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「一次から上がった令嬢が十人、公爵、侯爵令嬢が三十六人、計四十六人で三次選考なのね。公爵、侯爵令嬢って意外と少ないのね」
マリアが三次選考の案内書を見ながら言う。
「高位だからもう婚約者が決まっている方が多いんじゃない?」
シャーロットが手に持った針を動かしながら言うと、マリアは
「ああ、それもそうね」
と言った。
「できたわ」
針を針山に刺して糸を鋏で切ると、マリアがシャーロットの手の中を覗き込む。
「わあ、かわいい!」
レース編みの小さな花を集めて作った花束の様なブローチ。
「私のは青で、マリアのはピンクよ」
「この緑のは?」
「明日クラリスに会ったらあげようと思って…手作りって微妙かな?」
「そんな事ないわ。ロッテの作るアクセサリー、人気あるじゃない。クラリスだって喜ぶわ」
マリアは早速自分のお仕着せの襟元にブローチを着けた。
「一日目に晩餐会、二日目に夜会だっけ?三次選考」
「そうね。ドレスに靴に宝飾品に…荷物多いわねぇ」
マリアはうんざりした表情で言う。
「夜会はまたダンス踊るのかしら?」
「夜会だもの。きっとね」
一次の時はグリフ様が踊ってくださったけど、今度は違う方だろうし、少しでも背の高い方と当たれば良いけど。
-----
「ロッテさんと同じ部屋で嬉しいです」
王城の来賓棟で再会したクラリスはニコニコとして言う。
「私もクラリスと同じ部屋で嬉しいわ」
シャーロットもニコニコとして言った。
公爵令嬢、侯爵令嬢たちは一人部屋だが、二次通過者は二人部屋なのだ。
「マリアさんとお揃いのブローチなんですね」
クラリスがシャーロットの胸元の青い花のブローチを示して言う。
「そうなの。それでね…」
シャーロットはスカートのポケットから緑の花のブローチを取り出す。
「これ、良かったら、もらって?」
「私に?良いんですか?」
「クラリスにと思って作ったの」
「ロッテさんが作ったんですか?すごい綺麗…あ、私の瞳が緑だから?」
嬉しそうに自分のボックスカラーのブラウスの襟にブローチを着けるクラリス。
「うん。私の青とマリアのピンクはそれぞれ好きな色なの。クラリスの好きな色がわからなかったから…」
「緑、好きです。似合いますか?」
「良かった。すごく似合うわ」
「うれしいです。ありがとうございます」
ニコニコと笑うクラリス。
本当にかわいいわ。
クラリスが「ヒロイン」だとして、この王太子選びがゲームの舞台だとしたら、もう攻略対象者には出会ったのかしら?
それとも、ゲームじゃなくて、小説とか漫画でクラリスが王太子妃になるまでのシンデレラストーリーなのかも。
だとしたら私もモブじゃなくて名前が出て来る登場人物の一人ではあるのかな。
午後から来賓棟に集まった令嬢たちの部屋に侍女がやって来て晩餐会に向けての身支度を手伝ってくれる。
クラリスは応接室で、シャーロットは続き間の寝室で、それぞれ侍女がついて身支度をする。侍女から「互いに階級などの先入観を持たないよう、姓ではなく名で呼び合うように」と説明を受けたシャーロットは
「あの、名前って愛称でも良いんですか?」
と尋ねた。
「そうですね。本名とかけ離れた偽名の様なものはいけませんけど…」
「『シャーロット』で『ロッテ』なんですけど」
「ああ、それなら。愛称としては一般的なので大丈夫ですよ」
「良かった」
ドレスを着付けてくれている侍女と目が合って微笑み合う。
「ロッテ様がユリウス殿下と並ばれたらきっととてもゴージャスですわ」
侍女は紺のイブニングドレスを纏ったシャーロットにそう言うと満足気に頷いた。
ゴージャス…物は言いようね。
「でも、ハイヒールだと私、殿下より大きくなっちゃいませんか?」
「うーん…ヒールだと同じ位か…少し殿下の方が高いかと」
そうなんだ。ユリウス殿下ってそんなに高いのね。
「そうなんですね。私、殿下を遠目でしか見た事がなくて」
「今日の晩餐会に殿下も出られますよ。お席によっては遠いかも知れませんが」
「え?王太子殿下が出席されるんですか?」
「個人的な会話はなさいなせんけどね。ちなみにお嬢様方のお席の並び順はくじ引きで決めます」
「…くじ引き」
あ、ここでクラリスが王太子殿下の近くの席を引き当てる、とか?
ありそうじゃないかしら?
