入替令嬢と最果ての恋人

ねーさん

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 あれから、マークは訓練の休みの日にはよくあの木に登っているようだ。
 アレクサンドラが木に近付くと上から声がする。
「登らないのか?」
「…マークは一人で居たいんじゃないの?」
「俺がアリの居場所に邪魔してるんだから遠慮する事はない」
「じゃあ」
 アレクサンドラは木に登ると、マークより少し下の枝に座る。
「今日は上まで来ないのか?」
 マークがアレクサンドラを覗き込むように下を見ながら言う。
「…スカートだから、ね」
 同じ高さまで登ろうとすれば脚が見えてしまう。
 アレクサンドラは上を向いてマークを見ながら照れたように笑う。
「ああ」
 そうか。と小さく呟いたマークも少し照れている様だ。
 
 それから、ただ黙って二人で遠くを見る。

「マークはいつか国境の向こうへ行きたいの?」
 ローズを探しに?
 アレクサンドラが遠くを見ながら問うと、マークはゆっくりと頷く。
「…ああ」
「そうなんだ…」
 やっぱりマークはここでも塔の上でも、国境の向こうにローズを探しているんだわ。ずっと…

 また静かに時間が過ぎる。

 喋らなくても何だかこうしてると落ち着くな。
 そうアレクサンドラは思った。

-----

「八位?凄いわねマーク」
 考査の結果が届いて、皆で勉強部屋で見る。シンシアがマークの順位を見て声を上げた。
「訓練訓練なのに、いつ勉強してるの?」
 アレクサンドラは後ろから聞こえるシンシアのはしゃいだ声に眉を顰めた。
「アリ?」
 隣からウリエルがアレクサンドラに声を掛ける。
「え?」
「難しい顔して、もしかして今回成績悪かったのか?」
「ううん。十五位だからいつもと同じくらいよ」
「そうか。アリも凄いな」

 リザ、また一位だわ。
 順位表を眺める。四年生になってからの考査は四回目だが、ずっとリザが一位を取っていた。
「ねえマーク、私四十位くらいから頑張っても上がらないのよ。勉強教えてもらえない?」
 シンシアの声が聞こえる。
「…訓練でそんな暇はない」
 アレクサンドラにはマークの声が、嫌そうに聞こえた。
「訓練も休みはあるじゃないか。なあシンシア」
 ウリエルが振り向いて、シンシアを援護するように言う。
「そうよ。お休みの日に一時間でも良いわ」
「……」
 マークがため息を吐く。
「休みには、休みたい。アリに教われば良いだろう?」
 マークはそう言って席を立つと部屋を出て行った。

 嫌だと、言って欲しいからそう聞こえるのかな?

「マーク、冷たいなぁ」
 シンシアが苦笑いしながら言う。
「シンシアの趣味もよく分からんな。あんな無愛想なののどこが良いんだ?」
「そこが良いのよ。燃えるわ」
 シンシアは拳をぎゅっと握る。
「分からん」
「そう言いつつ協力的な事言うのね。ウリエルは」
「それは…」
 ウリエルはチラッとアレクサンドラを見る。
「私とマークがくっつけばウリエルの心配が減るものねぇ」
「おい!」
 シンシアとマークが…
「…シンシアはマークを好きなの?」
 アレクサンドラが聞くと、シンシアは頷く。
「うん。顔が好みなの。クールなとこもカッコ良いと思わない?」
「シンシア、アリに同意を求めるな」
「……」

 でもマークは今もローズを想ってるのよ。

 ローズはピンクの髪で、華奢で背も小さくて目が大きくてすごく清楚で可憐な女の子だった。
「流石ヒロインよね…」
 アレクサンドラは鏡を覗き込む。縦ロールの赤い髪、大きいけどキツそうな眼、腰は細いが華奢な感じではない。胸も大きいし、むしろ肉感的で派手だ。
「悪役令嬢だから仕方ないけど、違いすぎだわ」
 シンシアは緑の髪で騎士の娘らしく快活だ。背は高くはないし、華奢とは言えないが、アレクサンドラほど胸はない。
「私よりシンシアの方がローズに近いわ」
 いや、マークから見たら二人ともローズとはぜんっぜん違うんだろうけどね…

 そっとバルコニーに出て南の塔を見る。
 人影は見えるが、マークではないようだった。

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