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初めての視察
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リビングにて。
ラルフ・クリーヴランドが腕を組み、じっと僕を見つめていた。
男爵領主であり、魔族を討伐して爵位を得た男。
厳格な父さんの、戦場を知る人間の目だった。
「アーサー、明日、私と村へ行くぞ。」
突然の言葉に、飲んでいた紅茶を吹きそうになる。
「……え? 村?」
「領地の視察だ。」
父さんの声は短く、けれど重い。
「僕が行っても、ただの邪魔にしかならない気がするんだけど……。」
「そうかもしれん。だが、知ることに意味がある。」
その一言に、反論しづらくなる。
「へえ、アーサーが村に? 面白そうじゃない?」
姉さんがソファでくつろぎながらニヤニヤしてる。
「どうせ退屈な話ばかりでしょ。」
「もしかしたら魔物とか出るかもよ?」
「それ、小説の話だから!!」
姉さんの茶化しに、思わず肩をすくめた。
「村の視察は、ただの見学じゃないよ。」
読書をしていた金髪の少年が、静かに顔を上げた。
「村人たちの生活を知ることは、僕たち貴族にとって大切なことだよ。」
本を閉じる音が、リビングに小さく響く。
クリス・クリーヴランド。十一歳にしてすでに大人びた雰囲気をまとい、温和で理知的な兄。
(……貴族、ね。)
僕はテーブルに肘をつき、少し考える。
「まあ、行ってみてもいいかな。」
翌朝。
「アーサー様、もう時間です。」
カレンの冷静な声と共に、容赦なく布団を剥がされた。
寒さに震えながら、しぶしぶ起き上がる。
リビングでは父さんが地図を見ていて、姉さんがニヤニヤしながら見送っていた。
「ちゃんと役に立つことしてきなさいよ?」
「うっさいなぁ……。」
ゴドフリーが弁当の籠を渡してくる。
「好き嫌いすんなよ。」
「わかってるって。」
玄関前で、レナが手を差し出してきた。
「アーサー様、これを忘れていませんか?」
手渡されたのは、小さなハンカチと水筒。
「あ、ありがと。」
「しっかりしてくださいね?」
そう言いながら、レナはクスクス笑う。
(なんだよ……みんなして。)
馬車に乗り込み、父さんも後に乗った。
村への道が広がり、家族が見送る姿が小さくなっていく。
(村の視察か……めんどくさいなぁ。でも、行けば何かあるかもしれないし。)
そう心の中で呟きながら、僕は窓の外を眺めた。
馬車は砂利道を進みながら、緩やかに揺れていた。
窓からは広がる草原と、遠くにぽつぽつと並ぶ村の家々が見える。
「もうすぐ村か……意外と大きいんだね。」
「500人ほどが暮らしているからな。」
父さんは馬車の隣で地図を広げながら答える。
「エルムウッドの森」の近くに位置するこの村は、貴族の領地の中ではそこそこの規模らしい。
「畑仕事とか、村人たちは大変じゃないの?」
「楽ではないだろうが、彼らの誇りでもある。お前も今日はしっかりと見てこい。」
それにしても、村のそばに森があるのはちょっと気になる。
以前こっそり魔法の練習をしていたけれど、もし村人が森で魔物に襲われることがあるとしたら――
(……いや、さすがにそこまで危険な森じゃないよな。)
そんなことを考えているうちに、村の入り口が見えてきた。
窓際に座って頬杖をつきながら、ぼんやりと外の景色を眺めていた。
見えてきたのは木々の間に整然と並ぶ家々と、その奥に広がる畑。
村の広場には何やら忙しそうに動き回る人々の姿が見える。
「ずいぶん近づいてきたな。あれが村だ。」
父さんが前を指さす。その言葉を聞いて窓に顔を近づけ、少しだけ興味が湧いてきた。
「へえ、意外と立派じゃん。」
そんな感想が自然と口をついて出る。
村の広場を歩く村人たちの姿は、思ったよりも活気にあふれていた。
