陽キャ転生〜N oと言える日本人なので魔王討伐はいたしません〜

彩根梨愛

文字の大きさ
89 / 107
三章 二人だけの世界

87.二人ぼっちと仲間達



喧嘩別れと言うには苛烈を極めたそれの傷も癒えぬ中、屋敷の敷地にノヴァーリスとそれに続き三人が入ってきたらしい。
どうやらシュオウは他者が入ってくると分かるように魔法をかけていたらしく、直ぐに身体を起こして立ち上がろうとした。
それを支えて立ち上がるとシュオウが少し覚束無い足取りでドアに向かうのを見て話し合いをする意思がきちんとあるとこを悟り思わず微笑んだ。
一考するように手を止めて僅かな抵抗を見せたように感じたが、その掌がノブを回すのを見て反対の掌を握るとシュオウに従い歩く。
しばらくするととある扉の前で歩みを止めたがどうみてもそこは玄関ではなさそうだ。
開いた扉の先には四人がけソファーがテーブルを挟んで二脚。そして一人がけのチェアが二脚ある。
扉を開けっぱなしして手前の四人掛けソファーに座るとシュオウが小さな炎鳥を作り出す。
それは香水屋のおばあさんのところで出していたものと同じようだ。
そしてシュオウが指示するまでもなく扉に向かって飛び立つとあっという間に消えた。


「今呼びに行かせました」

「そっか」


傷は癒えているだろうが貧血はまだ治まっていないのだろう。
少しだけ蒼白な印象のある顔色だが、それ程体調が悪いといった様子はない。
特にすることもないので大人しく待つ。
しばらくすると炎鳥が現れてクルクルとシュオウの頭の上を回ってから溶けるように姿を消した。


 「……失礼」


緊張した声音でそう言ったのはあの日向き合った彼の声で釣られるようにそちらに視線を向ける。
すると緊張と懺悔を混ぜたような顔つきで部屋の敷居を踏み越えていた。


「どうぞ」


家主であるシュオウの言葉を待たずそう返すとゾロゾロと入り込んできた彼らにシュオウが好きな場所に座るよう促していた。


「…………先日は、あなたに重症を負わせてしまって、申し訳なかった。……その後、体調はいかがでしょうか」


座ることなく四人掛けソファの前で謝ると、その場で立ちすくんだノヴァーリスにシュオウはしっかりと見つめ返す。


「いえ。ノヴァーリスが悪いということはないでしょう。あの日も言いましたがお互い様ですから」

「しかしハルキの言うことは間違っていないと今なら分かる。私は…」

「謝罪は結構です。僕もあなた方を殺す気で戦っていましたから」


シュオウの言葉にそうだったのかと考えを改めてあの日ノヴァーリスを批判したことをより後悔した。


「君は変だ」

「何がでしょう」

「最初は殺す気なんてなかっただろうに」


スズの言葉にシュオウは飄々とした顔で笑うと『なんのことでしょう』ととぼけたように問いかけた。


「分かりやすいよ君は。君の炎は君の心に左右されるって気づいていない訳でもないだろうに」

「………」

「まぁ本気を出さなくてもぼくたちの事なんて追い払えると思っていたのかもしれないけどね。何にしても、何故被害者になるような発言をしなかったのか、それが変だと言っているんだ」


問いかけの意味を考えているうちにもスズは更に言葉を続けてシュオウを観察するかのように見つめている。


「あの日だって自分が被害者だ、一方的に攻撃されて死にかけたと言えば僕たちは多分ここにいなかっただろうね」

「え」


突然に向けられた視線に思わず声を上げ見つめ返すととても嫌そうな顔でこちらを見られた。


「『え』ってどの口で言っているんだい?あんな馬鹿げた魔法の中を突っ込んでカレを止めたのはキミのクセに」

「あ……あ~……」

「あれだけ怒っていたんだ。もしカレが『一方的に攻撃された』と言えば僕たちに刃を向けたんじゃないの」

「…………そう、かもしれないね」

あの時はシュオウがお互い怪我を負った、拮抗した勝負だったと言ったので口論で済んだが、もしスズが言ったように言われていればどうだっただろう。
あれ程冷静さを欠いた状態ならば、暴力に訴えることはしないとは到底いえなかった。


「皆さんを殺すメリットなんてありませんでしたから。それだけです」


非情な印象を受ける言葉。
それにスズは訝しむような視線をむけて一人掛けのソファに座る。


「ぼくたちをハルキに会わせたくなったくせに?」

「そうですね。確かに私達を亡き者にしてしまえばもう二度と脅かされることもない。そして貴方はハルキ様の絶対的な庇護の対象だったでしょうね」


スズの言葉に同意してスイレンが言葉を繋げた。
その話はとても筋が通る話だし、考えれば考えるほどあの時『双方合意の上戦った』というメリットはない気がする。
何故ならシュオウは陽貴を監禁してまでも手元に置きたい、他の人間とは関わらせたくないと思っている事を知っているからだ。


「別に皆さんには関係ないでしょう」

「……まぁ、そうだけどさ」


答える気がなさそうなシュオウの発言にそれ以上深く踏み込むことも無くスズは黙り込んだ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

事なかれ主義の回廊

由紀菜
BL
大学生の藤咲啓嗣は通学中に事故に遭い、知らない世界で転生する。大貴族の次男ランバート=アルフレイドとして初等部入学前から人生をやり直し、学園で出会う無愛想で大人顔負けの魔法の実力者であるヨアゼルン=フィアラルドと親友になるが、彼に隠された力に翻弄され次々と襲ってくる災難に巻き込まれる。終いには、国家の存続を揺るがす大事件にまで発展することに・・・

魔王様の執着から逃れたいっ!

クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」 魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね 俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい 魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。 他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。 あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。 ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな? はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。 魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。 次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?  それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか? 三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。 誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ 『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ 第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️ 第二章 自由を求めてお世話になりますっ 第三章 魔王様に見つかりますっ 第四章 ハッピーエンドを目指しますっ 週一更新! 日曜日に更新しますっ!

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼不定期連載となりました。 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

【完結】勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん<山野 石郎>改め【イシ】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中……俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない<覗く>という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。 生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!? 聞いてた話と何か違うんですけど! ※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。 他のサイトにも投稿しています。

原作を知らないblゲーに転生したので生きるため必死で媚びを売る

ベポ田
BL
blゲームの、侯爵家に仕える従者に転生してしまった主人公が、最凶のご主人様に虐げられながらも必死に媚を売る話。