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この感情の正体は?
だが、当たり前に終わりはやってくる。
『う、うん!へへへ、力作だから!喜んでくれるとうれしいな!』
彼の作ってくれたシュークリーム。
随分と自信作のようで一口食べた時の驚きと言ったら。
うん、彼はもう店を出すべきだな。
そんな他愛もない会話。
二人して笑って、また、会話が弾む。
今なら何をしても許される。
そんな気さえしていた。
その時だった。
『おい、なにをしているんだ。お前達は。』
────誰だ?
そこまで考え、コルシャの顔がルドヴィックとくっつきそうなぐらい近くにあることに気づいた。
いつの間にこんな近くに寄っていたのか。
慌てて距離を取ったがもう遅い。
『な、なんで殿下がここに?』
殿下?あぁ、そうか。
レオ・ラグナ・フォルツ第2殿下。
もし彼がそこで声を掛けてくれていなかったら、ルドヴィックは取り返しのつかないことをしてしまっていた気がする。
だが何故彼がここに───。
『随分と仲が良いみたいだなお前達。』
その台詞には若干の咎めが含まれていた。
言わずもがな先程までの二人の距離感のことを言っているのだろう。近すぎたと言ってもいい。あれは最近できた友にするものと言うには無理がありすぎる。いつものスキンシップの延長線上といえど、やり過ぎだった。
彼が怒るのも当然だ。
しかし、彼がルドヴィック達に接触してくるというのも予想外のことだった。
いや、事ここに至って、予想外というのはおかしな話だと思うが、彼の場合に当てはめればそうでもない。彼はコルシャのことを煙たがっている側の人間だからだ。いつも会いに来る婚約者に冷たく、よく思っていないともっぱらの噂だった。
当然これも調査で分かったことだが。
だが、実際はどうだ?
これではまるで、浮気現場を目撃されたカップルのようではないか。
『いや、あの、これは』
これは、なんだ。
嫉妬?
よもや殿下はルドヴィックに嫉妬したというのだろうか?
………やはり、噂は当てにならない。
『じゃあな。コルシャ。』
まるで一瞬の出来事だった。
去り際に残したその声には何の感情も乗っておらず、彼がコルシャに向ける態度は、級友、いや知人に向けるそれと同じだった。呼び止めるコルシャを無視し、振り返ることなくその場から居なくなる。
なんと言っていいのか分からない。
先程までの和やかな空気は消え失せ、お互いが何も喋らない時間がしばらく続いた。
追いかけたほうがいいとは思うが……。
そっと隣の様子を窺うと、よほどショックを感じていたのか、コルシャは呆然として、その場に固まったままだった。
……これは良くない。
もし、二人の関係が思いの外進んでいたのだとして、それに割って入ったとなれば、ルドヴィックは不埒な男となるだろう。
そうなると話がややこしくなってくる。
ルドヴィックは、誤解させたかもしれない、そう言って代わりに殿下を追いかけるつもりでいた。だが、それを聞いたコルシャの方がルドヴィックよりも早く駆け出す。
そうだ。これは婚約者同士の話だ。部外者であるルドヴィックが入るわけにはいかない。
そうして取り残されたのはルドヴィックの方だ。
「ごめん、か。」
去り際に彼が残した言葉。
一体何に対する謝罪なのだろう。
居た堪れない空気になってしまったことへの謝罪?それともルドヴィックをこの場に残していってしまうことへの謝罪?
どちらにせよコルシャは行ってしまった。
これ以上周りの視線を集めてこの場に留まり続ける理由はない。
一度冷静になるべきだと、鍛錬に戻る。
そうして、中庭に出る前になんとなく辺りを見渡した。が、当然コルシャ達が居るわけはなく、どうなったのかも分からなかった。
コルシャはあの後、彼に追いつけたのだろうか。
追いつけたとしてその後は───?
