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「へえ、ロッテはレース編みが趣味なのか」
「はい。だからこうして庭を見たり花を見たりするのは図案の参考になって楽しいです」
庭園の小径を歩くシャーロットとグリフ。
この世界に生まれ変わって良かったのは、令嬢は運動をしなくて良いって事と、手芸が趣味でも似合わないとか暗いとか言われない事。前世では背が高いというだけでバレーやバスケに勧誘されて…それで運動神経悪いから落胆されて。勝手に期待して、勝手に失望されて、割に合わないったらなかったもん。
「きゃっ!」
「おっと」
小径の段差に足を取られて転倒しかけたロッテをグリフが抱き止める。
シャーロットの背中にグリフの片手が回り、もう片方の手が腰に添えられて、抱き合う様な体制になる。
目の前にグリフの肩。シャーロットを包み込む程の大きな体躯。
もちろん今世では貴族令嬢なので、男性に抱きしめられた経験はない。いや、前世でもカレシなどいなかったから、そんな経験はないのだが。
「大丈夫か?足を捻ったりしなかったか?」
「だっ。大丈夫です」
シャーロットがグリフから離れようとすると、シャーロットの髪の毛がグリフの肩章に引っかかってしまう。
「いたっ」
「ああ髪の毛が。ロッテ、無理に引っ張らない方が良い」
グリフがシャーロットの後ろ頭に手を添えて、それ以上離れないように止めた。
「はい…」
シャーロットの頭を抱き込む様に腕を回して引っ掛かった髪の毛を外す。
シャーロットの顔がグリフの首元に当たっていて、シャーロットの心臓はドキドキと速く鳴った。
「取れた」
「申し訳ありません」
頬を真っ赤にしてグリフから離れるシャーロット。
「謝る事はない。俺としてはかわいい女の子と密着できて役得だったし」
ニヤッと笑って言うグリフ。
かっ…かわいい?私が「かわいい女の子」?
シャーロットの頬がますます真っ赤に染まった。
-----
グリフ様といると、私が普通の女の子みたいだわ。
部屋に戻ったシャーロットはソファに座ってため息を吐いた。
「どうしたの?ロッテ」
先に部屋に戻っていたマリアがシャーロットの前に紅茶のカップを置く。
「うん。グリフ様は本当に大きいな、と思って」
マリアはシャーロットの隣に座ると自分の前のカップを手に取った。
「グリフ様ってロックハート辺境伯家のご次男なのよね?」
「そうなの?」
「さっきサロンで聞き込みしたのよ」
「聞き込み?」
「ウェイン伯爵家の令嬢シャーロット様のお相手に相応しいか、お調べするのが侍女である私の役目でもありますもの」
改まった口調で言うマリア。
「なっ。お相手って!」
赤くなって慌てるシャーロットにマリアは思わず吹き出した。
「ふふ。ロッテ慌て過ぎよ。王太子の護衛騎士だから、結構ご存知の方多かったわ。ルーカス様のご友人なら人柄も良いわね。きっと」
「マリア。だからお相手って…」
「辺境伯家は位としては侯爵に近いもの、伯爵令嬢のロッテとは家柄も釣り合うわ」
「マリア」
「懸念としてはロッテを辺境伯領へ連れて行っちゃわないか、という事ね。ご次男だからずっと王都に住んでくださると良いのだけど」
「マーリーアー」
そう話していると、他の二人の令嬢と、クラリスが部屋に戻って来る。
程なくして、結果を知らせに侍女が部屋にやって来た。
「公爵家や侯爵家のご令嬢に、一次から参加した『その他大勢』が勝つと面白いと思うわ」
侍女が退出した後で、同室だった学園四年生の伯爵令嬢が言う。
「それも貴女たち三人の誰かが王太子妃候補になればすごく面白いわ」
三年生の子爵令嬢も頷く。
シャーロット、マリア、クラリスの手には揃いの封筒。三日後の三次選考の案内書が入っているのだ。
伯爵令嬢と子爵令嬢は「頑張ってね~」と手を振って笑顔で部屋を出て、帰路に着いた。
残った三人は顔を見合わせる。
「面白い…ですか?」
クラリスがシャーロットとマリアを上目遣いで見る。
「自分が当事者じゃなければ面白いかも」
シャーロットは視線を上にあげて言う。
「そうね真理だわ」
マリアは顎に手を当てて頷いた。
「まあ、とりあえず…こうなってしまったら仕方ないわ」
「それもそうね。今更辞退もできないし」
「そうですね。またロッテさんとマリアさんに会えるのを楽しみにして来ます」
