22 / 27
21
しおりを挟む
21
「…お姉様に似てるわ」
卒業パーティーでアレクサンドラと初めて顔を合わせたリザは開口一番そう言った。
「あ、ごめんなさい。不躾に。はじめましてアレクサンドラ様。リザ・クロフォードです」
「アレクサンドラ・ワイダラーです。『アリ』と呼んでください。リザ様、お姉様がおられるんですか?」
「ええ。ヴィクトリアと言います」
ヴィクトリアとアレクサンドラ…いかにも姉妹って感じだわ。
「私にも姉がいますわ。…リズと言います」
「…姉妹ですね」
リザが苦笑いで言う。アレクサンドラも頷いた。
リザと「また後で」と別れて、話しかけてくる色々な人と挨拶を交わしながらシンシアたちを見ると、アントニーが緊張しながらシンシアをダンスへ誘っていた。
フロアの隅で踊る二人を見ると、二人で急に赤くなって共にステップを間違えている。
シンシア、アントニーに言ったのね。
一曲終わると、二曲目もそのまま踊っているのが見えた。
「良かった」
「アレクサンドラ様?」
「あ、いいえ。何でもありませんわ」
アレクサンドラは目の前の貴族令嬢に微笑み掛けた。
「やっぱりアリは上位貴族なんだなあ…」
壁際で、辺境伯家の令嬢とお近付きになろうとする沢山の令嬢令息、商人の子息などに囲まれるアレクサンドラを眺めながらウリエルが呟いた。
辺境伯であるアレクサンドラの父ハンクの、愛娘の相手に対する条件に「身分」は入っていないと聞くが、このような場でアレクサンドラの隣に立つにはそれなりの器量が必要なのだと実感する。
マークは学園で生徒会副会長をしていた。爵位はないが王都の騎士の家系、将来は近衛騎士と期待されていたと聞く。
罪を犯した事で周りから色々言われるだろうが、それでもウリエルには、マークが堂々とアレクサンドラの隣に立つ姿が容易に想像できた。
「ウリエル、ぼーっとアリを眺めてないで、女の子たちと知り合いになりに行こうぜ」
辺境伯領から来たもう一人の男性カラムがウリエルに声を掛ける。
「え?」
「何その意外そうな顔。辺境伯領は『嫁不足』だって事忘れてんのか?」
辺境伯領には辺境伯騎士団と、王都から派遣された国境警備の騎士団がある。女性騎士や、家族と一緒に住んでいる騎士もいるが、つまりは、男性の数が圧倒的に多いのだ。
ウリエルは今までアレクサンドラしか見ていなかったが、これから他の女性に目を向けようとしても、領地の若い女性はほとんどすでに相手が決まっている。
「シンシアに相手が決まっていないのが不思議なくらいだったんだからな。辺境伯領に来てくれるような奇特な子を探すには数が重要なんだ」
「そうか…そうだな」
カラムが強く言い切り、ウリエルは大きく頷いた。
一通り挨拶を終えたアレクサンドラは、ダンスを終えて飲み物を飲んでいたシンシアとアントニーと合流する。
「アリ!シンシア!」
アレクサンドラとシンシアを見つけたドロシーが駆け寄って来た。
「ドロシー、久しぶり!」
シンシアがドロシーに手を振る。
再会を喜ぶアレクサンドラを見て、ドロシーは目を見開くと、アレクサンドラの両腕を掴む。
「え?何?」
「水色の!リボン!」
「…あ」
アレクサンドラはアイボリーに水色の細いリボンがウエストや袖、裾に飾られたドレスを着ている。
「アリとマークはめでたくくっついたのよ。ドロシー」
シンシアが言うと、ドロシーは破顔した。
「やっぱり!何となくそうなる気がしてたわ!」
「…え?喜んでるの?ドロシー」
アレクサンドラが呆気に取られながら言うと、ドロシーは頷く。
「つまり、マーク様が『あの女』の呪縛から解き放たれたって事よね?」
「それは、そうね」
「だったら良いわ。マーク様が幸せになるなら良いの」
ドロシーはニコニコして言う。
「ドロシー、貴女良い子ね…」
シンシアが感心したように言う。
「で、今日はマーク様がアリのエスコートして来たの?」
「ううん。マークはやっぱり出ないって」
今人前に出られる顔じゃないしね。
アレクサンドラは苦笑いを浮かべる。
すると、シンシアの後ろからアントニーが顔を覗かせた。
「ドロシー嬢?マークのような騎士が好みなら、学園を卒業したら辺境伯領へいらしてはどうですか?独身騎士が山のように居ますよ」
「「確かに」」
アレクサンドラとシンシアはうんうんと頷く。
「え?独身騎士が山のよう?…て、誰?」
「あ、私の恋人。辺境伯騎士団員のアントニーよ」
シンシアがアントニーを紹介する。アントニーは軽く頭を下げた。
「え?シンシア恋人ができたの?」
「さっきね」
シンシアは少し照れたように言う。
「辺境伯領には王都から派遣されている騎士団もあるので、爵位のある者もいますし、本当によりどりみどりですよ」
アントニーがにっこりと笑って言う。
「よ…よりどりみどり…」
ドロシーはそう呟くと、ごくんと息を飲んだ。
「…お姉様に似てるわ」
卒業パーティーでアレクサンドラと初めて顔を合わせたリザは開口一番そう言った。
「あ、ごめんなさい。不躾に。はじめましてアレクサンドラ様。リザ・クロフォードです」
「アレクサンドラ・ワイダラーです。『アリ』と呼んでください。リザ様、お姉様がおられるんですか?」
「ええ。ヴィクトリアと言います」