馬車が止まると、そこには村長をはじめ、数人の村人が出迎えに立っていた。
特に目を引いたのは、立派な口ひげをたくわえた村長の姿だった。
にこやかな笑顔を浮かべながら馬車に近づいてくる。
「おお、ラルフ様、それに……こちらがアーサー様ですね。」
馬車を降りると、村長が父さんに続いてこちらに頭を下げた。
その目が自分に向けられると、思わず背筋が伸びる。
「そうだ。今日は息子を連れて視察に来た。いろいろと教えてくれると助かる。」
父さんがそう言いながら肩を軽く叩く。村長の挨拶に、なんとかぎこちなく返事をした。
「ど、どうも。」
声が少し震えていなかったかと、自分で気になった。
「ラルフ様のお子様とあって、立派なお方ですね。」
褒められると、反射的に手を振って否定した。
「いやいや、僕はただの……っていうか、立派かどうかはちょっと怪しいかも。」
なんとか冗談めかして返してみたが、村長の柔らかな表情は変わらなかった。
村長の後ろには、鍛冶屋らしい大柄な男が腕を組みながら立っていた。
その視線がこちらをじっと見つめているのを感じる。
「兄上や姉上の視察の際にもお会いしましたが、また違った雰囲気の方で……興味深いですね。」
その落ち着いた声に、どう返していいのか迷ってしまい、「どうも」と短く答えた。
さらに、食堂のエプロン姿の女性が、にこやかな笑顔でこちらを覗き込む。
「まあまあ、こんなに若くて可愛い子が来てくれるなんて! ぜひうちの食堂にも寄っていってね。」
その陽気な言葉に、苦笑いを浮かべながら適当に返した。
「それは楽しみです。」
村人たちの温かい歓迎に、少しずつ緊張がほぐれていく。
広場を歩く人々や、馬車を興味津々に覗き込む子どもたちの姿を見ていると、自然と気持ちが軽くなってきた。
「ラルフ様、アーサー様、村の中心部を少しご案内しましょう。」
村長の提案に父さんが頷く。
歩き始めると、村人たちが手を振ってくれるのが見える。
穏やかで、温かい雰囲気に包まれたこの村の空気は、どこか新鮮だった。
「それでは、行くか、アーサー。」
父さんの言葉に軽く返事をして、一緒に歩き出した。
村人たちの生活に触れる中で、ふと考える。
(こういう村での暮らしって、案外悪くないかもな。でも……自分が何か役に立てることなんてあるんだろうか。)
その疑問は胸の奥に引っかかりながらも、これからどんな景色が待っているのかへの期待に少しだけ心が躍る。
馬車から降りると、木造の小さな教会が目の前に現れた。
周りには花壇が広がり、村の人々が心を込めて手入れしていることがわかる。
優しい空気が漂っていて、どことなく気が抜けるような場所だった。
「ここが村の教会か。」
女神像を見上げながらぼんやりと言葉を漏らす。
「意外と落ち着いた雰囲気だね。もっと豪華なのを想像してたけど。」
隣に立つ父さんに向けて呟いた。自分でも、少し失礼だったかなと思う。
「豪華さではなく、心が落ち着くことが大事なんだ。」
父さんの言葉に、なんとなく納得しつつも、そのままふわっとした気分で扉を押した。
扉の軋む音と一緒に、中の静けさがじわりと耳に届いてくる。
なんだか落ち着きすぎて、少し眠くなりそうだった。
中には年配の神父と若いシスターがいて、にこやかに迎えてくれる。
「ラルフ様、それにアーサー様も、ようこそお越しくださいました。」
深々と頭を下げる神父に、こちらも軽く頭を下げる。
「お邪魔します。」
一応、礼儀として言葉を返すが、あまり慣れていない感じが自分でも分かった。
「こういうところ、あんまり来たことがなくてさ。」
「それでも歓迎いたしますよ。この村の教会は誰にでも開かれていますから。」
神父の柔らかな笑みに、少しホッとする。構えなくてもよさそうだな、と思う。
シスターが控えめに前に出てきた。
