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卒業パーティーへと向かう馬車に乗る前、ドレスを着たアレクサンドラは恥ずかしそうに、見送るマークの前に立った。
マークが意外そうな顔でアレクサンドラを見ている。
「…そもそも、マークは卒業パーティーにも出ないし王都にも来ない筈だったんだから…見られる予定じゃなかったのよ」
アレクサンドラのドレスはアイボリーで、ウエストや袖口、裾などに水色のリボンを縫い付けて飾ってあった。
ドレスを決めた頃にはマークに面倒と言われ、ゲームの話をし、完全に嫌われたと思っていたのだ。この水色はアレクサンドラの「初恋」との決別の印のつもりであった。
「俺の瞳の色だ」
そう言うマークの表情が何となく明るく見える。
「…マーク、嬉しいの?」
アレクサンドラが聞くと、マークは自分の顎に手をやって少し考えてから言った。
「そうだな。嬉しい」
パーティーが終わって、ワイダラー邸に戻るシンシアたちと別れたアレクサンドラは、馬車で迎えに来たマークと共に王宮へと向かう。
馬車から降りると迎えてくれた男性を見て、マークが軽く固まった。
「…アベル」
「お久しぶりですマーク殿」
恭しく頭を下げる男性を見て、アレクサンドラは気付く。
この人がロイド殿下の侍従なんだわ。マークが背中を斬りつけた…
マークが素早くその場に跪いた。
「やめてください。マーク殿」
「……」
「ロイド殿下から事情は伺っています。ある意味、本人にも抗えない運命の様なもの、と」
「だからと言って許される事ではない」
「しかし、囚われていた頃の貴方は『ローズのためにした事だ。何が悪い』と言う態度でしたよ?」
「……」
マークは下を向いたまま押し黙る。
囚われていた頃…身体的には牢舎へ、精神的にはローズへ…
「反省の色が見えなくて、私も『絶対許すものか』と思っていましたが…」
アベルはマークへ向けて手を差し出す。
「真摯に反省してくださっているのなら、もう良いのです」
-----
「マーク!」
アベルに案内されて中庭に出ると、用意されたお茶の席に着いていたロイドとリザが立ち上がった。
わあ。画面で見るより生のオーラが凄い!さすが王子!
「ご無沙汰しております」
マークがロイドとリザに頭を下げる。アレクサンドラも隣でそれに倣った。
「マーク、眼に活力が戻ったな。その顔はどうした?」
「殿下…本当にご迷惑をお掛けしました。これは、まあ言わば『名誉の負傷』です」
マークは頬のガーゼを撫でた。
「まあまあ。近況報告は後にして、ロイド殿下、こちらの方がアレクサンドラ・ワイダラー辺境伯令嬢ですわ」
リザがアレクサンドラをロイドに紹介する。
「初めまして。アレクサンドラと申します」
「ロイド・ルーセントだ。…と、王族っぽく喋るのはここまでにして、マークもアレクサンドラもタメ口で良いから」
ロイドはそう言うと、皆を席に着くように促す。それぞれの前にお茶を置き侍女が去って行くと、リザがアレクサンドラを見た。
「アリって呼んでいい?」
「もちろん」
「…タメ口って、いつかアリも言ってたな」
マークが呟く。
「そうだっけ?」
「リザ嬢にも意味が通じてると言う事は…アリの言う『前世』の言葉なのか?」
「マーク、私の話…信じてくれたの?」
「正直、全てを信じている訳ではないが、アリの言う通りでないと辻褄が合わない部分があるとは思っている」
「アリ、マークにどこまで話してるの?」
リザがアレクサンドラに問い掛ける。
「私の知る限りの事は全てよ」
「そうなのね。あのね、私、アリから今日ここに『マークと一緒に来る』と聞いてからずっと思ってたんだけど…」
リザが俯いて言う。
やっぱりマークの言ったように、自分を殺そうとした男には会いたくなかった?
