逆転機ニルヴァーシュ -朝斬りの夜明け-【バンダナコミック01】

ボス子ちゃま

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39話ー『消えた凶器』

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「艦長ッ!! よくぞご無事でッ!!」

 艦尾のデッキに四つん這いになった俺に、ジョンは片膝をついて心配そうに顔色を覗き込んでくる。
 船の側面に取り付けられた梯子を登った俺は、デッキに這い上がると、さも息切れしたように弱りきった状態を演じていた。
 心配げに眉根を下げるジョンは、感極まった様子で目尻に涙を浮かべている。
 そして俺の死体(艦長)を見ているパティとスコルは、ぺたんとその場で尻もちをつくと、涙ながらに俺の死体を呆然と眺めていた。

「はぁ、助かったよジョン……。だが、こちらの少年のほうが……」

 そう言って俺は、俺(艦長)が安らかに眠りにつく様子を見る。

「仕方がありませんよ、艦長。あの状況でしたから……。
 しかし……一体誰が、艦長を海になんか突き落としたんだ……」

 そう言って悔しそうに唇を噛むジョンは、首を振って瞳を伏せる。

(俺の見立てが正しければ、恐らく犯人はこの人だ……)

 元国家王国騎士のクルーであるジョン。

(ーーだが、まだ決定的な証拠が無い……)

 それにジョンは、艦長が船尾に居る間は、艦内の中に居た。
 俺もそのことは、確認している。
 水密扉の鍵を内側から施錠して、艦内の中に居たのだ。
 そんなジョンには、一見すれば艦長には触る隙すらない様に思える。

(けど、あのトリックを使えば、この謎は必ず解き明かされる。
 問題なのは、どうやってジョンが、艦長を海に突き落としたのかだ……)

 それを調べる為にも、俺は一度ゆっくりと立ち上がる。
 ふらついた足取りを見せながら、

「こんな事態だ。すこし休ませてくれ」

 そう言って俺は艦尾から離れて人目を欺くと、真っ直ぐにダッシュして艦首のほうへと走り始めた。



 こっそりと開かれた水密扉の中へと移動し、鋼鉄製の船床を走りながら、近くにあった階段を降りる。
 8番潜水艦の内部は、どうやら3階建てになっているらしく、フロアの一番底まで辿り着くと、魔導戦機の置かれた格納庫の部屋へとやって来た。
 床は水浸しで、そこに置かれていエイのような頭部に、肩パッドをつけたような逆三角形体型の魔導戦機からは、ポタポタと今使ったばかりのように水滴が滴っている。

「やっぱり俺の読み通りだ」

 恐らくジョンは、この魔導戦機を使って、格納庫から水中の中へと脱出を果たしたんだ。

「この部屋の横にある配電盤を操作し、ひとたび船床を開けば、すぐそこは水中だからな」

 問題なのは、どうやってアークシャークを呼び寄せたかだけど……。
 水密扉を使った密室トリックは、これで解き明かした。
 残るは、アークシャークの問題。
 それとデッキに立っていたであろう艦長を、どうやって海の底から海中に引きずりこんだかだ。
 ぐるりと首を回して格納庫の中を眺めると、船床の一部に赤い染みのような物が、べったりと広がっている部分を発見する。

「そうか!!」

 ーー読めたぞ!!
 このアークシャークを使ったトリックの謎が!!

(残る問題は、あと一つ……)

「海底に潜った魔導戦機を使ったとして、デッキに立っていた艦長を“背後から”突き落とすなんて、本当に可能なのか?」

 装備品の類を調べてみる。
 だけど、それっぽい装備品はどこにも見当たらない。

「この魔導戦機が使える装備品は、アーム型の三本爪の両腕に、肩につけられた魚雷装備か……」

 これらを使って艦長を背後から落とし、海底に引きずり込むのは、どう考えても不可能だ。

「そう言えば、どうして艦長は、背中一面に打撲痕があったんだ?」

 俺の記憶が確かなら、アークシャークから負ったであろう噛み傷とは別に、艦長の背中には、ものすごい広さで打撲痕が見受けられた。

(まるで大きな鞭で叩きつけられたような……)

 考えごとをしながら、水滴のついている魔導戦機の背後に回る。
 そこで俺は、ある物を発見してしまった。
 そこに落ちていたのは、鉄を切って加工したりする為に必要な、丸ノコと呼ばれる機材だ。
 

(そうか!! 分かったぞ!?)

 間違いない!!
 ジョンは、あの方法を使って、艦長を海の中へと引きずりこんだんだ!!

(っと、危ねえ!! 誰か来たみたいだ!!)

 誰かが、この格納庫に走ってやって来る気配がしたので、俺はすかさず階段下に忍びこんで身を潜める。
 ーー降りて来たのはジョンだった。
 白いシャツに青いストライプ柄が入った、まるで囚人服のような衣服。
 頭には、船乗りらしく白いキャップを被り、忌々しげに歯噛みしている姿が目に飛び込む。

「クソッ!! 何であの艦長が生きてんだッ!!」

(やっぱり俺の読みは、正しかったか……)

 悪態をつきながら壁を蹴り上げたジョンは、どうやら艦長を探して、この格納庫まで降りて来たようだ。

「やっぱりあなたが犯人だったんですね?」

 そう言って俺は、すべてを知った顔つきでジョンの前へと躍り出る。
 ーーさぁ、始めようか!!
 ーー人生初となる推理ショーをッ!!
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