「アーサー様、旅のお疲れが少しでも癒えるようにと、教会の掃除を入念にしておりました。どうぞ、ゆっくりしていってください。」
「ありがとう、でも、そんなに気を遣わなくても……。」
自然と口から出たのは、いつもの気楽な調子の言葉だった。
特別扱いはどうも落ち着かない。
教会の中を歩いて祭壇の前に立つと、中央の女神像が目に入った。
その美しさに一瞬見入るが、すぐにふわっとした気分が戻ってくる。
(……まあ、こういうのもたまにはいいのかな。)
心の中でつぶやきながら、軽く頭を下げてみる。
深い意味はないけど、なんとなくやった方がいい気がしたからだ。
その瞬間、像がほんのりと光を放った。
「……え?」
何かの見間違いだろうか。いや、でも確かに見えた。心の中がざわざわする。
「……アーサー様?」
隣からシスターの声が聞こえてくるが、どう返せばいいのか一瞬迷う。
「いや、なんでもないよ。ただ、すごい像だなと思ってさ。」
特に意味はないけど、適当に答えを返した。
再び静寂が戻った教会の中、胸の中には妙な感覚が残っていた。
何だったんだろう。考えるのが面倒になって、「まあいいか」と心の中で呟く。
次の目的地へ向かう馬車に乗り込むと、ふと先ほどの教会での出来事が頭をよぎった。
あの柔らかな光のことを思い出すと、なんとなく口元が緩んでしまう。
(なんだったんだろうな、あれ。ま、考えても分かるわけないか。)
軽く肩をすくめて外の景色に目を向けると、村の鍛冶場が見えてきた。
馬車を降りると、目の前には赤々と燃える炉。鉄を打つ力強い音が響く。
鍛冶職人のエリオット・ストーンが腕を組みながらこちらを見ていた。
「ラルフ様、アーサー様、ようこそ。」
エリオットの分厚い手と、がっしりとした体格を見て、思わず目を丸くする。
「すごい腕だね……」ぽろっと口にすると、エリオットが微笑んだ。
「鍛冶仕事をしていると、自然とこうなるものです。」
(鍛冶仕事って大変なんだな……)
炉の熱気を感じながら、村人たちの暮らしに思いを巡らせた。
ラルフ・クリーヴランドが腕を組み、じっと僕を見つめていた。
男爵領主であり、魔族を討伐して爵位を得た男。
厳格な父さんの、戦場を知る人間の目だった。
「アーサー、明日、私と村へ行くぞ。」
突然の言葉に、飲んでいた紅茶を吹きそうになる。
「……え? 村?」
「領地の視察だ。」
父さんの声は短く、けれど重い。
「僕が行っても、ただの邪魔にしかならない気がするんだけど……。」
「そうかもしれん。だが、知ることに意味がある。」
その一言に、反論しづらくなる。
「へえ、アーサーが村に? 面白そうじゃない?」
姉さんがソファでくつろぎながらニヤニヤしてる。
「どうせ退屈な話ばかりでしょ。」
「もしかしたら魔物とか出るかもよ?」
「それ、小説の話だから!!」
姉さんの茶化しに、思わず肩をすくめた。
「村の視察は、ただの見学じゃないよ。」
読書をしていた金髪の少年が、静かに顔を上げた。
「村人たちの生活を知ることは、僕たち貴族にとって大切なことだよ。」
本を閉じる音が、リビングに小さく響く。
クリス・クリーヴランド。十一歳にしてすでに大人びた雰囲気をまとい、温和で理知的な兄。
(……貴族、ね。)
僕はテーブルに肘をつき、少し考える。
「まあ、行ってみてもいいかな。」
翌朝。
「アーサー様、もう時間です。」
カレンの冷静な声と共に、容赦なく布団を剥がされた。
寒さに震えながら、しぶしぶ起き上がる。
リビングでは父さんが地図を見ていて、姉さんがニヤニヤしながら見送っていた。
「ちゃんと役に立つことしてきなさいよ?」
「うっさいなぁ……。」
ゴドフリーが弁当の籠を渡してくる。
「好き嫌いすんなよ。」
「わかってるって。」
玄関前で、レナが手を差し出してきた。
「アーサー様、これを忘れていませんか?」
手渡されたのは、小さなハンカチと水筒。
