魔化せそうなのだ。

「仕方ない、そういうことなら着替えよう」
「助かるぞ、じゃあ早速着替えてくれ、俺も制服着替えてくるから」

 俺は部屋を出て、階段を降り、リビングへ向かった。両親はまだ帰っていないし、妹も部活でまだ帰っていない。状況を整えるなら今だ。
 風呂を済ませ、駆け足で階段を上り、部屋のドアを開ける。

「メアリ、着替えたか」

 部屋のドアを開けると、メアリが部屋の中心に立って俺をじっと見つめているのがわかる。俺と彼女が初めて出会った時と同じ風景だ。ひとつ違う所を挙げるのなら、ゴスロリ衣装を着替えたことで服装の違和感がなくなった。異常に整った顔と日本人離れしたスタイルを除けば普通の女の子だ……服装しか普通なところがないな。俺の恋人だなんて言っても誰も信じないだろう、実際恋人ではないが。
 問題があるとすれば服のサイズが合っていないことか……もうどこも普通なところがなくなってしまった。身長は妹と同じくらいだが、スリーサイズが妹のそれよりも上回っているため多少キツめだ。

「サイズが合っていないようだが」

 メアリの純粋な不満が発される。
 仕方なく上は黒字で「本気。」と縦の楷書で書かれた白のTシャツ、もちろん俺のシャツだ。そして下はメアリが履いていた黒のミニスカートにチェンジ。結局妹の服は役目を果たさなかった。

「まあいいか、この服、妹の部屋に返してくるよ」
「ただいま~」

 妹降臨である。約束されたかのようなタイミング。さて、まずは今日をやり過ごすか。
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