「へえ、ロッテはレース編みが趣味なのか」
「はい。だからこうして庭を見たり花を見たりするのは図案の参考になって楽しいです」
庭園の小径を歩くシャーロットとグリフ。
この世界に生まれ変わって良かったのは、令嬢は運動をしなくて良いって事と、手芸が趣味でも似合わないとか暗いとか言われない事。前世では背が高いというだけでバレーやバスケに勧誘されて…それで運動神経悪いから落胆されて。勝手に期待して、勝手に失望されて、割に合わないったらなかったもん。
「きゃっ!」
「おっと」
小径の段差に足を取られて転倒しかけたロッテをグリフが抱き止める。
シャーロットの背中にグリフの片手が回り、もう片方の手が腰に添えられて、抱き合う様な体制になる。
目の前にグリフの肩。シャーロットを包み込む程の大きな体躯。
もちろん今世では貴族令嬢なので、男性に抱きしめられた経験はない。いや、前世でもカレシなどいなかったから、そんな経験はないのだが。
「大丈夫か?足を捻ったりしなかったか?」
「だっ。大丈夫です」
シャーロットがグリフから離れようとすると、シャーロットの髪の毛がグリフの肩章に引っかかってしまう。
「いたっ」
「ああ髪の毛が。ロッテ、無理に引っ張らない方が良い」
グリフがシャーロットの後ろ頭に手を添えて、それ以上離れないように止めた。
「はい…」
シャーロットの頭を抱き込む様に腕を回して引っ掛かった髪の毛を外す。
シャーロットの顔がグリフの首元に当たっていて、シャーロットの心臓はドキドキと速く鳴った。
「取れた」
「申し訳ありません」
頬を真っ赤にしてグリフから離れるシャーロット。
「謝る事はない。俺としてはかわいい女の子と密着できて役得だったし」
ニヤッと笑って言うグリフ。
かっ…かわいい?私が「かわいい女の子」?
シャーロットの頬がますます真っ赤に染まった。
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グリフ様といると、私が普通の女の子みたいだわ。
部屋に戻ったシャーロットはソファに座ってため息を吐いた。
「どうしたの?ロッテ」
先に部屋に戻っていたマリアがシャーロットの前に紅茶のカップを置く。
「うん。グリフ様は本当に大きいな、と思って」
マリアはシャーロットの隣に座ると自分の前のカップを手に取った。
「グリフ様ってロックハート辺境伯家のご次男なのよね?」
「そうなの?」
「さっきサロンで聞き込みしたのよ」
「聞き込み?」
「ウェイン伯爵家の令嬢シャーロット様のお相手に相応しいか、お調べするのが侍女である私の役目でもありますもの」
改まった口調で言うマリア。
「なっ。お相手って!」
赤くなって慌てるシャーロットにマリアは思わず吹き出した。
「ふふ。ロッテ慌て過ぎよ。王太子の護衛騎士だから、結構ご存知の方多かったわ。ルーカス様のご友人なら人柄も良いわね。きっと」
「マリア。だからお相手って…」
「辺境伯家は位としては侯爵に近いもの、伯爵令嬢のロッテとは家柄も釣り合うわ」
「マリア」
「懸念としてはロッテを辺境伯領へ連れて行っちゃわないか、という事ね。ご次男だからずっと王都に住んでくださると良いのだけど」
「マーリーアー」
そう話していると、他の二人の令嬢と、クラリスが部屋に戻って来る。
程なくして、結果を知らせに侍女が部屋にやって来た。
「公爵家や侯爵家のご令嬢に、一次から参加した『その他大勢』が勝つと面白いと思うわ」
侍女が退出した後で、同室だった学園四年生の伯爵令嬢が言う。
「それも貴女たち三人の誰かが王太子妃候補になればすごく面白いわ」
三年生の子爵令嬢も頷く。
シャーロット、マリア、クラリスの手には揃いの封筒。三日後の三次選考の案内書が入っているのだ。
伯爵令嬢と子爵令嬢は「頑張ってね~」と手を振って笑顔で部屋を出て、帰路に着いた。
残った三人は顔を見合わせる。
「面白い…ですか?」
クラリスがシャーロットとマリアを上目遣いで見る。
「自分が当事者じゃなければ面白いかも」
シャーロットは視線を上にあげて言う。
「そうね真理だわ」
マリアは顎に手を当てて頷いた。
「まあ、とりあえず…こうなってしまったら仕方ないわ」
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