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本日は快晴。
走るには暑すぎる気候だが走り出せばその心地良さにうっとりと目を細める。
体が風を切る感触。
今なら何にでも勝てると思うような全能感が堪らない。
走り終わったあとはしんどいは暑いわで
死にそうになるが、この快感に抗える気はしない。
「48秒2!49秒5!……」
「綾野やっぱはえーな。最後流してなかった?」
「まぁ中学の頃から全国常連だもんな。しかも100と掛け持ちだろ?俺ら立つ瀬がねぇよな」
少々越に浸り過ぎたらしく、周囲から流したと言われたが選考には入ったので良しとすることにした。
荒い息を整えながら横目で1年生を見るとまさに今ミヤが走り出すところだった。
100メートル、400メートルはあまり背丈は関係ないと言われているが、やはりある程度身長が必要な種目だ。
理想は最低でも175センチ以上は欲しい。
記録を残す選手は180センチ台の選手が多く、かくゆう自分も182センチあるので信ぴょう性はあるだろう。
160センチ程の人間になると初動は良くともリーチの違いで後半巻き返されるケースが多く、とりあえず初動スピードの強化は必須になる。
低身長でもできる競技ではあるが大会優勝者などはそこそこの高身長であることを考えるとそこはやはり不利だと言えるのかもしれない。
ピストルが鳴り一斉に走り出した1年生の中で颯爽と頭一つ出て来たのはミヤ。
初動の動きは練習ごとに洗練されていて1年生としては十分な能力だ。
あとはこのまま走り抜けられるかどうかだが、400メートルはほぼ無呼吸で全力疾走をし続ける競技。
陸上競技の中で一番辛いと言われている所以はそこにある。
参加標準記録に到達するように走っている訳だが、ミヤは無事到達できるだろうか。
やはり中盤に追い抜かれ最後の順位的には上から4番目。
タイムは54秒04らしい。
無事参加標準記録は突破できたようだ。
ギリギリ地面には倒れ込まないもののだいぶ苦しそうな様子で膝に手をつく様を見ながら近寄るとその頭をガシガシと撫でた。
「ミヤ!!おめでとう」
「……っは…」
「ああ、喋らなくていい」
400メートル走りたての人間に気安く話しかけるのは良くない。
8割がた返事はかえって来ないし、内心『いま走ったの見てたよな?話しかけんなくそが』と思われがちだ。
誇張ではなくマジで死にかけている可能性が高い。
そこまで分かっていて思わず話しかけてしまった。
周囲の一年生が驚いたように固まって荒い呼吸ながらもこちらを見ている。
みんなして知らない人が家に入ってきた時の猫のような顔をするのはやめて欲しい。
「か、かっ、こよかったっす」
1人の1年生が息も絶え絶えにそう言って自分を見てくるので数秒フリーズしてから頷く。
一瞬ミヤの話かと思ったが彼は1年生の1位通過者。よく考えなくても俺の話だろう。
いい加減に話を聞きすぎて意味わからないことを言いがちらしいので、年下と話す時はちゃんとひと呼吸置いてから、周囲の様子を見て、話をしようと決めているが、その努力が報われたようだ。
ぶっきらぼうに見られがちなのを知っているので口角を上げることを意識して微笑む。
「ありがとう。君も参加標準記録達成おめでとう。見ていたよ。1年生の中で1位通過だったね」
「ーーーっ!!あ、ありがと…ごほっ、ごほ…」
「落ち着いて、水飲みな。返事はいいから聞いて。他のみんなも脱水症状にならないように水分や塩分の補給はこまめに。はい、実行」
今日の気温は34℃。
こまめな水分補給、塩分補給を怠ると大変だ。
「……ぼくも、見てました…かっこよかったです」
「ありがとう。ほら、ミヤも休憩」
そう言ってその背を軽く押すとミヤは身体を起こしてテントへと向かった。
走るには暑すぎる気候だが走り出せばその心地良さにうっとりと目を細める。
体が風を切る感触。
今なら何にでも勝てると思うような全能感が堪らない。
走り終わったあとはしんどいは暑いわで
死にそうになるが、この快感に抗える気はしない。
「48秒2!49秒5!……」
「綾野やっぱはえーな。最後流してなかった?」
「まぁ中学の頃から全国常連だもんな。しかも100と掛け持ちだろ?俺ら立つ瀬がねぇよな」
少々越に浸り過ぎたらしく、周囲から流したと言われたが選考には入ったので良しとすることにした。
荒い息を整えながら横目で1年生を見るとまさに今ミヤが走り出すところだった。
100メートル、400メートルはあまり背丈は関係ないと言われているが、やはりある程度身長が必要な種目だ。
理想は最低でも175センチ以上は欲しい。
記録を残す選手は180センチ台の選手が多く、かくゆう自分も182センチあるので信ぴょう性はあるだろう。
160センチ程の人間になると初動は良くともリーチの違いで後半巻き返されるケースが多く、とりあえず初動スピードの強化は必須になる。
低身長でもできる競技ではあるが大会優勝者などはそこそこの高身長であることを考えるとそこはやはり不利だと言えるのかもしれない。
ピストルが鳴り一斉に走り出した1年生の中で颯爽と頭一つ出て来たのはミヤ。
初動の動きは練習ごとに洗練されていて1年生としては十分な能力だ。
あとはこのまま走り抜けられるかどうかだが、400メートルはほぼ無呼吸で全力疾走をし続ける競技。
陸上競技の中で一番辛いと言われている所以はそこにある。
参加標準記録に到達するように走っている訳だが、ミヤは無事到達できるだろうか。
やはり中盤に追い抜かれ最後の順位的には上から4番目。
タイムは54秒04らしい。
無事参加標準記録は突破できたようだ。
ギリギリ地面には倒れ込まないもののだいぶ苦しそうな様子で膝に手をつく様を見ながら近寄るとその頭をガシガシと撫でた。
「ミヤ!!おめでとう」
「……っは…」
「ああ、喋らなくていい」
400メートル走りたての人間に気安く話しかけるのは良くない。
8割がた返事はかえって来ないし、内心『いま走ったの見てたよな?話しかけんなくそが』と思われがちだ。
誇張ではなくマジで死にかけている可能性が高い。
そこまで分かっていて思わず話しかけてしまった。
周囲の一年生が驚いたように固まって荒い呼吸ながらもこちらを見ている。
みんなして知らない人が家に入ってきた時の猫のような顔をするのはやめて欲しい。
「か、かっ、こよかったっす」
1人の1年生が息も絶え絶えにそう言って自分を見てくるので数秒フリーズしてから頷く。
一瞬ミヤの話かと思ったが彼は1年生の1位通過者。よく考えなくても俺の話だろう。
いい加減に話を聞きすぎて意味わからないことを言いがちらしいので、年下と話す時はちゃんとひと呼吸置いてから、周囲の様子を見て、話をしようと決めているが、その努力が報われたようだ。
ぶっきらぼうに見られがちなのを知っているので口角を上げることを意識して微笑む。
「ありがとう。君も参加標準記録達成おめでとう。見ていたよ。1年生の中で1位通過だったね」
「ーーーっ!!あ、ありがと…ごほっ、ごほ…」
「落ち着いて、水飲みな。返事はいいから聞いて。他のみんなも脱水症状にならないように水分や塩分の補給はこまめに。はい、実行」
今日の気温は34℃。
こまめな水分補給、塩分補給を怠ると大変だ。
「……ぼくも、見てました…かっこよかったです」
「ありがとう。ほら、ミヤも休憩」
そう言ってその背を軽く押すとミヤは身体を起こしてテントへと向かった。
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