逆転機ニルヴァーシュ -朝斬りの夜明け-【バンダナコミック01】

ボス子ちゃま

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40話ー『最大の謎』

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「なッーー艦長ッ!?
 ーーいや、お前は一体何者なんだッ!?」

 仰け反って驚いたジョンは、真っ青に青ざめるとその瞳を瞬きさせる。

「何者?」

 ふん、ついに披露する時が来たか。
 俺がまだ日本で生きていた頃に培った、前世の知識を。
 この場に適した人物の名前、それはもう一人しか居ない。

「エドガワ・コナン!! 探偵さッ!!」

「た、探偵だってッ!? じゃあ本物の艦長はッ!?」

「あぁ、もうとっくに死んでるよ。アンタに殺されてなッ!!」

 ビシッと指を指して、俺はその瞬間に変わるくんの変装を解く。
 代わりに俺の姿形は、あの赤い瞳に色黒の肌のターバンの少年ーーではなく、赤い蝶ネクタイに青い上着を羽織り、その下にポロシャツとベルトを身に着けた人物の容姿へとすり替わる。
 が、まったく似ていないので、ほとんどコスプレみたいになっている。
 それを見ていたジョンは、額に冷や汗をかきつつ「カハハッ」と高笑いを浮かべて腹を抱える。

「おいおい、まさか俺が犯人だと疑っているのかい?
 冗談は、よしてくれよ!!
 子どもの冗談にしては、悪い冗談だ。
 第一、考えてもみてくれ? 俺がやったなんて言う証拠は、どこにもないんだろ?」

 そう言ってジョンは笑いながら白い歯を浮かべると、子どもの姿の俺を連れて、この事件を無かったことにしようとする。
 だが、俺はその言い訳に乗る気は、まったくない。

「貴方が犯人だと言う証拠なら、ありますよ」

「なッ!? ば、バカを言っちゃいけない。
 ちなみに聞きたいんだが、どうしてそう思うんだい?」

「良いでしょう、お聞かせしましょう。俺の推理を」



「ジョンさん、あなたはこの水密扉の中に入って、艦長が殺されるまでの間、一体どこに居ましたか?」

「俺は、格納庫の中で、この機体のチェックをしていたところだよ」

 そう言ってジョンは、真っ赤な嘘をついて白を切る。

「では、艦長が殺されるまでの間、一度も外には出ていないと?」

「決まってるだろ? 俺はその時、この格納庫の中に居たんだから」

「それであの姉妹の悲鳴を聞きつけて、あなたは艦尾までやって来たと?」

「あぁ、それ以外にない。勿論だとも」

「では、ジョンさん、あなたに一つだけお伺いしますが、何故その時、この格納庫の中に居たと言うあなたのズボンに、水滴がついているんです?」

「なっ!?」

 そう言われてジョンは、自分の足元のズボンに視線を落とす。
 そのズボンの袖に付着しているのは、言うまでもなく海水だ。

「こっ、これは!!」

「しかも見たところ、その水滴は恐らく海水。
 そして、まだ付着してから、さして時間は経っていない真新しい水です」

 乾ききっていないズボンの袖を、足を動かして拭い去ろうとし、

「さ、さっきシャワーを浴びていたから、多分その時じゃないのかな?」

 首を傾げてしらばっくれるジョンは、嘘をついて逃げようとする。

「だ、大体、ズボンの袖に海水がついていたからと言って!!
 どうして、それで俺が犯人になる!!
 俺が、艦長を殺す理由なんて、どこにもないッ!!
 こんなのは、ただの言いがかりだ!!」

 今度は逆ギレをして癇癪を起こしたジョンは、自分の嘘がバレることに腹を立てているらしい。

「いいえ、言いがかりなんかじゃありませんよ。
 それに証拠なら、他にもあります。
 貴方が犯人だと言うーー決定的な証拠がねッ!!」

 そう言って堂々と不敵に微笑んだ俺に、ジョンは動揺を顕にしてガッと大きく口を開いて仰け反る。

「い、言ってみろ!! 俺が犯人だと言う証拠をッ!!
 も、もし間違っていたら、俺はお前をただでは済まさないッ!!」

「ーー良いでしょう。
 では、これから貴方が犯人だと言う証拠を、洗いざらいにしてしまいましょう」

 ジョンが犯人だと言う決定的な証拠、それはジョン自身が39話で口にしている。
 
「思い出しても見てください。
 あなたが艦尾にやって来た時のことを」

「艦尾だと? だから!!
 俺はその時、シャワーを浴びていたから、艦内に居たと言っているだろう!!」

「そうです。シャワーはともかく、確かにあなたは艦内に居た。
 それは俺もハッキリと確認しています。あなたが水密扉のバルブを内側から締め、しっかりと施錠をした上で艦内にこもっているのを」

