陽キャ転生〜N oと言える日本人なので魔王討伐はいたしません〜

彩根梨愛

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三章 二人だけの世界

77.リュグナー

飛び交う魔法と斬撃、四対一という圧倒的な数の差をものともせずシュオウはひたすらにその刃と魔法を奮った。
塞がりきっていなかった利き手のキズが開きちが滲むが、それをものともしない重い一撃を放つ。
ノヴァーリスはそれを受け止めながら言葉を投げかけたものの、シュオウはその刃を止めることは無い。
激しい斬撃の合間にどういった手法なのか魔法でも反撃している、常人には理解できない手法での戦闘にノヴァーリス達にも元々慢心もしていなかったが、とうとう焦りが見え始める。
もとより魔力量は多いと推察されていたので、魔力にものを言わせた精神干渉やデバフ系の継続魔法系には注意をしていたが、実地の戦闘技術は推察するしか無かった。
故に、シュオウが剣術での戦闘をこなしながら魔法での攻撃まで使えるとは知りえなかったのだ。


「向こうのシールドが邪魔で攻撃が通らない!」

「ぐっ……一撃が重いっ!」


シールドを発現させているスズはその小さな背中でランツィとスイレンをかばいながら叫ぶように詠唱する。


「我が力は汝を傷付ける者の障壁!絶対防御!!」


スズの言葉と同時にノヴァーリスの体は淡く光を宿して、グンとその周辺が温かくなったような気がして目を見張ると、その隙を突いたシュオウの攻撃がノヴァーリスの脇腹に迫る。
痛みを覚悟したものの、それは不自然な甲高い音を立てて弾かれる。


「……なるほど」


僅かに低い声でそういうシュオウは剣の持ち手を握り直して、諦めることなくその刃を振るう。
今度のそれは自身の剣で受け止めて、あまりの能力に高揚しながらも、何とか冷静さを保つよう呼吸を整えた。


「身体強化、筋力増幅、反応速度上昇、耐久力上昇」


シュオウが唱えた詠唱を繰り返すようにスズも同様のバフ魔法を掛けていく。
一進一退の中、攻撃の手を止めていた彼が動き出す。


「騎士!撤退だ!」


その声に反射的に跳ねるように後方に下がると目の前に現れた大岩に驚愕する。


「我が力の全てをもって戦闘不能にしろ!ロックレイン」

「……っ」


シュオウを躊躇いなく踏み潰す大岩が地面にめり込む。
殺意の高いそれに思わず非難するようにランツィを睨みつけて数秒、その大岩が音を立てて崩れていく。


「………………流石に、今のは効きますね」


額を切ったか血を流しているようだったが、大きな怪我はないようで、ノヴァーリスは一体何が起こっているのか理解できないまま剣を構える。
巨大な岩が粉砕されているところを見ると咄嗟に剣でも強化して貫いたのだろうか。
基本的に魔法というのは詠唱をするものであるが、力のある魔導士はその限りでは無い。
けれど能力を存分に発揮しようとするとやはり詠唱をすることにより、精度が上がると言われている。
にもかかわらず、シュオウは強化魔法以外は無詠唱で魔法を発現させており、先程の大岩の破壊の際には何をしたのかもノヴァーリスには分からないままだった。


「……はっ!バケモンかよ」

「ノヴァーリス様、今ヒールをおかけします」


ランツィは場違いなドレスのレースを揺らしながら低い声でそう吐き捨てて膝を着く。


「………………」


そのまま追撃をかけてくるかと構えていたノヴァーリスだったが、何故かシュオウはその瓦礫を興味深げに眺めてランツィを一瞥する。


「ようやく、話を聞く気になったのかしら?私達の勇者様をお返し願える?」


おどけたように笑みを浮かべながらも、そんなわけが無いと分かっているかのように、姿勢を整え警戒を強めたランツィをただじっと見つめ返してから、シュオウは興味なさげに目を逸らした。


「人の鼻を引っ張り回す方とお話しすることはありませんね」

「なんの事?」


その時ノヴァーリスは、シュオウがランツィに【嘘つき】や【他人を言い包める】と比喩した事実にばかりに気を取られて、気が付かなかった。

ランツィが当初自身の属性魔法は【何】だと伝えていたのか。

スイレンを派遣すると言う話が出た際に、ランツィの【第二属性が光魔法】であるが故にスイレンを派遣するという事実をあとから仲間内で聞いた事。

つまりそれは【本人がパーティーメンバーにすら伝えていない】一方で、【他の誰かがランツィの属性魔法について知っていた】という事に他ならない。

それらの事実を、ついに彼は思い出すことは無かった。




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