18 / 31
本章~恋に落ちるまで~
熱の名残り
しおりを挟む
翌朝。
目が覚めてすぐに、具合が良くなっていることに気がついた。
ゆっくりと身体を起こし、部屋内を見渡す。
窓から朝日が射し込んでいた。
僕はベッドから足を下ろして内履きに足を引っ掻ける。
そのまま、窓を開けてバルコニーに出た。
爽やかな風が僕の髪をなびかせる。
僕は大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
熱がこもっていた身体を、冷たくて新鮮な空気が洗い流してくれる。
「気持ちいい…。」
僕はもう一度、今度は目を閉じ、両手を広げて空気を吸い込んだ。
「おはよう。」
「ぶっ…げほっ、がほっ…っ!」
突然後ろから声をかけられ、一人だと思って油断していた僕は、驚いて咳き込んでしまった。
「ああ、すまない、驚かせてしまったかな。」
振り向くと、陛下が穏やかな笑みをこちらに向けていた。
朝日を正面から浴びた陛下は、きらきらしていて眩しかった。
「……………陛下、おはようございます。」
そんな陛下をかっこいいと思ってしまった自分が悔しくて。
僕は、あたかも驚かされたことに対する不満であるかのように半目で睨みつけた。
「病み上がりなんだからちゃんと羽織らないとだめじゃないか。
熱がぶり返してしまうよ。」
そんな僕を全く意に介さず、陛下は自分の羽織りを僕の肩に掛けた。
ふわり、と陛下の香りが鼻をくすぐる。
暖かい。
また、心臓がドキドキと高鳴り始めた。
「ルーノ?」
黙り込んだ僕を不審に思ったのか、陛下が僕の顔を覗き込む。
「あれ、まだ熱があるのかな。
顔が赤いけれど…。」
そう言って、陛下は僕の頬を両手で包み込んで、僕の額に陛下の額をこつん、と当てた。
僕は一言も発さなかった。
静かに、されるがままに、陛下に身を委ねていた。
「熱は…、ないみたい。
良かった、もう安心だね。
ただ、まだ安静にしていた方が良い。
ルーノ、一緒に部屋に戻ろうか。」
そう言って、陛下は僕から顔を離した。
「………。」
僕は、じっ、と陛下の瞳を見つめていた。
「ルーノ?」
陛下は、僕のいつもの騒がしい様子からはかけ離れた大人しさに、戸惑ったように僕の名を呼んだ。
僕は静かに目を閉じた。
陛下を見上げたまま。
陛下が驚いたのが、目を閉じていても分かった。
これは、今、そんな気分なだけだ。
熱が下がって、病み上がりで、家族のもとを離れていて、なんだか心細いから、そんな気分になっているだけ。
陛下の温もりが、今はちょうど良いだけ。
陛下は、僕の頬を優しく撫でて、静かに顔を近づけた。
そして。
優しいキスを落としたのだった。
目が覚めてすぐに、具合が良くなっていることに気がついた。
ゆっくりと身体を起こし、部屋内を見渡す。
窓から朝日が射し込んでいた。
僕はベッドから足を下ろして内履きに足を引っ掻ける。
そのまま、窓を開けてバルコニーに出た。
爽やかな風が僕の髪をなびかせる。
僕は大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
熱がこもっていた身体を、冷たくて新鮮な空気が洗い流してくれる。
「気持ちいい…。」
僕はもう一度、今度は目を閉じ、両手を広げて空気を吸い込んだ。
「おはよう。」
「ぶっ…げほっ、がほっ…っ!」
突然後ろから声をかけられ、一人だと思って油断していた僕は、驚いて咳き込んでしまった。
「ああ、すまない、驚かせてしまったかな。」
振り向くと、陛下が穏やかな笑みをこちらに向けていた。
朝日を正面から浴びた陛下は、きらきらしていて眩しかった。
「……………陛下、おはようございます。」
そんな陛下をかっこいいと思ってしまった自分が悔しくて。
僕は、あたかも驚かされたことに対する不満であるかのように半目で睨みつけた。
「病み上がりなんだからちゃんと羽織らないとだめじゃないか。
熱がぶり返してしまうよ。」
そんな僕を全く意に介さず、陛下は自分の羽織りを僕の肩に掛けた。
ふわり、と陛下の香りが鼻をくすぐる。
暖かい。
また、心臓がドキドキと高鳴り始めた。
「ルーノ?」
黙り込んだ僕を不審に思ったのか、陛下が僕の顔を覗き込む。
「あれ、まだ熱があるのかな。
顔が赤いけれど…。」
そう言って、陛下は僕の頬を両手で包み込んで、僕の額に陛下の額をこつん、と当てた。
僕は一言も発さなかった。
静かに、されるがままに、陛下に身を委ねていた。
「熱は…、ないみたい。
良かった、もう安心だね。
ただ、まだ安静にしていた方が良い。
ルーノ、一緒に部屋に戻ろうか。」
そう言って、陛下は僕から顔を離した。
「………。」
僕は、じっ、と陛下の瞳を見つめていた。
「ルーノ?」
陛下は、僕のいつもの騒がしい様子からはかけ離れた大人しさに、戸惑ったように僕の名を呼んだ。
僕は静かに目を閉じた。
陛下を見上げたまま。
陛下が驚いたのが、目を閉じていても分かった。
これは、今、そんな気分なだけだ。
熱が下がって、病み上がりで、家族のもとを離れていて、なんだか心細いから、そんな気分になっているだけ。
陛下の温もりが、今はちょうど良いだけ。
陛下は、僕の頬を優しく撫でて、静かに顔を近づけた。
そして。
優しいキスを落としたのだった。
10
あなたにおすすめの小説
魔法使い、双子の悪魔を飼う
yondo
BL
「僕、魔法使いでよかった」
リュシーは宮廷専属の優秀な魔法使い。
人が寄りつけない程強い自身の力のせいで常に孤独なリュシーは、ある日何気なく街を歩いていた際に闇商人の話を聞いてしまう。貴重で価値ある''モノ''を高値で買い取る悪趣味な会が近くであるらしく気になったリュシーは其処で不思議な双子と出逢いを果たす。
本の見よう見まねで無償の愛を与え続けるリュシーに育てられた双子はいつしか胸の内に何とも言えない感情を抱く様になり...
独りぼっちだった魔法使いが出逢いを通して彼等と関係を紡いでいき幸せを知る微闇要素有りのBLファンタジー。
(※) 過激描写のある話に付けています。
*** 攻め視点
※不定期更新です。
※誤字脱字の報告助かるので嬉しいです。
※何でもOKな方のみ拝読お願いします。
扉絵
YOHJI@yohji_fanart様
(無断転載×)
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
仮面の王子と優雅な従者
emanon
BL
国土は小さいながらも豊かな国、ライデン王国。
平和なこの国の第一王子は、人前に出る時は必ず仮面を付けている。
おまけに病弱で無能、醜男と専らの噂だ。
しかしそれは世を忍ぶ仮の姿だった──。
これは仮面の王子とその従者が暗躍する物語。
僕に双子の義兄が出来まして
サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。
そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。
ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。
…仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。
え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。
狼領主は俺を抱いて眠りたい
明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。
素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる