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「ええ!?イザベラ様の…殿下も見ておられたんですか?」
「ああ」
「それで、そこで私がその、殿下が昔会った女の子と同じ言葉を言ったんですか?」
「ああ。『私、立場や権力を笠に着た振る舞い、嫌いです』と。俺はまだ八歳だったがそんな事言われた事がなくて…衝撃で一字一句違わず覚えているんだ」
言ったわ。確かに同じ事を。
「あの…」
「ん?」
ユリウスの指がシャーロットの額を撫でる様に動く。
ひゃあああ。
く、くすぐったい。って言うか恥ずかしい!
「ロッテ~何処にいるの~?」
マリアの声がした。
「!」
ユリウスの手がパッと離れる。
「内緒な」
ユリウスは人差し指を自分の口元に当てると本棚の奥の方へと姿を消した。
…今の何だったんだろ?…幻?
でも感触が残って…
シャーロットはユリウスの去った方を見ながら自分の額を押さえる。
「ロッテ?おでこどうしたの?」
マリアが近付いて来る。
「あっあの。本を取ろうとしたら落ちて来ちゃって」
手に持っていた本を示す。
「当たったの?」
「ううん。ちょっと掠っただけで」
「そう。なら良かったわ。もう時間だから戻りましょ…ロッテ?」
マリアがシャーロットの顔を見上げる。
「何?」
「顔が赤いけど、どうしたの?」
「そっ、そう?」
だって!王太子殿下が私のおでこに指を当てて髪の毛触るんだよ!しかも指でおでこをスリ~って!スリ~ってしたんだから!そりゃ赤くもなるよ!
シャーロットはそう心の中で叫びながら
「本が落ちて来て驚いたからかな?」
と苦笑いを浮かべた。
-----
一次選考の時の様に、壁際にズラリと並んだ男性たち。
三次選考の夜会でのダンスは王太子に近しい者がダンスのパートナーになるようで、侍従や近衛騎士など、二十人程の男性が夜会服や騎士服でくじで決められた順番に並ぶ令嬢とフロアに出て行く。
グリフ様が一次選考の時に着ていたのと同じ騎士服の方はいないみたい。近衛騎士は国王陛下直轄の騎士だから、王太子殿下の護衛騎士とは別物なんだっけ…
男性陣の中に侍従さんはいるけど、お兄様はいないわね。
「「あ」」
臙脂色のドレスを纏ったシャーロットは、自分のパートナーとなった男性を見て思わず声を出す。
相手も同じ様にシャーロットを見て声を出した。
「お前、ヒールだと俺よりデカいんだな」
嫌そうな表情でそう言ったのはメレディスだ。
「その節は申し訳ありませんでした」
シャーロットはドレスの裾を摘んで礼をする。
…ジュースを掛けちゃったのは申し訳なかったし、ヒールだとメレディス様より背が高いのも事実なんだけど、「お前」呼ばわりはないんじゃないかなあ。
「あ、そうだ。汚してしまった上着を弁償させてください」
ホールドの姿勢になりながらシャーロットは言う。
メレディス様が侍従とは知らなかったけど、王太子殿下の友人だから、お兄様にお金の入った封筒を託ければメレディス様に渡るかと思って一次選考の時お兄様に会いに行こうと思ったのよね。
「は?」
「この選考が終わるまではお兄様に会えないので、終わったら託けますから」
「……」
「メレディス様?」
ダンスのステップを踏みながらメレディスはじっとシャーロットを見る。
ハイヒールのシャーロットの方が少し背が高いので、メレディスは上目遣いだ。
図書室での私もユリウス殿下をこんな感じで見上げていたのかしら…
そう考えると、急に頬が熱くなった。
「!?」
メレディスが目を見開いてシャーロットを見ている。
ひゃ~!おでこの衝撃が大き過ぎて気づかなかったけど、改めて思い出したらユリウス殿下も背が高かった!立ったまま上目遣いで男性を見上げたの、お父様とお兄様以外ではグリフ様とユリウス殿下だけだわ。それに、今ダンスしてるメレディス様よりももっと顔の位置が近かったし…
ますます頬が熱くなる。
「…おまっ」
メレディスが驚愕の表情でシャーロットを見ているが、シャーロットは心ここに在らずの状態だ。
「…まさか、俺の気を引きたくてわざとジュースを…?」
シャーロットに聞こえない様にメレディスは小声で呟いた。
ダンスが終わって、互いに礼をする。
と、メレディスがシャーロットをビシッと指差した。
「おい!お前!上着を弁償したいなら、ルーカス殿に頼まずに、俺の所に直に持って来い!」
「はい?」
「俺に直接会いに来い!わかったか!?」
「はい。わかりました」
シャーロットがそう言うと、メレディスは満足気に頷いて次のダンスの相手の所へ歩いて行った。
…謝罪をするのに人伝てはないだろうって事かしら?まあ、確かにそれもそうか。
シャーロットが首を傾げた時、会場に女性の叫び声が響いた。
「キャーッ!アイリーン殿下!」
「ええ!?イザベラ様の…殿下も見ておられたんですか?」
「ああ」
「それで、そこで私がその、殿下が昔会った女の子と同じ言葉を言ったんですか?」
「ああ。『私、立場や権力を笠に着た振る舞い、嫌いです』と。俺はまだ八歳だったがそんな事言われた事がなくて…衝撃で一字一句違わず覚えているんだ」
言ったわ。確かに同じ事を。
「あの…」
「ん?」
ユリウスの指がシャーロットの額を撫でる様に動く。
ひゃあああ。
く、くすぐったい。って言うか恥ずかしい!