剣を振りながらも余計なことが頭に思い浮かぶ。
コルシャの後を追ったわけではないルドヴィックに、事の顛末は分からなかったが、なんとなく、彼の方からルドヴィックに会いに来てくれることはもうないのではないか、そんな気がした。
そして、数日経った今になってもそのことが頭に浮かび続けている。
「……コルシャ。」
彼にもう一度会う。
その後のことはそれから考えればいい。
『う、うん!へへへ、力作だから!喜んでくれるとうれしいな!』
彼の作ってくれたシュークリーム。
随分と自信作のようで一口食べた時の驚きと言ったら。
うん、彼はもう店を出すべきだな。
そんな他愛もない会話。
二人して笑って、また、会話が弾む。
今なら何をしても許される。
そんな気さえしていた。
その時だった。
『おい、なにをしているんだ。お前達は。』
────誰だ?
そこまで考え、コルシャの顔がルドヴィックとくっつきそうなぐらい近くにあることに気づいた。
いつの間にこんな近くに寄っていたのか。
慌てて距離を取ったがもう遅い。
『な、なんで殿下がここに?』
殿下?あぁ、そうか。
レオ・ラグナ・フォルツ第2殿下。
もし彼がそこで声を掛けてくれていなかったら、ルドヴィックは取り返しのつかないことをしてしまっていた気がする。
だが何故彼がここに───。
『随分と仲が良いみたいだなお前達。』
その台詞には若干の咎めが含まれていた。
言わずもがな先程までの二人の距離感のことを言っているのだろう。近すぎたと言ってもいい。あれは最近できた友にするものと言うには無理がありすぎる。いつものスキンシップの延長線上といえど、やり過ぎだった。
彼が怒るのも当然だ。
しかし、彼がルドヴィック達に接触してくるというのも予想外のことだった。
いや、事ここに至って、予想外というのはおかしな話だと思うが、彼の場合に当てはめればそうでもない。彼はコルシャのことを煙たがっている側の人間だからだ。いつも会いに来る婚約者に冷たく、よく思っていないともっぱらの噂だった。
当然これも調査で分かったことだが。
だが、実際はどうだ?
これではまるで、浮気現場を目撃されたカップルのようではないか。
『いや、あの、これは』
これは、なんだ。
嫉妬?
よもや殿下はルドヴィックに嫉妬したというのだろうか?
………やはり、噂は当てにならない。
『じゃあな。コルシャ。』
まるで一瞬の出来事だった。
去り際に残したその声には何の感情も乗っておらず、彼がコルシャに向ける態度は、級友、いや知人に向けるそれと同じだった。呼び止めるコルシャを無視し、振り返ることなくその場から居なくなる。
なんと言っていいのか分からない。
先程までの和やかな空気は消え失せ、お互いが何も喋らない時間がしばらく続いた。
追いかけたほうがいいとは思うが……。
そっと隣の様子を窺うと、よほどショックを感じていたのか、コルシャは呆然として、その場に固まったままだった。
……これは良くない。
もし、二人の関係が思いの外進んでいたのだとして、それに割って入ったとなれば、ルドヴィックは不埒な男となるだろう。
そうなると話がややこしくなってくる。
ルドヴィックは、誤解させたかもしれない、そう言って代わりに殿下を追いかけるつもりでいた。だが、それを聞いたコルシャの方がルドヴィックよりも早く駆け出す。
そうだ。これは婚約者同士の話だ。部外者であるルドヴィックが入るわけにはいかない。
そうして取り残されたのはルドヴィックの方だ。
「ごめん、か。」
去り際に彼が残した言葉。
一体何に対する謝罪なのだろう。
居た堪れない空気になってしまったことへの謝罪?それともルドヴィックをこの場に残していってしまうことへの謝罪?
どちらにせよコルシャは行ってしまった。
これ以上周りの視線を集めてこの場に留まり続ける理由はない。
一度冷静になるべきだと、鍛錬に戻る。
そうして、中庭に出る前になんとなく辺りを見渡した。が、当然コルシャ達が居るわけはなく、どうなったのかも分からなかった。
コルシャはあの後、彼に追いつけたのだろうか。
追いつけたとしてその後は───?
剣を振りながらも余計なことが頭に思い浮かぶ。
コルシャの後を追ったわけではないルドヴィックに、事の顛末は分からなかったが、なんとなく、彼の方からルドヴィックに会いに来てくれることはもうないのではないか、そんな気がした。
そして、数日経った今になってもそのことが頭に浮かび続けている。
「……コルシャ。」
彼にもう一度会う。
その後のことはそれから考えればいい。
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