「あ、ありがと。」
「しっかりしてくださいね?」
そう言いながら、レナはクスクス笑う。
(なんだよ……みんなして。)
馬車に乗り込み、父さんも後に乗った。
村への道が広がり、家族が見送る姿が小さくなっていく。
(村の視察か……めんどくさいなぁ。でも、行けば何かあるかもしれないし。)
そう心の中で呟きながら、僕は窓の外を眺めた。
馬車は砂利道を進みながら、緩やかに揺れていた。
窓からは広がる草原と、遠くにぽつぽつと並ぶ村の家々が見える。
「もうすぐ村か……意外と大きいんだね。」
「500人ほどが暮らしているからな。」
父さんは馬車の隣で地図を広げながら答える。
「エルムウッドの森」の近くに位置するこの村は、貴族の領地の中ではそこそこの規模らしい。
「畑仕事とか、村人たちは大変じゃないの?」
「楽ではないだろうが、彼らの誇りでもある。お前も今日はしっかりと見てこい。」
それにしても、村のそばに森があるのはちょっと気になる。
以前こっそり魔法の練習をしていたけれど、もし村人が森で魔物に襲われることがあるとしたら――
(……いや、さすがにそこまで危険な森じゃないよな。)
そんなことを考えているうちに、村の入り口が見えてきた。
窓際に座って頬杖をつきながら、ぼんやりと外の景色を眺めていた。
見えてきたのは木々の間に整然と並ぶ家々と、その奥に広がる畑。
村の広場には何やら忙しそうに動き回る人々の姿が見える。
「ずいぶん近づいてきたな。あれが村だ。」
父さんが前を指さす。その言葉を聞いて窓に顔を近づけ、少しだけ興味が湧いてきた。
「へえ、意外と立派じゃん。」
そんな感想が自然と口をついて出る。
村の広場を歩く村人たちの姿は、思ったよりも活気にあふれていた。
馬車が止まると、そこには村長をはじめ、数人の村人が出迎えに立っていた。
特に目を引いたのは、立派な口ひげをたくわえた村長の姿だった。
にこやかな笑顔を浮かべながら馬車に近づいてくる。
「おお、ラルフ様、それに……こちらがアーサー様ですね。」
馬車を降りると、村長が父さんに続いてこちらに頭を下げた。
その目が自分に向けられると、思わず背筋が伸びる。
「そうだ。今日は息子を連れて視察に来た。いろいろと教えてくれると助かる。」
父さんがそう言いながら肩を軽く叩く。村長の挨拶に、なんとかぎこちなく返事をした。
「ど、どうも。」
声が少し震えていなかったかと、自分で気になった。
「ラルフ様のお子様とあって、立派なお方ですね。」
褒められると、反射的に手を振って否定した。
「いやいや、僕はただの……っていうか、立派かどうかはちょっと怪しいかも。」
なんとか冗談めかして返してみたが、村長の柔らかな表情は変わらなかった。
村長の後ろには、鍛冶屋らしい大柄な男が腕を組みながら立っていた。
その視線がこちらをじっと見つめているのを感じる。
「兄上や姉上の視察の際にもお会いしましたが、また違った雰囲気の方で……興味深いですね。」
その落ち着いた声に、どう返していいのか迷ってしまい、「どうも」と短く答えた。
さらに、食堂のエプロン姿の女性が、にこやかな笑顔でこちらを覗き込む。
「まあまあ、こんなに若くて可愛い子が来てくれるなんて! ぜひうちの食堂にも寄っていってね。」
その陽気な言葉に、苦笑いを浮かべながら適当に返した。
「それは楽しみです。」
村人たちの温かい歓迎に、少しずつ緊張がほぐれていく。
広場を歩く人々や、馬車を興味津々に覗き込む子どもたちの姿を見ていると、自然と気持ちが軽くなってきた。
「ラルフ様、アーサー様、村の中心部を少しご案内しましょう。」
村長の提案に父さんが頷く。
歩き始めると、村人たちが手を振ってくれるのが見える。
穏やかで、温かい雰囲気に包まれたこの村の空気は、どこか新鮮だった。
「それでは、行くか、アーサー。」
父さんの言葉に軽く返事をして、一緒に歩き出した。
