小さな魔法使い

なかなか

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オープニング

04

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みなさんこんにちは、ミーレです…

最近色々あってなんだか体が疲れていたのか、風邪を引いてしまいました…「ハックチ!」

「あら、大丈夫?」

「うぅーん、大丈夫~」

今日は部屋の中でゆっくりと、しなきゃです。
風邪はキツクて大変なんですけどお母さんがとっても優しくしてくれるので悪いことばかりではありません。

「ほら、果実ジュース作ったから、飲むでしょ?」

「うん、のむー」

うぅーん、喉に流れる冷たくて甘いこの感覚たまりません!

「飲んだらもう今日は布団かぶってお休みしてなさい」

「はぁーい」

お母さんが少し乱れていた私の服を正して、そのあと優しく布団をかけてくれました。
布団の重みが心地よく、暖かくて瞼が重くなってしました。

「ちゃんとここで見ててあげるから、安心して眠るんだよ」

「うん…まま、おてて繋いで…」

布団の下からそっと、左手の手のひらだけを出します。
ママ…お母さんは全くしょうがない子ねぇと言わんばかりに苦笑して、それでもちゃんとぎゅっと優しく握ってくれます

「ほら、もうねんねしな。明日また山に登るんでしょ?」

「うん…」

明日、山に行って練習した指笛でぴーちゃんと一緒に遊ぶんです。
この前ちゃんと音が出るようになったのでその成果を確かめるんです。

「じゃ、早く寝て早く治さないとね」

「うん…」

お母さんの声がだんだん遠くになっていきます。
でも、全然不安とかはありませんでした。
手は確かに暖かてお母さんがそこにいるのを教えてくれたので。

「もりのー、おひめさまぁのー」

子守唄、が、聞こえ、ます。

そのままゆっくりと、私は眠り、に、
スヤァ…スヤァ…

ーーーーーー

「ミーレは?」

階下に行くと、お母さんがお茶を飲んでいました。
私もその前に失礼しますと断って座る。
お茶を汲んでくれたのでそれを一口含み、さっきの質問に答える。

「寝ましたよ。ふふっ、あの子、なかなか手を離してくれなくって」

まだあの子の体温が手に残っている感じがして、今も微笑ましく思える。
あの子が熱を出すのは本当に久しぶりで、最初は心配もしたけど…でも今は薬も飲んでくれたことだしすぐによくなるだろうと思っている。

「あら、可愛い。私今から見てこようかしら」

「いえ、もしうつったらあの子も悲しみますから…」

「それもそうね…」

お母さんが寂しそうにそう呟いた。
あの子を独占しているような気がして罪悪感を感じたけど、でも同時に優越感も感じられた。
あの子の寝顔を見られるのは私だけだっという、しょうもないけど…

「あ、そうそう、これあの子に。さっき家から取ってきたのよ。目を覚ましたら食べさせてあげて」

そう言って、お母さんが何やらツボを取り出した。
勧められるまま、蓋をとる。

「うわ、これはなかなかに立派ですね…」

壺の中身はそれは見事な梅干し。
それも風邪に効きそうな、とっても酸っぱそうなやつ。
見てるだけで口の中に唾が湧いてくる。

「ふふっ、これを食べれば風邪なんてなんのその、よ。ちゃんと食べさせるのよ?」

「えぇ、わかってますよ…あ、お母さんが食べさせますか?」

あの子がこれを食べる姿を思い、ふとそう切り出した。
寝顔を独占してしまったのだ、せめてこれぐらいの罪滅ぼしは、ね。

「あら、いいの?じゃあそうさせてもらおうかしら」

お母さんも私と同じようにあの子の食べる時の顔を想像したのか、さぞ楽しみだと言わんばかりの表情をしていた。

カランカラン~

「あら、お客様ね」

「すみません、ちょっと出てきますね」

「いいわよ、待ってるわ」

家と店の敷居を跨ぎ、顔を出すと、そこには志村さんがいた。

「あれ、志村さんこんにちは…」

「あぁ、いらっしゃったわね、茜さん」

私に用事だろうか
薬ならもう、しばらく分は出してあるはずなんだけどな…

「これ、村のみんなから。ミーレちゃんが風邪をひいたって聞いたものだから」

「あらあらあら、これはまた立派なガチョウですこと…」

首を絞められたガチョウ一羽丸ごとを差し出された。
さっき縊られたのが分かる、とっても新鮮な…

「これで鍋でも作ってあげて。お野菜なんかも裏手の方に置いておいたから、使ってちょうだい」

「あ、ありがとございます…」

ガチョウにお野菜…なんかものすごい量が置かれてそうな気がするなぁ…

「いいのよぉ、私たちもミーレちゃんが元気になってくれないと調子が出ないんだから、早く良くなってもらわないと、ね」

「えぇ、ありがとございます、ちゃんとミーレにも伝えておきますね」

「よろしくね。じゃ、私はこれで」

また再び、カランカランと心地よい音を立て志村さんが扉から出て行った。

この村の人たちはとても暖かい。
他の村、街では多くの場合余所者には風当たりが強いのだけどこの村の人たちは私たちを優しく迎えてくれた。
きっと、それにはミーレのおかげもあるのだろうけど。

