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38話ー『浅瀬の中の殺戮者』
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「そうそう、子どもはコッチですよ」
ぷぷぷ、と鼻息を漏らしてスコルが邪悪そうに笑みを浮かべる。
それに同調するパティは、ウンウンと瞳を伏せながら頷いている。
(ようやく分かった。こいつらは、二人揃ってメスガキ属性なんだ……)
なんて分からせたくなるヤツらなんだ、けしからねえ。
「俺はお前らと違って子どもじゃねえよ」
不貞腐れて船床で胡座をかいた俺は、手持ち無沙汰に8番潜水艦のデッキを眺める。
帆船が潮風になびくこの8番潜水艦は、ドイツのVIIC/41型潜水艦「U995」を模して作られたモデルだ。
全長671mと、元のモデルの10倍は大きい、超巨大潜水艦になっている。
高さは、一隻あたり96m。
船内には、520人までの乗員が、搭乗可能。
高さ16mの魔導戦機を格納させるのだから、このぐらいスケールは必要と言うことだ。
「しっかし、まいったなー」
いつまでもこうしていては、埒が明かない。
水中探索用の魔導戦機を使わないことには、生身で潜るのは不可能だ。
水の都アトランティスと言えば、深度にしておよそ6000メートル先の世界、超深海エリアと呼ばれるレッドゾーンの海域に眠っていると言う噂がある。
(そこまで生身で潜るのは、流石に俺でも無理だしなぁ)
はぁ、とため息をつかせながら、水密扉の先にどうやって入るかを考える。
内側から施錠をされてしまった以上、魔導戦機には辿り着けない。
カンカンと鳴る観光客の足音に釣られて、目線を動かせばパティとスコルが居なくなっている。
きっとフライボードで遊びに行ったんだろう、そう思っていた矢先に船尾から悲鳴のような声が聞こえた。
キャアッと言う甲高い女の子のような声。
それも二つとなれば、
(間違いない!! パティとスコルだ!!)
俺は慌てて立ち上がり、船尾の方へとぐるりと回る。
水密扉の設けられた船首の方から、後ろへ回って船尾の方へと駆け寄る。
すると、
「お、お姉ちゃんッ!! ひ、人が死んでます~ッ!!」
水面に指を指しつつ、仰天して仰け反るスコルが、海中に沈む人影を見つめて青ざめていた。
★
「おい!! 一体、何があったんだ!?」
「なんだ今の悲鳴は!?」
その声に釣られて、ゾクゾクと船尾の方に人が集まってくる。
俺はパティとスコルの立っていたデッキの方まで駆け出すと、そのまま手すりを掴んで身体を乗り出す。
水面の上に浮かんでいるように見えるのは、さっき出会ったばかりの艦長らしき人物だ。
「二人は危ないから、ここで待機してろ!!
絶対に海には、降りるなよッ!!」
そう言って俺は水面へとダイブし、バシャンと水温を立てながら水中へと潜る。
海の中で、ブクブクと泡が弾ける。
その瞬間は、俺は目を剥いて驚いた。
(こんな浅瀬にレベル230のアークシャークの群れがッ!?)
艦長らしき人影の側まで泳ぐと、周囲に居たのはサメの群れだ。
アークシャークと呼ばれる、全長20mほどのイタチザメ。
人食いサメの群れが、水面に浮かぶ艦長の周囲を漂っていた。
(ひょっとして艦長、このアークシャークの群れに襲われたんじゃ?)
でも、どうしてだ?
艦長が海に潜るにしたって、安全確認の一つぐらいはする筈だ。
それにアークシャークと言えば、主な生息地点は、深度にして1000mの深海地点。
とても、こんな入水直後の浅瀬で、遭遇するようなモンスターじゃない。
(誰かが、アークシャークを呼び寄せたのか?)
だとするなら、一体誰が?
ひとまず艦長の身体に触れながら、水面を目指して顔を上げる。
バシャリと跳ねた水飛沫に、水中から顔を上げた俺は、真っ赤に染まった艦長の身体を引き上げることに成功する。
(やっぱりアークシャークに襲われた際の噛み傷だ……)
腕を噛み千切られた艦長は、そのまま出血多量でショック死したらしい。
(しかし……一体、誰がこんな事を?)
居るんだ。この水中に浮かぶ8番潜水艦の中に、艦長を殺した犯人が!!
★
「犯人を誘い出すには、やっぱりこいつを使うに限るか」
そう言って俺は、水中で俺の少年の姿の写真を記録し、同時に艦長の写真を記録する。
死んだ艦長の姿を俺の姿へとすり替え、そのあと再び変わるくんの変装機能を使い、そのまま艦長に成りすますと水面から助けを呼ぶ声をあげた。
「ーー誰かぁッ!! 浮き輪をコッチに投げて助けてくれーッ!!
アークシャークの群れに襲われてしまったーッ!!」
それとなく水中にアークシャークの群れが居ることを報告し、甲板に乗っているヤツらに「飛び降りて来るな」と暗に言う。
「艦長ッ!! 大丈夫ですかッ!?
