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「え…?」
イザベラに指差され目を見開くクラリス。
え?何?ネックレスを盗んだのがクラリス?
シャーロットとマリアが呆然としていると、イザベラがツカツカと歩いて来てクラリスの前に立った。
「貴女、ケーリー男爵家の方よね?」
「は、はい…」
ジロリと睨むイザベラに気圧された様にクラリスは立ち上がる。
「…!」
シャーロットとマリアも立ち上がり、二人でクラリスを守るように半歩前に出た。
「ロッテさん、マリアさん…」
「貴女、母親似ね」
イザベラはシャーロットとマリアを気にしていない様に、二人の後ろのクラリスに言う。
「…え?」
「私はイザベラ・ハクルート。ハクルート公爵家、ご存知?」
「いえ」
「私は貴女の母親の顔、よく知っているわ。お父様がずっと大切にしている姿絵でね」
「姿絵…?」
「貴女の母親と、私の父親、学園生の頃お付き合いしていたのよ」
「え?」
イザベラは眉を顰めて口角を上げる。
「公爵家の嫡男である父と、男爵家の娘。当然結ばれる筈がないわ。二人は引き裂かれ、父は母と、貴女の母親は王都からは遠い領地の男爵と結婚したの。いいえ、させられたのよ」
「…させられた…なんて…」
クラリスが呟く。
「その事と、ネックレスに何の関係があるのですか?」
思わずそう言ったのはシャーロットだ。
「なあに、貴女、誰?」
イザベラはチラリとシャーロットを見上げる。
見下した視線。自分は公爵家の令嬢なので、この場に自分と同等の者はいても、格上の者はいないと思っているのがよくわかる。
「ウェイン伯爵家のシャーロットです」
シャーロットはイザベラを睨む様に言う。
「シャーロット!」
イザベラはシャーロットの名前を聞いて笑い出す。
「オホホホ。こんなに大きな身体でシャーロットとはね」
シャーロットと言う名前には「小さくて女性らしい」と言う意味がある。だからシャーロットはそう呼ばれるのを嫌がっているのだ。
「お前の妹、シャーロットという名だったのか」
食堂の横にある小部屋から扉に付いた小窓を覗きながらユリウスが言う。
「…そうですよ」
ユリウスの横で顔を顰めているのはルーカスだ。
「本人がシャーロットと言う名前を嫌がっているのでロッテと呼んでいます」
「ふうん」
シャーロット、か。
ユリウスは小さな令嬢を守るように立つ、周りの令嬢より頭ひとつ抜けて背の高いシャーロットを見る。
怒っている顔、だな。
「生まれた時から大きかった訳ではないですから」
シャーロットがそう言うと、イザベラはまた「ホホホ」と笑う。
「そうね。名付けた時にこんなに大きくなるとは、ご両親も思っていなかったのでしょうね」
シャーロットが唇を噛み締めるのが、小窓から見ているユリウスにもわかる。
「イザベラも、あんな言い方はないだろうに…」
「良いんです。ここは『公爵令嬢にも理不尽は理不尽だと言えるかどうか』を見る場面なんですから。それにロッテは慣れています」
ルーカスは冷静に言う。
そう。これは三次選考の中の一つの課題なのだ。イザベラは候補者に紛れた出題者であり、もちろんネックレスは盗まれてなどいない。公爵令嬢という王族以外では最高位の者から疑いを掛けられた時の本人と周りの反応を見ているのだ。
「慣れている?」
「昔から同じ年頃の子の中では背が高かったので。『大女』『男みたい』『デカい』『ウドの大木』『どこがシャーロットだ』『名前負け』など、色々な事を散々言われていますから」
「……」
それなら「シャーロット」という名前が嫌になるのも無理はないな。
「それより殿下、他の令嬢の反応をもっとしっかりと見てください」
「ああ」
そう言いながら、ユリウスの視線はシャーロットに固定されたままだ。
「ルーカス、先程から渋面なのは妹が三次選考に通過しそうだからか?」
横目でルーカスを見ると、ますます眉間の皺が深くなった。
こうして食堂の様子を窺っているのはユリウスとルーカスだけではない。一次や二次選考の時の様に、侍女や給仕の者も見ているし、他の場所に隠れて見ている侍従もいる。
シャーロットはその者たちからの票を得るだろう。
「…そうですよ」
「ロッテの背が高い事がネックレスと関係ありますか?あ、私はマードック男爵家のマリアと申します」
マリアがもう半歩前に出て、にっこりと笑ってスカートを摘むとイザベラに礼をした。
「え…?」
イザベラに指差され目を見開くクラリス。
え?何?ネックレスを盗んだのがクラリス?