「さて…もらったはいいものの、これどうしようかしら…」

そして、手に残った丸々としたガチョウを眺めてため息をつく。
心配りは嬉しいのだけど、でもこれ私捌けないんですけど。

「お母さんなら捌けるかしら?」

ガチョウを抱えたまま、お母さんが待つ部屋に戻る。
お母さんは私がガチョウ一羽を丸ごと持ってきたのを見て少しお茶でむせ込んでいた

「あら、どうしたのそれ…」

「村の人達から。ミーレに元気になって欲しいからですって」

「あらぁ…愛されてるのね、ミーレちゃん」

「まったく、人付き合いだけは私たちより上手なんですから」

ほんと、私たちもあの子を見習わないとと思う。
志村さんが私の家に薬を頼みにくるようになったのも、ミーレのおかげだったりする。
初めてあの子が志村さんを連れてきたときはそれはもうびっくりしたものです。

「あ、それでこれなんですけど…お母さんさばけます?」

本題を思い出し、お母さんにきり出す。
もちろん、これっていうのはまんまるガチョウのこと。

「ふふっ、もちろん。これでも昔は野宿とかしてて、食材は現地調達がざらでしたからね」

ぎゅっと、力こぶを作るお母さん。
そこには年に似合わない山がポコリと盛り上がっていました。

「さすが、頼りになります」

話は早いと、ガチョウを渡す。
肉の状態では触るのに抵抗はないけど、でもこの状態ではあまり長くは触っていたくないので。

「はぁ…今度捌き方教えてあげるから、覚えておきなさいよ?」

「はーい、わかってますよ」

でもやっぱり、さばくときに出る血を見るだけでわたしにはいっぱいいっぱいでした。

ーーーーーー

「うぅーん、うーん…あ、あつーい!」

どうも、絶賛風邪っぴきなミーレです。
一眠りして体調も少し良くなったのか、布団がとっても暑くて暑くて蒸し暑いのです!

「ま…お、お母さんー?」

寝る前、お母さんをママと呼んでしまったのを思い出して、少し顔が熱くなってしまいます。
きっと、これも全ては風邪のせいなんです!

「はいはーい、あ、おきたのね。おはよう、調子はどう?」

ちょうど部屋の近くにいたのか、すぐに扉をあけてお母さんが部屋の中に入ってきました。
そして、その手には…

「な、なべ…?」

そう、家にある鍋でもひときわ大きな部類の鍋を持っていたのです。

「そ、鍋よ~。とっても美味しくできたんだから」

「私も一緒に作ったのよ」

「あ、お婆ちゃん!」

お母さんのすぐ後ろから、お婆ちゃんも一緒に入ってきました。
お婆ちゃんはお盆に食器を載せていました。
鼻をクンクンさせるとなるほど、お鍋の方からとってもいい匂いがするのです。

カチャカチャと、音を立てながら食事の用意がなされていきます。

「今日はここで食べるの?」

「そうよ、ミーレも一緒に食べたいでしょ?」

「うん!」

そして、その時でした。
眠ってから時間が経っていたのか、お腹がキューって、鳴ってしまったのです。

「ふふっ、もう夕方だものね、ミーレもお腹が空きましたよね?」

「うん…」

お婆ちゃんにそう言われて、初めて窓の外を見て相当の時間が過ぎていたのを知りました。
でも、それでもやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいのです。

「はい、これミーレの分。その調子ならいっぱい食べれそうね」

お母さんが私のお椀にお鍋の中身を注いで渡してくれます。
中を覗き込んで見れば、お野菜たっぷりの、しかもお肉も入っています!

「うん!」

みんなのぶんの食事の用意が終わったのを確認して、一緒に頂きます。
まだ立ち上がるのはやめておいた方がいいと言われたので、私はベットの上での食事です。

いつもと違った食べ方でなんだか心がドキドキしました。
スプーンをお椀にいれ、まずはお野菜を食べます。
出しが染み込んでいて、とても美味しいです!

「おいしー!」

「村の人たちが、たくさん食べて早く元気になってね、だって」

「わぁー、お礼、言わなきゃだね!」

「そうね。そのためにもたくさん食べなきゃね」

「うん!」

それはもうお腹が空いていたのもありますけどものすごい勢いでお椀の中身を食べていきます。
そして、二杯ほど食べたあたりでお婆ちゃんが壺を取り出したのです。

「お婆ちゃん、なーにそれ?」

「ふふっ、風邪によ~く効くいいもの、よ」

「な、なんか嫌な予感がするんだけどぉ~」

お婆ちゃんがとってもいい笑顔です。
それはもう、5歳は若返ったような感じです。

「そんなに身構えなくても、ちゃんと美味しいものだから」

(ほんとかなぁ…)

お婆ちゃんはこの前もそう言って、私にお手製のハッカ飴を食べさせたのを私は忘れてません。
あの後、とっても鼻がスースーして変な感じがしたんです

「はい、お椀にポトンとこれを入れて…」

「あ、いつの間に!」

気がつくとすでに私のお椀の中にお婆ちゃんが投下した後でした。
浮かび上がってきたそれは…

(う、梅干し…)

それはもう酸っぱそうな、あっかーいシワシワの梅干しでした。

「ほら、それを潰してごらんなさい。味がまた変わって美味しくなるから」

「ほんとー?」

半信半疑のまま、でも言われた通り梅干しをほぐして汁になじませます。
少し赤みがかかったお椀を見て…うーん、なんか見た目が…

「い、いただきます…」

恐る恐るお肉に手を伸ばします。
パクっ

「あ、おいしぃ…」

「そうでしょ?」

さっきまでのとはまた違った美味しさがそこにありました。
梅干しでさらにさっぱりと、その酸っぱさも程よくてとても美味しかったのです。

「うん!」


そして、その後梅干しを入れたのを二杯、都合四杯も食べてしまいした。
体の中からポカポカしてとっても気持ちが良かったです。

ちなみに、その後梅干しをそのまま丸ごと食べて見たのですが…とぉーっても、酸っぱかったです!
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