【完結】キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】

猫都299

文字の大きさ
51 / 67

51 親友

しおりを挟む

「ふふっ」

 階段を上り切った『マキ』は、体の後ろで手を組み、上目遣いに見上げてくる。こちらへ数歩接近し、更に笑顔になった彼女は背を向け……今いるスペースの左奥へと歩いて行く。錆だらけのロッカーと、床に置かれたバケツや、立て掛けられたモップ。それらを背景に。彼女が振り返る。細くしていた目を開き、告げてくる。

「海里君、考えがぶっ飛び過ぎだよ。でも正解」

 初めはコロコロ笑うような明るく澄んでいたものが、後には愉快そうでいて落ち着いた雰囲気の……マキの声より低い、いつも聞き慣れた声音へと変貌する。

 見た目とのアンバランスさに眉をひそめる。聞き間違いじゃないよな?
 彼女の秘密を暴いたのは自分なのに、思わず耳を疑ってしまう。

「すんなり認めるんだな?」

 問いながら、注意深く……目の前にいる人物を窺う。口には微笑みを浮かべて……相手もこちらを見ている。

 ハイネックのインナーを着ているのは、喉仏を隠す為か? ささやかにある胸は、きっと中に何か仕込んでいるのだろう。黒タイツは……確かこいつ、スネ毛濃かったよな。

 それにしても。化粧をバッチリしているとはいえ、よくここまで見事に化けれたものだ。称賛に値する出来ばえの『マキ』を、繁々と眺めていると。相手の双眸が、不快そうに細まる。

「ジロジロ見んじゃねーよ! 篤といい、お前といい! 男に興味ねーよ、オエエ」

 舌を出しておどけている様を見つめる。ああ……、和馬だ。こんなに美少女なのに、和馬なのか。

「篤に一度、髪を触られたし……長くは隠し通せないだろうなって、薄々思ってた。この姿も、今日で最後だ。大体。この化粧とヅラすんのに、一時間半はかかるんだぜ?」

 片方の口の端を上げてケラケラと笑っている和馬に、オレは押し黙ったまま視線を注ぐ。

「篤は、てっきり一井さんが好きなんだと思ってた。でも実際は、あの妹が本命だったんだな。思い描いてた筋書きと違ったけど、漸く安心して眠れそうだよ」

 親友は優しげな目をして下を向き、やっと本意を零した。

 何で『マキ』に、なりすましてまで……オレと柚佳の仲を裂こうとしていたのか。何故、オレを装って花山さんへラブレターを書いたのか。

 頭の中で考え続けて、辿り着いた答えを。マキの姿をした和馬にぶつける。

「お前……柚佳と篤を、くっつけようとしただろ。オレが書いたように見せかけた手紙で、花山さんの気を篤から逸らした。……全部、花山さんと篤が付き合うのを止める為か?」

 和馬は俯いたまま視線を上げず、少し悲しげに微笑する。

「だったら何だよ? 俺は自分の思い通りにする為だったら、友達だって利用する。お前に近付いたのだって……美南ちゃんと仲の良かった一井さんの幼馴染だったから、何かに使えると考えただけだ。……ずっとお前が嫌いだった。お前は片想いだと思ってたようだけど。一井さんとお前は両想いだって、すぐに分かった。俺と違って恵まれてるお前が、本当に大嫌いだった」

 荒々しく吐き出すように言い捨てた和馬へ、冷めた目を向ける。

「それで? だから何なんだよ。オレと違って、お前は好きな子から好かれてないって? オレを利用する為に友達になった? オレの事が大嫌い?」

 和馬へ、距離を詰める。睨み合い、皮肉を込め……せせら笑ってやった。

「全部、どうでもいいね! お前は、オレと喧嘩別れでもしたいみたいだけど。生憎、オレもお前を存分に利用してるんだ。お前に見放されたら、昼飯の時にオレだけ浮くだろ? もう浮いてた頃に戻れないくらいには、お前には利用価値があるんだ。悪いけど、このまま利用させてもらうからな」

 鼻で笑い、見下ろす。

 意味を理解するまでに、時間が掛かったのかもしれない。大きく開いた目で凝視してくる。暫く経った後で、和馬が口をへの字にする。言われた。諦めたような負け惜しみめいた口調で、僅かに……笑っているようにも聞こえる。

「俺……やっぱりお前の事、嫌い」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで

猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。 ※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。 ※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。 ※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。 ※2026.1.5に完結しました! 修正中です。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

処理中です...