そう思って、アレクサンドラは息を飲んだ。
「アリとマークは恋人同士なの?」
パッと顔を上げて言うリザの瞳は何故かキラキラ輝いている。
「リザ…」
ロイドが呆れた表情でリザを見る。それに気付いたリザは「違うの!」と慌てて言った。
「興味本位じゃなくて!それもあるけど!マークがゲームの強制力から抜け出せたのかな、と思ったの!」
「ああ…」
「興味本位もある、のね」
ロイドが頷き。アレクサンドラが呟いた。
卒業パーティーへと向かう馬車に乗る前、ドレスを着たアレクサンドラは恥ずかしそうに、見送るマークの前に立った。
マークが意外そうな顔でアレクサンドラを見ている。
「…そもそも、マークは卒業パーティーにも出ないし王都にも来ない筈だったんだから…見られる予定じゃなかったのよ」
アレクサンドラのドレスはアイボリーで、ウエストや袖口、裾などに水色のリボンを縫い付けて飾ってあった。
ドレスを決めた頃にはマークに面倒と言われ、ゲームの話をし、完全に嫌われたと思っていたのだ。この水色はアレクサンドラの「初恋」との決別の印のつもりであった。
「俺の瞳の色だ」
そう言うマークの表情が何となく明るく見える。
「…マーク、嬉しいの?」
アレクサンドラが聞くと、マークは自分の顎に手をやって少し考えてから言った。
「そうだな。嬉しい」
パーティーが終わって、ワイダラー邸に戻るシンシアたちと別れたアレクサンドラは、馬車で迎えに来たマークと共に王宮へと向かう。
馬車から降りると迎えてくれた男性を見て、マークが軽く固まった。
「…アベル」
「お久しぶりですマーク殿」
恭しく頭を下げる男性を見て、アレクサンドラは気付く。
この人がロイド殿下の侍従なんだわ。マークが背中を斬りつけた…
マークが素早くその場に跪いた。
「やめてください。マーク殿」
「……」
「ロイド殿下から事情は伺っています。ある意味、本人にも抗えない運命の様なもの、と」
「だからと言って許される事ではない」
「しかし、囚われていた頃の貴方は『ローズのためにした事だ。何が悪い』と言う態度でしたよ?」
「……」
マークは下を向いたまま押し黙る。
囚われていた頃…身体的には牢舎へ、精神的にはローズへ…
「反省の色が見えなくて、私も『絶対許すものか』と思っていましたが…」
アベルはマークへ向けて手を差し出す。
「真摯に反省してくださっているのなら、もう良いのです」
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「マーク!」
アベルに案内されて中庭に出ると、用意されたお茶の席に着いていたロイドとリザが立ち上がった。
わあ。画面で見るより生のオーラが凄い!さすが王子!
「ご無沙汰しております」
マークがロイドとリザに頭を下げる。アレクサンドラも隣でそれに倣った。
「マーク、眼に活力が戻ったな。その顔はどうした?」
「殿下…本当にご迷惑をお掛けしました。これは、まあ言わば『名誉の負傷』です」
マークは頬のガーゼを撫でた。
「まあまあ。近況報告は後にして、ロイド殿下、こちらの方がアレクサンドラ・ワイダラー辺境伯令嬢ですわ」
リザがアレクサンドラをロイドに紹介する。
「初めまして。アレクサンドラと申します」
「ロイド・ルーセントだ。…と、王族っぽく喋るのはここまでにして、マークもアレクサンドラもタメ口で良いから」
ロイドはそう言うと、皆を席に着くように促す。それぞれの前にお茶を置き侍女が去って行くと、リザがアレクサンドラを見た。
「アリって呼んでいい?」
「もちろん」
「…タメ口って、いつかアリも言ってたな」
マークが呟く。
「そうだっけ?」
「リザ嬢にも意味が通じてると言う事は…アリの言う『前世』の言葉なのか?」
「マーク、私の話…信じてくれたの?」
「正直、全てを信じている訳ではないが、アリの言う通りでないと辻褄が合わない部分があるとは思っている」
「アリ、マークにどこまで話してるの?」
リザがアレクサンドラに問い掛ける。
「私の知る限りの事は全てよ」
「そうなのね。あのね、私、アリから今日ここに『マークと一緒に来る』と聞いてからずっと思ってたんだけど…」
リザが俯いて言う。
やっぱりマークの言ったように、自分を殺そうとした男には会いたくなかった?
そう思って、アレクサンドラは息を飲んだ。
「アリとマークは恋人同士なの?」
パッと顔を上げて言うリザの瞳は何故かキラキラ輝いている。
「リザ…」
ロイドが呆れた表情でリザを見る。それに気付いたリザは「違うの!」と慌てて言った。
「興味本位じゃなくて!それもあるけど!マークがゲームの強制力から抜け出せたのかな、と思ったの!」
「ああ…」
「興味本位もある、のね」
ロイドが頷き。アレクサンドラが呟いた。
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