村人たちの生活に触れる中で、ふと考える。
(こういう村での暮らしって、案外悪くないかもな。でも……自分が何か役に立てることなんてあるんだろうか。)
その疑問は胸の奥に引っかかりながらも、これからどんな景色が待っているのかへの期待に少しだけ心が躍る。
馬車から降りると、木造の小さな教会が目の前に現れた。
周りには花壇が広がり、村の人々が心を込めて手入れしていることがわかる。
優しい空気が漂っていて、どことなく気が抜けるような場所だった。
「ここが村の教会か。」
女神像を見上げながらぼんやりと言葉を漏らす。
「意外と落ち着いた雰囲気だね。もっと豪華なのを想像してたけど。」
隣に立つ父さんに向けて呟いた。自分でも、少し失礼だったかなと思う。
「豪華さではなく、心が落ち着くことが大事なんだ。」
父さんの言葉に、なんとなく納得しつつも、そのままふわっとした気分で扉を押した。
扉の軋む音と一緒に、中の静けさがじわりと耳に届いてくる。
なんだか落ち着きすぎて、少し眠くなりそうだった。
中には年配の神父と若いシスターがいて、にこやかに迎えてくれる。
「ラルフ様、それにアーサー様も、ようこそお越しくださいました。」
深々と頭を下げる神父に、こちらも軽く頭を下げる。
「お邪魔します。」
一応、礼儀として言葉を返すが、あまり慣れていない感じが自分でも分かった。
「こういうところ、あんまり来たことがなくてさ。」
「それでも歓迎いたしますよ。この村の教会は誰にでも開かれていますから。」
神父の柔らかな笑みに、少しホッとする。構えなくてもよさそうだな、と思う。
シスターが控えめに前に出てきた。
「アーサー様、旅のお疲れが少しでも癒えるようにと、教会の掃除を入念にしておりました。どうぞ、ゆっくりしていってください。」
「ありがとう、でも、そんなに気を遣わなくても……。」
自然と口から出たのは、いつもの気楽な調子の言葉だった。
特別扱いはどうも落ち着かない。
教会の中を歩いて祭壇の前に立つと、中央の女神像が目に入った。
その美しさに一瞬見入るが、すぐにふわっとした気分が戻ってくる。
(……まあ、こういうのもたまにはいいのかな。)
心の中でつぶやきながら、軽く頭を下げてみる。
深い意味はないけど、なんとなくやった方がいい気がしたからだ。
その瞬間、像がほんのりと光を放った。
「……え?」
何かの見間違いだろうか。いや、でも確かに見えた。心の中がざわざわする。
「……アーサー様?」
隣からシスターの声が聞こえてくるが、どう返せばいいのか一瞬迷う。
「いや、なんでもないよ。ただ、すごい像だなと思ってさ。」
特に意味はないけど、適当に答えを返した。
再び静寂が戻った教会の中、胸の中には妙な感覚が残っていた。
何だったんだろう。考えるのが面倒になって、「まあいいか」と心の中で呟く。
次の目的地へ向かう馬車に乗り込むと、ふと先ほどの教会での出来事が頭をよぎった。
あの柔らかな光のことを思い出すと、なんとなく口元が緩んでしまう。
(なんだったんだろうな、あれ。ま、考えても分かるわけないか。)
軽く肩をすくめて外の景色に目を向けると、村の鍛冶場が見えてきた。
馬車を降りると、目の前には赤々と燃える炉。鉄を打つ力強い音が響く。
鍛冶職人のエリオット・ストーンが腕を組みながらこちらを見ていた。
「ラルフ様、アーサー様、ようこそ。」
エリオットの分厚い手と、がっしりとした体格を見て、思わず目を丸くする。
「すごい腕だね……」ぽろっと口にすると、エリオットが微笑んだ。
「鍛冶仕事をしていると、自然とこうなるものです。」
(鍛冶仕事って大変なんだな……)
炉の熱気を感じながら、村人たちの暮らしに思いを巡らせた。
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