「ロッテ~何処にいるの~?」
マリアの声がした。
「!」
ユリウスの手がパッと離れる。
「内緒な」
ユリウスは人差し指を自分の口元に当てると本棚の奥の方へと姿を消した。
…今の何だったんだろ?…幻?
でも感触が残って…
シャーロットはユリウスの去った方を見ながら自分の額を押さえる。
「ロッテ?おでこどうしたの?」
マリアが近付いて来る。
「あっあの。本を取ろうとしたら落ちて来ちゃって」
手に持っていた本を示す。
「当たったの?」
「ううん。ちょっと掠っただけで」
「そう。なら良かったわ。もう時間だから戻りましょ…ロッテ?」
マリアがシャーロットの顔を見上げる。
「何?」
「顔が赤いけど、どうしたの?」
「そっ、そう?」
だって!王太子殿下が私のおでこに指を当てて髪の毛触るんだよ!しかも指でおでこをスリ~って!スリ~ってしたんだから!そりゃ赤くもなるよ!
シャーロットはそう心の中で叫びながら
「本が落ちて来て驚いたからかな?」
と苦笑いを浮かべた。
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一次選考の時の様に、壁際にズラリと並んだ男性たち。
三次選考の夜会でのダンスは王太子に近しい者がダンスのパートナーになるようで、侍従や近衛騎士など、二十人程の男性が夜会服や騎士服でくじで決められた順番に並ぶ令嬢とフロアに出て行く。
グリフ様が一次選考の時に着ていたのと同じ騎士服の方はいないみたい。近衛騎士は国王陛下直轄の騎士だから、王太子殿下の護衛騎士とは別物なんだっけ…
男性陣の中に侍従さんはいるけど、お兄様はいないわね。
「「あ」」
臙脂色のドレスを纏ったシャーロットは、自分のパートナーとなった男性を見て思わず声を出す。
相手も同じ様にシャーロットを見て声を出した。
「お前、ヒールだと俺よりデカいんだな」
嫌そうな表情でそう言ったのはメレディスだ。
「その節は申し訳ありませんでした」
シャーロットはドレスの裾を摘んで礼をする。
…ジュースを掛けちゃったのは申し訳なかったし、ヒールだとメレディス様より背が高いのも事実なんだけど、「お前」呼ばわりはないんじゃないかなあ。
「あ、そうだ。汚してしまった上着を弁償させてください」
ホールドの姿勢になりながらシャーロットは言う。
メレディス様が侍従とは知らなかったけど、王太子殿下の友人だから、お兄様にお金の入った封筒を託ければメレディス様に渡るかと思って一次選考の時お兄様に会いに行こうと思ったのよね。
「は?」
「この選考が終わるまではお兄様に会えないので、終わったら託けますから」
「……」
「メレディス様?」
ダンスのステップを踏みながらメレディスはじっとシャーロットを見る。
ハイヒールのシャーロットの方が少し背が高いので、メレディスは上目遣いだ。
図書室での私もユリウス殿下をこんな感じで見上げていたのかしら…
そう考えると、急に頬が熱くなった。
「!?」
メレディスが目を見開いてシャーロットを見ている。
ひゃ~!おでこの衝撃が大き過ぎて気づかなかったけど、改めて思い出したらユリウス殿下も背が高かった!立ったまま上目遣いで男性を見上げたの、お父様とお兄様以外ではグリフ様とユリウス殿下だけだわ。それに、今ダンスしてるメレディス様よりももっと顔の位置が近かったし…
ますます頬が熱くなる。
「…おまっ」
メレディスが驚愕の表情でシャーロットを見ているが、シャーロットは心ここに在らずの状態だ。
「…まさか、俺の気を引きたくてわざとジュースを…?」
シャーロットに聞こえない様にメレディスは小声で呟いた。
ダンスが終わって、互いに礼をする。
と、メレディスがシャーロットをビシッと指差した。
「おい!お前!上着を弁償したいなら、ルーカス殿に頼まずに、俺の所に直に持って来い!」
「はい?」
「俺に直接会いに来い!わかったか!?」
「はい。わかりました」
シャーロットがそう言うと、メレディスは満足気に頷いて次のダンスの相手の所へ歩いて行った。
…謝罪をするのに人伝てはないだろうって事かしら?まあ、確かにそれもそうか。
シャーロットが首を傾げた時、会場に女性の叫び声が響いた。
「キャーッ!アイリーン殿下!」
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