シャーロットとマリアが呆然としていると、イザベラがツカツカと歩いて来てクラリスの前に立った。
「貴女、ケーリー男爵家の方よね?」
「は、はい…」
ジロリと睨むイザベラに気圧された様にクラリスは立ち上がる。
「…!」
シャーロットとマリアも立ち上がり、二人でクラリスを守るように半歩前に出た。
「ロッテさん、マリアさん…」
「貴女、母親似ね」
イザベラはシャーロットとマリアを気にしていない様に、二人の後ろのクラリスに言う。
「…え?」
「私はイザベラ・ハクルート。ハクルート公爵家、ご存知?」
「いえ」
「私は貴女の母親の顔、よく知っているわ。お父様がずっと大切にしている姿絵でね」
「姿絵…?」
「貴女の母親と、私の父親、学園生の頃お付き合いしていたのよ」
「え?」
イザベラは眉を顰めて口角を上げる。
「公爵家の嫡男である父と、男爵家の娘。当然結ばれる筈がないわ。二人は引き裂かれ、父は母と、貴女の母親は王都からは遠い領地の男爵と結婚したの。いいえ、させられたのよ」
「…させられた…なんて…」
クラリスが呟く。
「その事と、ネックレスに何の関係があるのですか?」
思わずそう言ったのはシャーロットだ。
「なあに、貴女、誰?」
イザベラはチラリとシャーロットを見上げる。
見下した視線。自分は公爵家の令嬢なので、この場に自分と同等の者はいても、格上の者はいないと思っているのがよくわかる。
「ウェイン伯爵家のシャーロットです」
シャーロットはイザベラを睨む様に言う。
「シャーロット!」
イザベラはシャーロットの名前を聞いて笑い出す。
「オホホホ。こんなに大きな身体でシャーロットとはね」
シャーロットと言う名前には「小さくて女性らしい」と言う意味がある。だからシャーロットはそう呼ばれるのを嫌がっているのだ。
「お前の妹、シャーロットという名だったのか」
食堂の横にある小部屋から扉に付いた小窓を覗きながらユリウスが言う。
「…そうですよ」
ユリウスの横で顔を顰めているのはルーカスだ。
「本人がシャーロットと言う名前を嫌がっているのでロッテと呼んでいます」
「ふうん」
シャーロット、か。
ユリウスは小さな令嬢を守るように立つ、周りの令嬢より頭ひとつ抜けて背の高いシャーロットを見る。
怒っている顔、だな。
「生まれた時から大きかった訳ではないですから」
シャーロットがそう言うと、イザベラはまた「ホホホ」と笑う。
「そうね。名付けた時にこんなに大きくなるとは、ご両親も思っていなかったのでしょうね」
シャーロットが唇を噛み締めるのが、小窓から見ているユリウスにもわかる。
「イザベラも、あんな言い方はないだろうに…」
「良いんです。ここは『公爵令嬢にも理不尽は理不尽だと言えるかどうか』を見る場面なんですから。それにロッテは慣れています」
ルーカスは冷静に言う。
そう。これは三次選考の中の一つの課題なのだ。イザベラは候補者に紛れた出題者であり、もちろんネックレスは盗まれてなどいない。公爵令嬢という王族以外では最高位の者から疑いを掛けられた時の本人と周りの反応を見ているのだ。
「慣れている?」
「昔から同じ年頃の子の中では背が高かったので。『大女』『男みたい』『デカい』『ウドの大木』『どこがシャーロットだ』『名前負け』など、色々な事を散々言われていますから」
「……」
それなら「シャーロット」という名前が嫌になるのも無理はないな。
「それより殿下、他の令嬢の反応をもっとしっかりと見てください」
「ああ」
そう言いながら、ユリウスの視線はシャーロットに固定されたままだ。
「ルーカス、先程から渋面なのは妹が三次選考に通過しそうだからか?」
横目でルーカスを見ると、ますます眉間の皺が深くなった。
こうして食堂の様子を窺っているのはユリウスとルーカスだけではない。一次や二次選考の時の様に、侍女や給仕の者も見ているし、他の場所に隠れて見ている侍従もいる。
シャーロットはその者たちからの票を得るだろう。
「…そうですよ」
「ロッテの背が高い事がネックレスと関係ありますか?あ、私はマードック男爵家のマリアと申します」
マリアがもう半歩前に出て、にっこりと笑ってスカートを摘むとイザベラに礼をした。
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