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その瞬間、世界が白一色に染まった。
卒業パーティーの日、アレクサンドラは私室から出なかった。
ゲームでは、悪役令嬢が攻略対象者から断罪され、婚約破棄をされる。ロイドルートでは即その場で国外追放も命じられていた。
「何もないとは思うけど…」
もしかしたら、とアレクサンドラは考える。
断罪の場面でリザ様と私が入れ替わる、とか。ないとは思うけど、絶対じゃないものね。
ソファに座るが落ち着かない。勉強も読書も刺繍にも集中できない。お茶も味を感じなかった。
そわそわしながら時間を過ごしていると、突然強い光を感じた。
眩しい!
眼をぎゅっと瞑る。瞼に当たる光が弱まったのを感じて眼を開けた。
目の前にロイドが居た。黒い夜会服。跪き、黒いドレスの女性を抱き起している。
周りを見回すと着飾った人たちが倒れている。
どうやら、私の姿は見えていないみたいね。
「リザ」
ロイドが黒いドレスの女性に呼び掛ける。
あの子がリザ・クロフォード?
アレクサンドラはロイドとリザにそっと近付く。やはりあちらからアレクサンドラは見えていないし、気配も感じないようだ。
ロイドの腕の中でリザが眼を開けた。
リザのつぶらな瞳、茶色の髪、間違いない。これはワイダラー家の血筋だ。
初めて目の前で見たロイドはリザを嫌っている風ではなかった。
…ローズはどこ?
アレクサンドラはふわりと浮かび上がると卒業パーティーの会場である講堂の中を見渡す。
ピンクの髪の毛の子はいないわね…
「ローズは?…まさか逃げた…?」
リザがロイドに問い掛ける。
「いや…消えた」
ロイドがそう言った時、アレクサンドラの視界がぐにゃりと歪んた。
ふと気付くと、光を感じる前と同じように私室のソファに座っていた。
辺りはしんと静まり返っている。
「ここも?」
先程見た講堂のように皆倒れているのだろうか?
アレクサンドラは部屋を出ると姉リズの部屋に入る。リズは白いシフォン生地に刺繍をしながらソファに倒れたらしい。
「そっか、お姉様一年後に結婚式だものね」
リズは一年後、辺境伯騎士団員で、隣の領地の伯爵家の次男に嫁ぐ事が決まっている。今はベールに刺繍をしていたようだ。
侍女も隣の部屋で倒れている。
「脈はあるし、息もしてるけど…これからどうなるのかしら?」
リズの顔を眺める。さっき見たリザとよく似た顔立ちだ。
じゃあリザの家族は私に似てるのかな?
パチン
と音がして、静まり返っていた世界に音が戻って来た。
「アレクサンドラ様、お茶を入れ替えましょうか?」
侍女が何事もなかった様子で部屋に入って来る。
「そうね」
ローズはどうなったの?ロイドとリザは?
侍女はアレクサンドラの前に紅茶を置くと、部屋を出て行く。
ドアが閉まったと同時に男性の姿がアレクサンドラの前に浮かび上がった。
「ひゃっ!?…あ!ランドルフ!?」
アレクサンドラの前には生徒会長のランドルフが立っていた。
「私はランドルフの姿を借りたゲーム管理人です。やはりアレクサンドラはこのゲームをプレイした事があるんですね」
「ゲームマスター?」
「はい。ここはゲームの世界から現実世界となったので転生者であるアレクサンドラに状況説明に来ました」
-----
ランドルフはロイドとローズ、アレクサンドラをゲームに配置したと言う。するとアレクサンドラが生まれて来る時、ロイドが強い意志でリザを自分の近くへと引っ張ったため、リザとアレクサンドラは入れ替わって生まれたと言った。
ロイドとリザには前世で因縁があったらしい。
転生者にはゲームの強制力が働かないので、ロイドはローズを好きにはならなかった。
そしてリザを「排除」しようと攻略対象者を唆した結果、ローズはクリストファーから罪を告発され、ゲームをリセットしたと言う。
「攻略対象者がヒロインを告発するなんて展開も初めてでワクワクしましたよ」
ランドルフはニコニコしながら言う。
「じゃあ私のせいでリザが侯爵家に生まれた訳じゃないのね?」
「ええ。むしろロイドがリザさんを引っ張ったせいでアレクサンドラがこちらに生まれたんです」
「そう。良かった…」
私のせいでリザに過酷な運命を背負わせたんじゃなくて、良かった。アレクサンドラはほっと息を吐いた。
ローズはゲームをリセットしてしまったので、この世界からは消えたと言う。
皆の記憶はローズは殺害教唆の罪で国外追放となったと改変されたとランドルフは言い残し、アレクサンドラの前から消えた。
「消えた…」
テーブルに目をやると、紅茶が淹れたてのように湯気を上げている。時間が止まっていたのかとアレクサンドラは思った。
普通はリセットされると世界は消え去ってしまうらしい。
気付かぬ間に自分も周りも全て消え去るなんて…ぞっとする話だわ。
この世界が現実世界となる、かあ…
これでアレクサンドラが王都に行ったとしても、ゲームに巻き込まれる事はなくなったのだ。
その瞬間、世界が白一色に染まった。
卒業パーティーの日、アレクサンドラは私室から出なかった。
ゲームでは、悪役令嬢が攻略対象者から断罪され、婚約破棄をされる。ロイドルートでは即その場で国外追放も命じられていた。
「何もないとは思うけど…」
もしかしたら、とアレクサンドラは考える。
断罪の場面でリザ様と私が入れ替わる、とか。ないとは思うけど、絶対じゃないものね。
ソファに座るが落ち着かない。勉強も読書も刺繍にも集中できない。お茶も味を感じなかった。
そわそわしながら時間を過ごしていると、突然強い光を感じた。
眩しい!