ヴィクトリアとアレクサンドラ…いかにも姉妹って感じだわ。
「私にも姉がいますわ。…リズと言います」
「…姉妹ですね」
リザが苦笑いで言う。アレクサンドラも頷いた。
リザと「また後で」と別れて、話しかけてくる色々な人と挨拶を交わしながらシンシアたちを見ると、アントニーが緊張しながらシンシアをダンスへ誘っていた。
フロアの隅で踊る二人を見ると、二人で急に赤くなって共にステップを間違えている。
シンシア、アントニーに言ったのね。
一曲終わると、二曲目もそのまま踊っているのが見えた。
「良かった」
「アレクサンドラ様?」
「あ、いいえ。何でもありませんわ」
アレクサンドラは目の前の貴族令嬢に微笑み掛けた。
「やっぱりアリは上位貴族なんだなあ…」
壁際で、辺境伯家の令嬢とお近付きになろうとする沢山の令嬢令息、商人の子息などに囲まれるアレクサンドラを眺めながらウリエルが呟いた。
辺境伯であるアレクサンドラの父ハンクの、愛娘の相手に対する条件に「身分」は入っていないと聞くが、このような場でアレクサンドラの隣に立つにはそれなりの器量が必要なのだと実感する。
マークは学園で生徒会副会長をしていた。爵位はないが王都の騎士の家系、将来は近衛騎士と期待されていたと聞く。
罪を犯した事で周りから色々言われるだろうが、それでもウリエルには、マークが堂々とアレクサンドラの隣に立つ姿が容易に想像できた。
「ウリエル、ぼーっとアリを眺めてないで、女の子たちと知り合いになりに行こうぜ」
辺境伯領から来たもう一人の男性カラムがウリエルに声を掛ける。
「え?」
「何その意外そうな顔。辺境伯領は『嫁不足』だって事忘れてんのか?」
辺境伯領には辺境伯騎士団と、王都から派遣された国境警備の騎士団がある。女性騎士や、家族と一緒に住んでいる騎士もいるが、つまりは、男性の数が圧倒的に多いのだ。
ウリエルは今までアレクサンドラしか見ていなかったが、これから他の女性に目を向けようとしても、領地の若い女性はほとんどすでに相手が決まっている。
「シンシアに相手が決まっていないのが不思議なくらいだったんだからな。辺境伯領に来てくれるような奇特な子を探すには数が重要なんだ」
「そうか…そうだな」
カラムが強く言い切り、ウリエルは大きく頷いた。
一通り挨拶を終えたアレクサンドラは、ダンスを終えて飲み物を飲んでいたシンシアとアントニーと合流する。
「アリ!シンシア!」
アレクサンドラとシンシアを見つけたドロシーが駆け寄って来た。
「ドロシー、久しぶり!」
シンシアがドロシーに手を振る。
再会を喜ぶアレクサンドラを見て、ドロシーは目を見開くと、アレクサンドラの両腕を掴む。
「え?何?」
「水色の!リボン!」
「…あ」
アレクサンドラはアイボリーに水色の細いリボンがウエストや袖、裾に飾られたドレスを着ている。
「アリとマークはめでたくくっついたのよ。ドロシー」
シンシアが言うと、ドロシーは破顔した。
「やっぱり!何となくそうなる気がしてたわ!」
「…え?喜んでるの?ドロシー」
アレクサンドラが呆気に取られながら言うと、ドロシーは頷く。
「つまり、マーク様が『あの女』の呪縛から解き放たれたって事よね?」
「それは、そうね」
「だったら良いわ。マーク様が幸せになるなら良いの」
ドロシーはニコニコして言う。
「ドロシー、貴女良い子ね…」
シンシアが感心したように言う。
「で、今日はマーク様がアリのエスコートして来たの?」
「ううん。マークはやっぱり出ないって」
今人前に出られる顔じゃないしね。
アレクサンドラは苦笑いを浮かべる。
すると、シンシアの後ろからアントニーが顔を覗かせた。
「ドロシー嬢?マークのような騎士が好みなら、学園を卒業したら辺境伯領へいらしてはどうですか?独身騎士が山のように居ますよ」
「「確かに」」
アレクサンドラとシンシアはうんうんと頷く。
「え?独身騎士が山のよう?…て、誰?」
「あ、私の恋人。辺境伯騎士団員のアントニーよ」
シンシアがアントニーを紹介する。アントニーは軽く頭を下げた。
「え?シンシア恋人ができたの?」
「さっきね」
シンシアは少し照れたように言う。
「辺境伯領には王都から派遣されている騎士団もあるので、爵位のある者もいますし、本当によりどりみどりですよ」
アントニーがにっこりと笑って言う。
「よ…よりどりみどり…」
ドロシーはそう呟くと、ごくんと息を飲んだ。
6
あなたにおすすめの小説
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい
瑞原唯子
恋愛
だから、きっと、恋を知らないままでよかった。
伯爵令嬢のシャーロットはもうすぐ顔も知らないおじさまと結婚する。だから最後にひとつだけわがままを叶えようと屋敷をこっそり抜け出した。そこで知り合ったのは王都の騎士団に所属するという青年で——。
---
本編完結しました。番外編も書きたかったエピソードはひとまず書き終わりましたが、気が向いたらまた何か書くかもしれません。リクエストなどありましたらお聞かせください。参考にさせていただきます。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる