長身令嬢ですが、王太子妃の選考大会の招待状が届きました。

ねーさん

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「遠方から来る者もいますし、全員二次選考のため一泊の準備をして来いと招待状に書いておいて、直ぐに帰らせるのも気の毒ではありますが…とにかく、一次選考で千人から百人まで絞ります」
「……」
「翌日の二次で十人にし、公爵家、侯爵家の令嬢を加えて五十人弱で三次選定をします」
「……」
「三次で二十人になった処で、四次であるユリウス殿下との面接です。ここでは長くて一人十分で、合否を即決してください」
「……」
「聞いておられますか?ユリウス殿下」
 ルーカスは書類から視線を上げると、執務机に座るユリウスを見た。
「…聞いている」
 ユリウスは机に片肘をついて無表情で言う。
「殿下、くれぐれもこの面接で全員不合格になんてしないでくださいよ」
「……」
「でーんーかー」
「…わかってる。最低でも五人は合格、だろう?」
 ユリウスは不満気な表情で言う。
「殿下が少しでも気になる方がおられたなら、五人以上合格にして頂いても構いませんから。もしも合格が五人に満たなかったら、宰相殿が適当に五人になるよう選びますからね!」
「……」
「はあ~、殿下がそういう態度だと噂が立つのも無理はないですね」
 ルーカスはため息混じりに言う。
「噂?」
 ユリウスがルーカスを見る。
 ルーカスはニッコリと笑う。
「ユリウス殿下は『男色家』だと」

「なっ!」
 ユリウスは驚愕の表情で立ち上がる。
 ルーカスは笑顔で続ける。
「『女嫌い』という噂もあるみたいですが、何故女嫌いなのかと理由を突き詰めれば、それは男色家だからだ、という結論になるみたいですね。よく理解できます」
「理解するなよ!俺は違う」
「まあまあ、今回無事に婚約者が決まれば、そんな噂も立ち消えますよ」
「……」
 ユリウスは黙ってじっとルーカスを見つめた。

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「はあ、王太子妃選定大会も憂鬱だけど、舞踏会も憂鬱だわ」
 紺のシンプルなドレス姿のシャーロットは壁にもたれてため息を吐く。

 学園では、春期の終わりには夏季休暇に入る前の舞踏会があり、冬期の終わりには卒業パーティーがあるので、貴族の令息令嬢は社交を学び、貴族でない者も貴族社会との繋がりを作ろうと励む場となるのだ。

 まあでも学園の舞踏会や卒業パーティーはパートナーがいなくても友達同士で出られるし、ダンスだって強制じゃないから、こうして隅っこにいれば良いからまだ良いけど…
「マリアまた違う人と踊ってる。相変わらずモテモテね」
 舞踏会の会場となった講堂の真ん中でクルクルと踊っているマリアを遠目に眺める。
 水色のレースたっぷりのドレスがよく似合っててかわいいな。

 ぼんやりと、ダンスをするマリアを見ていると、シャーロットの視界の上方に黒い影が見えた。
「ひゃっ!」
 頭を防御しようと思わず手を上げると、手に持っていたグラスの中身が溢れる。
 パシャ。
「あ!」
 グラスに入っていた葡萄ジュースが溢れて、前に立っていた男性の背中に掛かったのだ。
 ゆっくりと振り向いた男性は…
「なっ何するんだ!?」
 この方四年生だ。生徒会の副会長で、ユリウス殿下のご友人。
「ごめんなさい!!あの、驚いて、思わず」
 シャーロットはドレスのポケットからハンカチを取り出す。
「こんな所で何に驚くって言うんだ!?」
 ジュースの掛かった上着を脱ぐと、背中を確かめる。白い上着には大きな紫色の染みが出来ていた。
「こんな染み、拭いたって取れないだろ!どうしてくれるんだ!」
 男性はシャーロットの方に上着を突き出す。
 どうしよう。
「ごめんなさい!」
「謝って済むか!」
 男性の剣幕にじんわりと涙が滲んで来る。
「ごめんなさい…」
「お前みたいな大女が泣いたって可愛げも何もないんだよ!」

「メレディス。いい加減にしろ」
 男性の後ろから声がする。ユリウスが激昂した男性の肩に手を乗せていた。
「ユリウス。しかし…」
「彼女を責めても汚れてしまった物はどうにもならないだろ?」
 ユリウスは自分の上着を脱いでメレディスと呼ばれた男性に渡す。
「これを着ていろ」
「ユリウス」
「俺は城から持って来させるから。行くぞ」
「あ、ああ」
 ユリウスはメレディスの腕を引く。
「……」
 数歩、歩いてユリウスは不意にシャーロットの方を振り向いた。
 呆然と眺めていたシャーロットと目が合う。
「あ…ありがとうございます」
 シャーロットは勢い良く頭を下げた。
「ああ」
 ユリウスは頷くと、メレディスの腕を掴んだまま歩き出した。



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