あなたの遺伝子、ください

志藤みかづき

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小話

【小話】宝物の在り処

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 純白の白衣を着て、金色のポニーテルを揺らしながらメイは足早に歩いていた。


 ―――ホント、思ってたより悪くないみたいじゃない。


  今日はとある人物の意外な一面を垣間見ることができた。
 アインヘルツの庭で見かけた、あの赤い目の白い毛玉。
 メイが気がつくと白い毛玉は視線から逃げるように空に舞い上がって消えた。
 あの配色の毛玉の持ち主を、メイの知る限りで一人しかいない

「お綺麗な顔してやることがゲスいあのリュイがねえ」

 アインヘルツの屋敷から徒歩で自宅に帰りながら、メイは指先を頬に添えてにんまりとする。

 冷めた目で愛だの恋だの信じていなかったリュイ。
 これまで噂に聞き、遠目で見るだけの関わりしかメイはなかった。
 既に自分だけの可愛い子がいるメイからすれば、他人事ながらリュイは本当にこの世界の男なのかと逆に心配になったものだ。

「それが物陰から自分の可愛い子を見守っているなんて。カワイイところあるんじゃない。あとは、そうね。ほかの男に自分の可愛い子が囲われているだなんて、リュイが耐えられるのかしら」

 トウコクンの体のためにも、リュイがまともな形で、素直に現れてくれればいいと医者として願うばかり。
 もしリュイと同じ立場なら愛すべき可愛い子と離れるなんて考えられない。
 今は肉体関係がなくても、囲われている事実だけで暴走してしまう。

「ワタシなら、ワタシの可愛い子が他の男の目に入るだけでも許せないわ。麻酔なしで目玉を摘出してやるくらいのご挨拶は必須ネ」

 平和な街を歩けば、あちらこちらでパートナーと連れ立つ姿が見られる。
 よく似た顔の子どもを連れた夫婦の何組かがメイに手を振ってくれるので、振り返す。


 ――――無理。無理よ、無理無理。信じられない、耐えられない。自分の女を外に出して、男に見せられるとか、コイツら正気か?


 医者らしく愛想のよい笑顔を振りまきながら、メイは内心で思わず素をだし吐き散らかす。


 メイ自身が女の真似事をし始めたのは、メイの可愛い子―――妻のためだった。
 彼女はこの世界に来た時から男性恐怖症だった。元の世界でつらいことがあったのだろう。
 小動物のように庇護欲をそそられる可愛い子。そそられすぎて、いじめすぎてしまいそうになる。
 女性はみんな髪が長いという世界から来たのか、仕事が忙しく髪を切るのをおろそかにしていたメイのことを、男性だけど男性らしくないと心を開いてくれた。さらに口調を女っぽくしてみれば、よりメイ自身のことを好いてくれた。
 これがきっかけとなって、今のメイは形成された。
 意外とハマって、女みたいに振る舞うのが楽しくなったのもあるが。
 美しい自分が罪深いとさえ、メイは思う。

「ワタシなら大切なものは外に出さないわ」

 <あらゆる薬を調合する素質>で作製した薬を使って、身体の自由を奪って、メイ以外のだれにも会わせないように閉じ込めている。

「外に出すから逃げられちゃうのよ?リュイ」

 だから、メイの可愛い子は今日も診療所兼自宅の地下でひとり、メイの帰りを待っている。
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