なんで海なんかに飛び込んでッ!?」
青ざめるパティとスコルの背後からは、俺の声を聞きつけた様子でジョンが血相を変えて浮き輪を投げこむ。
紐付きの浮き輪にぐいとしがみついて引き寄せると、俺はゆっくりとジョンを含めた8番潜水艦の船乗りたちに引き上げられた。
ぷぷぷ、と鼻息を漏らしてスコルが邪悪そうに笑みを浮かべる。
それに同調するパティは、ウンウンと瞳を伏せながら頷いている。
(ようやく分かった。こいつらは、二人揃ってメスガキ属性なんだ……)
なんて分からせたくなるヤツらなんだ、けしからねえ。
「俺はお前らと違って子どもじゃねえよ」
不貞腐れて船床で胡座をかいた俺は、手持ち無沙汰に8番潜水艦のデッキを眺める。
帆船が潮風になびくこの8番潜水艦は、ドイツのVIIC/41型潜水艦「U995」を模して作られたモデルだ。
全長671mと、元のモデルの10倍は大きい、超巨大潜水艦になっている。
高さは、一隻あたり96m。
船内には、520人までの乗員が、搭乗可能。
高さ16mの魔導戦機を格納させるのだから、このぐらいスケールは必要と言うことだ。
「しっかし、まいったなー」
いつまでもこうしていては、埒が明かない。
水中探索用の魔導戦機を使わないことには、生身で潜るのは不可能だ。
水の都アトランティスと言えば、深度にしておよそ6000メートル先の世界、超深海エリアと呼ばれるレッドゾーンの海域に眠っていると言う噂がある。
(そこまで生身で潜るのは、流石に俺でも無理だしなぁ)
はぁ、とため息をつかせながら、水密扉の先にどうやって入るかを考える。
内側から施錠をされてしまった以上、魔導戦機には辿り着けない。
カンカンと鳴る観光客の足音に釣られて、目線を動かせばパティとスコルが居なくなっている。
きっとフライボードで遊びに行ったんだろう、そう思っていた矢先に船尾から悲鳴のような声が聞こえた。
キャアッと言う甲高い女の子のような声。
それも二つとなれば、
(間違いない!! パティとスコルだ!!)
俺は慌てて立ち上がり、船尾の方へとぐるりと回る。
水密扉の設けられた船首の方から、後ろへ回って船尾の方へと駆け寄る。
すると、
「お、お姉ちゃんッ!! ひ、人が死んでます~ッ!!」
水面に指を指しつつ、仰天して仰け反るスコルが、海中に沈む人影を見つめて青ざめていた。
★
「おい!! 一体、何があったんだ!?」
「なんだ今の悲鳴は!?」
その声に釣られて、ゾクゾクと船尾の方に人が集まってくる。
俺はパティとスコルの立っていたデッキの方まで駆け出すと、そのまま手すりを掴んで身体を乗り出す。
水面の上に浮かんでいるように見えるのは、さっき出会ったばかりの艦長らしき人物だ。
「二人は危ないから、ここで待機してろ!!
絶対に海には、降りるなよッ!!」
そう言って俺は水面へとダイブし、バシャンと水温を立てながら水中へと潜る。
海の中で、ブクブクと泡が弾ける。
その瞬間は、俺は目を剥いて驚いた。
(こんな浅瀬にレベル230のアークシャークの群れがッ!?)
艦長らしき人影の側まで泳ぐと、周囲に居たのはサメの群れだ。
アークシャークと呼ばれる、全長20mほどのイタチザメ。
人食いサメの群れが、水面に浮かぶ艦長の周囲を漂っていた。
(ひょっとして艦長、このアークシャークの群れに襲われたんじゃ?)
でも、どうしてだ?
艦長が海に潜るにしたって、安全確認の一つぐらいはする筈だ。
それにアークシャークと言えば、主な生息地点は、深度にして1000mの深海地点。
とても、こんな入水直後の浅瀬で、遭遇するようなモンスターじゃない。
(誰かが、アークシャークを呼び寄せたのか?)
だとするなら、一体誰が?
ひとまず艦長の身体に触れながら、水面を目指して顔を上げる。
バシャリと跳ねた水飛沫に、水中から顔を上げた俺は、真っ赤に染まった艦長の身体を引き上げることに成功する。
(やっぱりアークシャークに襲われた際の噛み傷だ……)
腕を噛み千切られた艦長は、そのまま出血多量でショック死したらしい。
(しかし……一体、誰がこんな事を?)
居るんだ。この水中に浮かぶ8番潜水艦の中に、艦長を殺した犯人が!!
★
「犯人を誘い出すには、やっぱりこいつを使うに限るか」
そう言って俺は、水中で俺の少年の姿の写真を記録し、同時に艦長の写真を記録する。
死んだ艦長の姿を俺の姿へとすり替え、そのあと再び変わるくんの変装機能を使い、そのまま艦長に成りすますと水面から助けを呼ぶ声をあげた。
「ーー誰かぁッ!! 浮き輪をコッチに投げて助けてくれーッ!!
アークシャークの群れに襲われてしまったーッ!!」
それとなく水中にアークシャークの群れが居ることを報告し、甲板に乗っているヤツらに「飛び降りて来るな」と暗に言う。
「艦長ッ!! 大丈夫ですかッ!?
なんで海なんかに飛び込んでッ!?」
青ざめるパティとスコルの背後からは、俺の声を聞きつけた様子でジョンが血相を変えて浮き輪を投げこむ。
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