上 下
10 / 11

ただいま、私の愛しい人

しおりを挟む
重たい瞼をなんとか開けると、私を不安そうな顔で見つめる2組の目があった。
「……じる、さま、ふぃる」
私が出した声は確かな発音にはならず、舌っ足らずな音として辺りを震わせる。帰ってきたのだ、私は、帰ってこれたのだ。
「ヒヨリ」
以前までは怖いと感じていたその声は、今では愛おしいと思い、そんな声は微かに震えているようにも感じられ、どうしようもなく、安心し、嬉しく感じた。
「ヒヨリ様」
その声は私を心の底から案じており、私の心を満たしてくれるものであった。

「ただいま」
初めは怖くて、不安で、死にたいとさえ思っていたこの世界が、今ではこんなにも愛おしくて、安心出来て、そして、ここで生きていたい、そう思えるようになったのは、目の前にいる心優しい2人の獣人のお陰なのだと、そう思った。
「ジル様」
「どうした、どこか痛いのか?」
こんな時まで私のことを案じてくれる彼がとても愛おしくて、その気持ちを伝えたくなった。
「ジル様、ジル様は、お返事が遅くなった上に、1度拒絶してしまいましたが、私を、番として、置いてくれますか?」
彼は目を見開き、そして、とろりとした、とてつもなく愛おしいのだという目をして答えた。
「勿論だ、私の、愛おしい番」


おわり
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:192

DEKOBOKO

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:11

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:11,212pt お気に入り:4,128

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:15,252pt お気に入り:3,347

処理中です...