眼をぎゅっと瞑る。瞼に当たる光が弱まったのを感じて眼を開けた。
目の前にロイドが居た。黒い夜会服。跪き、黒いドレスの女性を抱き起している。
周りを見回すと着飾った人たちが倒れている。
どうやら、私の姿は見えていないみたいね。
「リザ」
ロイドが黒いドレスの女性に呼び掛ける。
あの子がリザ・クロフォード?
アレクサンドラはロイドとリザにそっと近付く。やはりあちらからアレクサンドラは見えていないし、気配も感じないようだ。
ロイドの腕の中でリザが眼を開けた。
リザのつぶらな瞳、茶色の髪、間違いない。これはワイダラー家の血筋だ。
初めて目の前で見たロイドはリザを嫌っている風ではなかった。
…ローズはどこ?
アレクサンドラはふわりと浮かび上がると卒業パーティーの会場である講堂の中を見渡す。
ピンクの髪の毛の子はいないわね…
「ローズは?…まさか逃げた…?」
リザがロイドに問い掛ける。
「いや…消えた」
ロイドがそう言った時、アレクサンドラの視界がぐにゃりと歪んた。
ふと気付くと、光を感じる前と同じように私室のソファに座っていた。
辺りはしんと静まり返っている。
「ここも?」
先程見た講堂のように皆倒れているのだろうか?
アレクサンドラは部屋を出ると姉リズの部屋に入る。リズは白いシフォン生地に刺繍をしながらソファに倒れたらしい。
「そっか、お姉様一年後に結婚式だものね」
リズは一年後、辺境伯騎士団員で、隣の領地の伯爵家の次男に嫁ぐ事が決まっている。今はベールに刺繍をしていたようだ。
侍女も隣の部屋で倒れている。
「脈はあるし、息もしてるけど…これからどうなるのかしら?」
リズの顔を眺める。さっき見たリザとよく似た顔立ちだ。
じゃあリザの家族は私に似てるのかな?
パチン
と音がして、静まり返っていた世界に音が戻って来た。
「アレクサンドラ様、お茶を入れ替えましょうか?」
侍女が何事もなかった様子で部屋に入って来る。
「そうね」
ローズはどうなったの?ロイドとリザは?
侍女はアレクサンドラの前に紅茶を置くと、部屋を出て行く。
ドアが閉まったと同時に男性の姿がアレクサンドラの前に浮かび上がった。
「ひゃっ!?…あ!ランドルフ!?」
アレクサンドラの前には生徒会長のランドルフが立っていた。
「私はランドルフの姿を借りたゲーム管理人です。やはりアレクサンドラはこのゲームをプレイした事があるんですね」
「ゲームマスター?」
「はい。ここはゲームの世界から現実世界となったので転生者であるアレクサンドラに状況説明に来ました」
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ランドルフはロイドとローズ、アレクサンドラをゲームに配置したと言う。するとアレクサンドラが生まれて来る時、ロイドが強い意志でリザを自分の近くへと引っ張ったため、リザとアレクサンドラは入れ替わって生まれたと言った。
ロイドとリザには前世で因縁があったらしい。
転生者にはゲームの強制力が働かないので、ロイドはローズを好きにはならなかった。
そしてリザを「排除」しようと攻略対象者を唆した結果、ローズはクリストファーから罪を告発され、ゲームをリセットしたと言う。
「攻略対象者がヒロインを告発するなんて展開も初めてでワクワクしましたよ」
ランドルフはニコニコしながら言う。
「じゃあ私のせいでリザが侯爵家に生まれた訳じゃないのね?」
「ええ。むしろロイドがリザさんを引っ張ったせいでアレクサンドラがこちらに生まれたんです」
「そう。良かった…」
私のせいでリザに過酷な運命を背負わせたんじゃなくて、良かった。アレクサンドラはほっと息を吐いた。
ローズはゲームをリセットしてしまったので、この世界からは消えたと言う。
皆の記憶はローズは殺害教唆の罪で国外追放となったと改変されたとランドルフは言い残し、アレクサンドラの前から消えた。
「消えた…」
テーブルに目をやると、紅茶が淹れたてのように湯気を上げている。時間が止まっていたのかとアレクサンドラは思った。
普通はリセットされると世界は消え去ってしまうらしい。
気付かぬ間に自分も周りも全て消え去るなんて…ぞっとする話だわ。
この世界が現実世界となる、かあ…
これでアレクサンドラが王都に行ったとしても、ゲームに巻き込まれる事はなくなったのだ。
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