入替令嬢と最果ての恋人

ねーさん

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 昨夜、夕食は父ハンクと一緒だった。マークも居た。
「アリ、卒業パーティーには出るか?」
 そうハンクが言った。
「え?」
「一度も学園に行かないまま卒業するより、最後の卒業パーティーだけでも出るか?もちろん他の四人も出たければ色々手配しよう」
「卒業パーティーに…」
 考えた事はなかったが、確かに王都にも学園にも行けない理由はもうないのだ。
 シンシアたちは卒業パーティーに出たいかしら?
 私が「出ない」と言えば他の四人も遠慮しそうよね…
「明日シンシアたちと相談して決めます」
「ああ。シンシアたちには衣装などはこちらで手配するからその心配はないと言っておけよ」
「はい」
 明日、勉強部屋に誰か来るかな?来なかったら会いに行こうかな。
 そう考えていると視線を感じる。視線の方を見るとマークと目が合った。
 …私を見ていた?それとも卒業パーティーに興味が?
 マークは一旦退学になったのだし、卒業パーティーには出ないのだろうか?
 アレクサンドラが声を出そうとすると、マークは視線を外した。

-----

 翌日、午前には勉強部屋に誰も居なかったので、午後一番でアレクサンドラはシンシアとウリエルの家に行ってみた。
 ウリエルは騎士団の訓練で居なかったが、シンシアが出迎えてくれる。
「え?辺境伯様が衣装とか手配してくれるの?」
 お茶を淹れてくれながらシンシアが嬉しそうな声を上げる。
「うん。そう言ってたわ」
 アレクサンドラは貴族令嬢なので、これから学園を卒業する歳になれば辺境伯家で開かれる夜会や、近隣貴族の開く夜会やお茶会などに出る機会は増えるだろう。
 しかしシンシアたち騎士の子供にはそのような機会は滅多にない。ドレスで着飾ってパーティーに出るのは最初で最後かも知れないのだ。
「アリは?王都には行きたくないって言ってたけど、大丈夫なの?」
「今は大丈夫よ」
「じゃあ行きたい!」
 シンシアは嬉しそうに言った。
「男子たちはどうかしら?」
「ウリエルはアリが行くなら『行く』って言うかも。アントニーとカラムは…そうだアリ、今から鍛錬場に行ってみる?」
 ウリエルもあと二人の男子アントニーとカラムも騎士団員の子供で、騎士団に所属しているのだ。
「え?でも訓練の邪魔じゃない?」
「外から見るだけなら邪魔じゃないわよ。見学してる人も結構居るし。休憩に声を掛ければ良いわ」
「そうなの?」
 アレクサンドラは前世の記憶が戻った頃にはよく父や兄の姿を見に鍛錬場に行っていたが、十二、三歳の頃には「気が散るから」と父と兄に言われたので行っていなかった。
 アレクサンドラは父と兄が「身内に見られていると気が散る」という意味で言ったと解釈していたが、父と兄的には段々女性らしくなってきたアレクサンドラが来ると「若い騎士たちの気が散る」という意味でそう言っていたのだ。

 鍛錬場の柵の外には確かに見学している人が居た。
 昔騎士だったらしきおじいさんが微笑ましく眺めていたり、小さな子供が柵に被りついていたり。
 そして若い女性もいる。小さくきゃあきゃあ言いながら騎士たちが模擬剣闘をしているのを見ていた。
「遠くて見えないわね…」
 シンシアが柵から離れた場所の芝生の上に座りながら言う。
 アレクサンドラがあまり柵の近くに行きたくないと言ったからこの場所になったのだ。
「あまり近くに行ってお父様とお兄様の気が散るといけないから」
「気が散るのは辺境伯様やレーン様ばかりじゃないだろうけど」
「え?」
「ううん。今日は模擬闘技だから女性の見学者が多いわね。今、若い女性の間で一番人気なの、マークらしいわよ」
「え?」
「まあそうよね。見目麗しく、腕も立つんだもの」
「そう…そうね」
 攻略対象者だもん。眉目秀麗、文武両道だものね。
「難点といえば、やはり罪を犯した事かしら。まあそれも騎士団ここにいればあまり関係ないけど」
 そう言っていると、剣闘場にマークが出て来た。
 きゃあ!と女性たちから歓声が上がる。
 騎士服に模擬刀を持つマークは確かに均整がとれて目を奪われるほどの美丈夫だ。
「ひゃーやっぱり格好いい!」
 シンシアが声を上げる。
「シンシアはよく見に来るの?」
「まあ、たまによ」
 マークと相手の騎士が構えをとる。「始め!」と言う声と共に模擬刀がぶつかる乾いた音がした。
 何度か音がして、相手の模擬刀が地面に落ちた。マークが相手を仕留めるように模擬刀を構えた所で「それまで!」と声が掛かった。マークは相手と向かい合い一礼すると、表情を変えず剣闘場から控室へ入って行った。
「つよーい」
 シンシアが言う。
「そうね…」
 マークは、ああしてロイドの侍従を斬ったのね。本当に死んでしまっても良いと思って…
 ローズのために。







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