「一次から上がった令嬢が十人、公爵、侯爵令嬢が三十六人、計四十六人で三次選考なのね。公爵、侯爵令嬢って意外と少ないのね」
マリアが三次選考の案内書を見ながら言う。
「高位だからもう婚約者が決まっている方が多いんじゃない?」
シャーロットが手に持った針を動かしながら言うと、マリアは
「ああ、それもそうね」
と言った。
「できたわ」
針を針山に刺して糸を鋏で切ると、マリアがシャーロットの手の中を覗き込む。
「わあ、かわいい!」
レース編みの小さな花を集めて作った花束の様なブローチ。
「私のは青で、マリアのはピンクよ」
「この緑のは?」
「明日クラリスに会ったらあげようと思って…手作りって微妙かな?」
「そんな事ないわ。ロッテの作るアクセサリー、人気あるじゃない。クラリスだって喜ぶわ」
マリアは早速自分のお仕着せの襟元にブローチを着けた。
「一日目に晩餐会、二日目に夜会だっけ?三次選考」
「そうね。ドレスに靴に宝飾品に…荷物多いわねぇ」
マリアはうんざりした表情で言う。
「夜会はまたダンス踊るのかしら?」
「夜会だもの。きっとね」
一次の時はグリフ様が踊ってくださったけど、今度は違う方だろうし、少しでも背の高い方と当たれば良いけど。
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「ロッテさんと同じ部屋で嬉しいです」
王城の来賓棟で再会したクラリスはニコニコとして言う。
「私もクラリスと同じ部屋で嬉しいわ」
シャーロットもニコニコとして言った。
公爵令嬢、侯爵令嬢たちは一人部屋だが、二次通過者は二人部屋なのだ。
「マリアさんとお揃いのブローチなんですね」
クラリスがシャーロットの胸元の青い花のブローチを示して言う。
「そうなの。それでね…」
シャーロットはスカートのポケットから緑の花のブローチを取り出す。
「これ、良かったら、もらって?」
「私に?良いんですか?」
「クラリスにと思って作ったの」
「ロッテさんが作ったんですか?すごい綺麗…あ、私の瞳が緑だから?」
嬉しそうに自分のボックスカラーのブラウスの襟にブローチを着けるクラリス。
「うん。私の青とマリアのピンクはそれぞれ好きな色なの。クラリスの好きな色がわからなかったから…」
「緑、好きです。似合いますか?」
「良かった。すごく似合うわ」
「うれしいです。ありがとうございます」
ニコニコと笑うクラリス。
本当にかわいいわ。
クラリスが「ヒロイン」だとして、この王太子選びがゲームの舞台だとしたら、もう攻略対象者には出会ったのかしら?
それとも、ゲームじゃなくて、小説とか漫画でクラリスが王太子妃になるまでのシンデレラストーリーなのかも。
だとしたら私もモブじゃなくて名前が出て来る登場人物の一人ではあるのかな。
午後から来賓棟に集まった令嬢たちの部屋に侍女がやって来て晩餐会に向けての身支度を手伝ってくれる。
クラリスは応接室で、シャーロットは続き間の寝室で、それぞれ侍女がついて身支度をする。侍女から「互いに階級などの先入観を持たないよう、姓ではなく名で呼び合うように」と説明を受けたシャーロットは
「あの、名前って愛称でも良いんですか?」
と尋ねた。
「そうですね。本名とかけ離れた偽名の様なものはいけませんけど…」
「『シャーロット』で『ロッテ』なんですけど」
「ああ、それなら。愛称としては一般的なので大丈夫ですよ」
「良かった」
ドレスを着付けてくれている侍女と目が合って微笑み合う。
「ロッテ様がユリウス殿下と並ばれたらきっととてもゴージャスですわ」
侍女は紺のイブニングドレスを纏ったシャーロットにそう言うと満足気に頷いた。
ゴージャス…物は言いようね。
「でも、ハイヒールだと私、殿下より大きくなっちゃいませんか?」
「うーん…ヒールだと同じ位か…少し殿下の方が高いかと」
そうなんだ。ユリウス殿下ってそんなに高いのね。
「そうなんですね。私、殿下を遠目でしか見た事がなくて」
「今日の晩餐会に殿下も出られますよ。お席によっては遠いかも知れませんが」
「え?王太子殿下が出席されるんですか?」
「個人的な会話はなさいなせんけどね。ちなみにお嬢様方のお席の並び順はくじ引きで決めます」
「…くじ引き」
あ、ここでクラリスが王太子殿下の近くの席を引き当てる、とか?
ありそうじゃないかしら?
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