「ほら見ろ!! やっぱりそうなんじゃないか!!
 バカバカしい!! これ以上は時間の無駄だ!!
 俺は帰らせて貰う!!」

 そう言って憤慨した様子で階段のほうまで歩いて行こうとするジョンに、俺は背後から証拠を突きつける。

「では、どうしてあなたは、艦長が何者かに海に突き落とされたと知っていたんです?」

 そこでジョンの足がぴくりと止まる。

「普通に考えれば、艦内に居たあなたが、当時の状況なんて知る由もありません。
 それなのに、あなたは、確かに言った。
 一体、誰が艦長を海になんか突き落としたんだと。
 どうして……あなたが、そのことをご存知だったんです?
 ひょっとしたら海に落ちたのは、艦長自身の不注意だった可能性もある筈なのに……」

「そ、それは……何となく、あの時の姉妹の悲鳴から察して、なにか事件の臭いがしたから……」

「本当にそうでしょうか?
 あなたは、知っていたんじゃないですか?
 あの時、艦長が、誰に、どうやって落とされたのかを……」

「ーーで、デタラメだ!! だ、大体!! 俺が仮に犯人だとして、どうやって船内から、艦長を突き落とすんだ!!
 それに、君も言っていただろう!!
 海の中には、アークシャークの群れが居たと!!
 艦長の直接の死因は、あのアークシャークじゃないか!!」

「えぇ、確かに直接の死因になっているのは、あのアークシャークによる噛み傷だ。
 けれどジョンさん、ある方法を使えば、アークシャークを故意に呼び寄せることは可能なんですよ」

「それも……俺がやったと言いたいのか?」

 静かに問いかけて来たジョンに、俺はまっすぐと首を縦に頷かせる。

「トリックはこうです。まず、あなたは水密扉のバルブを内側からひねり施錠した後、あたかも自分が船内に居たように思わせるアリバイ作りに成功した。
 そうすればあなたは容疑者から外れて、まず疑われることはないでしょう。
 だけど、真実は異なる。この格納庫に置かれている、あのエイ型の頭部を有した魔導戦機を用いれば、この格納庫から水中へと出ることは出来ます。
 これが、密室トリックの謎でしょう。
 続いてあなたは、そうして魔導戦機を使って水中へと飛び出した後、ある物を使って艦長を背後から突き落とすことに成功させた。
 そして、そのある物とは」

 そう言って俺は、視線を配らし、先ほど船床で見かけた丸ノコへと目を向ける。
 ジョンも釣られて目を向ける。

「その丸ノコが、一体全体、何だって言うんだ!!
 そんな物で艦長を突き落としたとでも言うのか!!」

「いいえ? 勿論、こんな丸ノコでは、艦長を背後から突き落とすなんて、投げでもしない限り不可能だ」

 そう言って俺は、丸ノコについている充電ケーブルへと目を向ける。

「だが、もしその投げ入れる物が本体ではなく、ケーブルのような線状の物だったら、どうでしょう?
 そうーー例えばこの魔導戦機の背後に取り付けられている、旧式の機体ならではの充電ケーブルだったとしたら?」

 俺がそう言ってジョンに推理を披露すると、ジョンは顔を俯かせて青ざめている。
 犯人を推理で追い詰めるまで、もうあと少しのところだ。

「あなたは、魔導戦機を使って水中へと飛び出した後、恐らくこの充電ケーブルを用いたんでしょう。
 ケーブルの途中で輪っかを作り、水中から輪投げのような要領で、艦尾のデッキに立っていた艦長にめがけて引っ掛けた!!
 艦長の背中についていたあの広い打撲痕は、恐らくその時についた物でしょう」

「し、しかし、アークシャークの群れは!?
 海の中に居たアークシャークを、おびき寄せるトリックはどうする!?」
 確かにそれなれば、海の中からでも犯行は可能なのかも知れない!!
 ーーだがッ!! 肝心のアークシャークを呼び寄せることなんね、出来っこないじゃないかッ!!」

「それが出来るんですよ」

 いつまでも逃げ切ろうとするジョンに、俺はそちらのトリックも続けて推理を披露する。

「格納庫から魔導戦機を動かして海に潜る際、この格納庫の床はどうなります?
 そして、もしその床の一面に、撒き餌になるようなばら撒かれて置かれていたとしたら?」

「……ッ」

 俯いて黙り込んでしまったジョンに、俺は引導を渡して楽にしてやる推理を繰り出す。

「ジョン、海水はね? あなたのズボンに付着したからと言って、赤くはならないんですよ?」

 そう言って俺は、再びジョンのズボンに指を指す。
 そこに見えるジョンのズボンの袖には、確かに薄っすらと赤い色が滲んでいる。

「もし、まだ俺の推理が気に入らないようなら、あなたの手で押してみてください。
 この床に魚の撒き餌をあらかじめ敷き詰めた状態で、格納庫のゲートを開くと、一体水中の中で何が集まって来るのかを」

 完全にすべてのトリックを見破られてしまったジョンは、「はぁ」とため息を深く吐き出して、格納庫の天井を見上げていた。

「あの人の背中を超えたかったんだ」

「それが、今回の事件の動機ですか?」

「あぁ、俺はあの人の背中をいつだって追いかけていた……」

 これより語られるのは、ジョンが艦長を殺すことになったその動機。
 俺がどれだけ知恵を振り絞っても、結局最後まで辿り着くことが出来なかった、彼のみが知るこの事件の真実だ。
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