入替令嬢と最果ての恋人

ねーさん

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「アリ、今も私は爵位もない前科者にアリは勿体なさ過ぎると思ってるの」
 ウェディングドレス姿のリズが、両手でアレクサンドラの手を取る。
「お姉様」
 アレクサンドラが少し怒った表情でリズを見ると
「言うくらい良いじゃない。かわいい妹の事なんだし」
 とケロリとして言う。
「だってアリは美人で華やかで…辺境伯令嬢だし、上位貴族や王子に嫁いでもおかしくない子なのよ」
 王子とか…何か洒落にならない…
 アレクサンドラは苦笑いする。
「お姉様だって美人の辺境伯令嬢じゃないですか」
 リズが嫁ぐのは隣の領地の伯爵家の次男、辺境伯騎士団の出世頭だが本人が継ぐ爵位はないのだ。
「私は良いのよ。アリみたいに華がないもの」
「お姉様、私…マークが初恋なんです」
「え?そうなの?」
 驚くリズ。
「シンシアにも初恋が遅いって言われたんですけど、やっぱり遅いですか?」
「…私は五歳か六歳くらいだったわよ」
「え!?早っ」
「普通よ。あの頃お父様の側に付いてた騎士。大きくて強くて格好良かったわ」
「お姉様、その頃から大きくて強くて格好良い騎士が好みだったんですか?」
「…そう言えばそうね」
 これからリズと結婚式を挙げる花婿も大きくて強い美丈夫だ。
 リズはアレクサンドラの手をぎゅっと握る。
「初恋が実るなんて…まあマークも私の旦那様の次くらいには騎士団で出世しそうだし、アリの初恋なら仕方ないわね」
 リズは苦笑いしながら言った。
 初恋って、すごい威力のある物なのね…
 でもお姉様に認めてもらえたらやっぱり嬉しいわ。

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 リズの結婚式の数日後、アレクサンドラの部屋で女性三人がお茶会をしている。
「リズ様お綺麗だったわね」
 シンシアが言うと、アレクサンドラは頷いた。
「お姉様、身長もあるからドレスも映えてたわ」
「いいなあ私も見たかったな…」
 そう言うのはドロシーだ。
「ドロシーはもう帰らないと新学期に間に合わないんじゃないの?」
 アレクサンドラが言うと、ドロシーは
「今日出たとしても間に合わないわ」
 と言う。
 今、学園は春休暇だ。といっても休みは二週間強しかない。
 王都から辺境伯領まで片道十日かかるので、普通は夏休暇などの長い休みにしか学園の生徒が領地を訪れる事はできない。にも拘らず、ドロシーは昨日からここにいるのだ。
「勉学を疎かにする人、騎士は嫌いよ。ね、アリ」
「そうね」
「えええ!?」
 シンシアとアレクサンドラがそう言うと、ドロシーは驚愕の表情を浮かべる。
「大体アントニーは『学園を卒業したら辺境伯領ここに来たら』って言ってたでしょ?」
「そっそうだけど、よりどりみどりがもう気になって気になって…」
「じゃあ今日は模擬闘技だから見学したら?それで明日には帰りなさいな」
 シンシアが呆れたように言う。
「そうね。今度は夏休暇に来れば良いわ。そうしたら辺境伯騎士団にも、王都からの騎士団にも引き会わせてあげられるし」
 アレクサンドラが言うと、シンシアはキラキラしたをして頷いた。

 鍛錬場に行くと、ちょうど休憩になった処のようだった。
 マークがアレクサンドラと並ぶドロシーに気付き、小走りに近寄って来る。
「アリ…どうしてドロシー嬢が?」
 マークは眉間に皺を寄せている。
「私、ドロシーとお友達になったのよ」
「友達?」
 訝しげに言うマークに、ドロシーが勢い良く言う。
「あの!マーク様!今回私はマーク様に会いに来た訳ではなく!あの、騎士さんたちを…見に…です…ね…」
 段々とドロシーの声が小さくなる。
「ドロシーは『騎士好き』なの」
 シンシアがドロシーの後ろから言う。
「シンシア、ハッキリ言い過ぎよ」
「…シンシア…手加減して」
「あら、アントニーは『シンシアのハッキリした処が好き』って言うわよ」
「…突然の惚気も勘弁して…」
 脱力するドロシーを見て、マークはほっと息を吐くと、アレクサンドラの頭をポンポンと叩いて去って行った。
「相変わらず無表情で甘々ね」
「…確かに。でも、あんなに無表情でもローズの時とは違うのがハッキリと分かるわ」
 シンシアとドロシーが感心したように言う。
「…違う?」
「全然違うわ」
 アレクサンドラの問いに、そう言い切るドロシー。

 ローズの時とは違う。
 マークは強制力でない感情を、本当に取り戻したんだわ…

 アレクサンドラは「良かった…」と小さく呟いた。




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